第10話 光輝
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リリーティアは自分の部屋に入ると、寝台の上に座り、窓の外を眺める。
そこからは多くの船が浮かぶ波止場が見え、広大な海が望めた。
その景色を見詰めながらも、彼女の脳裏に浮かぶのはレイヴンとしての彼の姿。
あまりにもシュヴァーンの姿とレイヴンの姿との彼は違いすぎていた。
風に流れる髪と、風に逆らい揺れる一つに結われたほう髪な髪。
威風漂う近寄りがたい橙の背と、なんとも覇気を感じさせない猫背気味の紫の背。
沈着な身振りと、大袈裟で瓢軽な身振り。
変わらない表情と、陽気な表情。
どれをとっても同じ人物には思えないほどの違い。
あまりに真逆であった。
けれど、レイヴンの立ち振る舞い、その姿を見て、彼女は”似ている”と思った。
それは、----------あの頃の”彼”に。
碧(あお)の背とほう髪な頭に、おどけた笑顔が印象的だった彼に。
一瞬、あの頃の彼が戻ってきたのかと思わせるほどに。
それでも、それは戻ったのではないことを感じた。
やはりあの頃の彼とは違うのだと。
会話を交わす中で、それは次第に大きく感じていった。
レイヴンとしての彼は、あの頃の彼とは違って、さらに大袈裟で、さらにおどけている印象を受けたからだ。
ギルドの人間として生きる彼は、土台は過去の自分を使い、軽薄さを装った振る舞いをしているのだろう。
そう思った。
「それでも・・・・・・」
リリーティアは微かな笑みを浮かべた。
それは儚げで、それでいて嬉しそうでもあった。
現に、嬉しいという気持ちのほうが大きかもしれない。
どんな理由であれ、それが演技であっても、あの頃とは同じでなくとも、彼の陽気な笑顔が見られたことに。
それに、まったくそれが演技(うそ)だと思わなかった。
わざとらしい演技のように見えて、時に演技ではなく、ありのまま振舞っているように見えるときがあるからだ。
それでいい。
ギルドがどんな所なのかは知らないけれど、彼の笑顔が見られるならば、いつまでもギルドの中で生きて欲しい。
少しでも多くの時間(とき)を笑っていてほしいと願う。
そして、出来うることならば、自由に生きて欲しいと。
「(だから、あの人の理想のために、私の理想のために、これ以上その手を汚す必要なんてない。絶対に)」
リリーティアは自分の左手を見詰めた。
その掌を見詰める彼女の瞳の中には、揺るぎない意志が窺えた。