第8話 責
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
***********************************
リリーティアは自分の居室へと戻ると、重い足取りで寝台へと向かった。
力尽きたようにそのまま寝台に倒れ込んだ。
そして、大きく息を吐く。
部屋の中は、月の光が部屋を照らしているだけだった。
彼女はすでに、次に取り掛かる事について考えていた。
帝都に急いでいた理由、”障害の芽の排除”という任務は完了した。
その障害の芽とは、フィアレンのことだったのだ。
情報が届いた時点では、帝都付近のある場所にて怪しい動きありとの情報しかなく、その主犯格ははっきりと誰かまでは掴めていなかった。
しかし、あの場所で、赤眼たちとあの男、フィアレンに遭遇した時に合点がいった。
情報を教えてくれた人物からの話の内容を照らし合わせると、その主犯格はフィアレンだと確信した。
「(任務は無事に終えた。次は・・・・・・)」
----------ニンム?
リリーティアの思考が一度止まった。
----------・・・・・・。
----------ニンム?
---------------あれは、・・・任務だった?
リリーティアは考え込む。
どこか引っかかるような不快なざわめき。
心の中に渦巻く黒いもの。
黒い感情----------それは、憎悪。
彼女は理解した。
任務という名にとった己の行動。
何かおかしな感覚の真意。
この不快なざわめきの真意。
--------------------------------------、
その男が目の前に現れたとき、体の中が激しく脈打つのを感じた。
----------ニンムスイコウカイシ。
気づくと自分の手の中には短剣が握られ、自然にその男へと足を進めていた。
その男しか目に入っていなかった
周りの景色はどこか曖昧だったように思う。
一歩足を進める度に、頭の中に思い浮かぶもの。
それは、光にのまれた大切なものたち。
手紙。
写真。
部屋。
笑顔。
それら全てが大きな光にのみこまれる。
その光から聞こえる、叫び、嘆き。
炎の中にある騎士団本部。
渦巻く感情。
悲しみから生まれた怒り。
怒りから生まれた----------憎悪。
思い浮かんだものすべて、憎悪の中にのみ込まれる。
体の奥底から湧き上がる衝動。
「ひ!?」
男は、突然現われた私に驚いていた。
----------ああ、忘れもしないその顔。
ふと男の後ろから視線を感じた。
シュヴァーン隊長だった。
体中、朱(あか)く染まっている彼。
切り裂かれた服の下から、胸にある心臓魔導器(ガディスブラスティア)が露になっている。
----------まだ奪い足りないというのか。
「な・・・なんだ・・・お、お前は!・・・・・・こ、こやつの仲間か!」
----------仲間・・・。ああ、おまえたちが奪ったものもそうだった。
「ん?・・・いや、おまえは・・・確か・・・」
私は頭巾(フード)に手をかけた。
----------私のことはどうでもいい。
「お久しぶりです----------、」
男は、私の顔を見て驚いていた。
----------おまえが奪ったものを覚えているか?
私は、目の前にいる男の名を言った。
忘れもしないその名を。
「----------フィアレン監査官」
----------おまえが犯した罪を覚えているか?
「ですが・・・、ここでお別れです」
私は駆け出す。
断罪すべき者へと。
----------今、ここで思い知ればいい。
「う、ぐ・・・ぅ」
沈む刃。
重い感触。
こんなものではない。
私の苦しみは、もっと重く。
----------その罪の重みを。
「あ、あ・・・・こ、小娘。ぐ・・・う・・・き、きさ・・・ま」
さらに深く沈む刃。
こんなものではない。
わたしの悲しみは、もっと深く。
-----------その罪の深さを。
私の腕にしがみつく手。
怒り狂う目が私を見る
----------その身を以ってして。
凍りついたようなフィアレンの顔。
絶望的な目が私を見ていた。
----------けれど、私は一生、
飛び散る朱。
地に伏す肢体。
----------おまえを許しはしない。