第9話 未来
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「それでは、明日までお戻りにならないのですか」
「はい」
リリーティアは騎士団長執務室にいた。
話している相手は最近着任した特別諮問官で、名はクロームというクリティア族の女だ。
理想の騎士団が奪われ、補佐官が奪われ、その次は諮問官。
彼女は諮問官である彼女に対していささか気になるところはあったが、深く考えることはしなかった。
その諮問官と今ここで話していたのは、ある事態の問題収拾のため、帝都を離れているアレクセイの状況を聞いていた。
彼女によれば、明日まで帝都に戻れないということだった。
「それから、評議会のウォガル議員に関してですが」
「何か動きが?」
クロームは手に持っている書類をめくった。
「重要な機密文書を入手したとの報告がありました。その文書内容は、最近新たに発見されたという魔導器(ブラスティア)に関するものだということです。 また、そのことから発掘された新たな魔導器(ブラスティア)のいくつかをすでに彼が手にしている可能性があるとの報告も受けています」
ウォガル議員はカプワ・ノールの執政官で、以前から不審な動きが見られていたため動向を監視していた議員である。
カクターフ亡きあと、鳴りを潜めている反騎士団派の議員たちの一人だ。
現在反騎士団派の議員たちは表面上おとなしくしているようだが、その裏では何を企んでいるのか分からない。
彼らがいつどんな時に事を起こすのか、あの時のような事件を起こす可能性もある以上、その議員たちの動向を気にしないわけにはいかなかった。
少しでも不審な動きがあれば監視を行い、騎士団にとって、正確にはアレクセイの政策にとって脅威にならないのならば問題はない。
しかし、脅威となる可能性が少しでもありうるならば----------。
「閣下はなんと?」
「いえ、なにも。まだこのことに関しての具体的な指示はありません」
「わかりました。報告は以上でしょうか?」
「はい」
リリーティアはクロームに一礼すると、踵を返してその部屋を出た。
しばらく廊下を歩いていた彼女だが、急に立ち止まった。
そして、自分の左の掌(てのひら)を見た。
廊下には人の気配はなく、静かだった。
「・・・・・・・・・」
その瞳は、どこか覚悟を決めたような、彼女の強い意思が宿っているように見える。
彼女は、先程クロームから聞いた報告について考えていた。
また、それに対して今後アレクセイが取るであろう行動を。
そうしてしばらく、誰もいない廊下でひとり、左の掌を見詰める彼女の姿があった。