第8話 責
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シュヴァーンは居室にあるベ寝台の上で、片腕を額に当てながら仰向けになって眠っていた。
正確には物思いに沈んでいた。
リリーティアと別れ、自身の居室へともどってから半刻が経っている。
「・・・・・・・・・」
脳裏に浮かぶのは宙に舞う深紅の魔導服(ローブ)。
耳に響くフィアレンの呻き声。
霞む視界の中でフィアレンの懐にリリーティアがいるのが見えた。
彼女がフィアレンに何をしたのかすぐに理解できた。
そして、動揺した。
それは、彼女がフィアレンにとった行動に対してではなく、その行動の流れに戸惑いを覚えたのだ。
彼女のその一連の動きはどこか自然だった。
一瞬の無駄もなく、明らかに慣れているような----------。
あの動きからして、多量に飛び散っていたあの朱(あか)は彼女には一滴もつくことはなかっただろう。
それが分かるほどに、彼女の動きは自然で、一切の無駄がなかった。
そんな彼女の動きに惑いながら、伏したフィアレンを見下ろす彼女の姿を最後に視界は闇に包まれた。
そこで、シュヴァーンは大きく息を吐いた。
力なく目を開き、横の窓から覗き見える月を見た。
闇が消え、次に見えたのは彼女の後ろ姿だった。
雨の中を佇む彼女のその服は酷く汚れていた。
朱黒く染まり、無残な姿だった。
気を失う前は一滴の朱にも染まっていなかったはずの彼女の今の姿。
それを見てすぐに分かる。
ああ、彼女があの者たちの後始末をやってくれたのか----------と。
そう悟った時、なんとも言いがたい気持ちに駆られた。
胸の奥が不快にざわめく。
考えれば考えるほど息が詰まるような苦しさを感じた。
「・・・・・・・・・」
シュヴァーンは僅かに顔を顰めた。
彼はこれ以上の思考を拒絶した。
何かを考えるにはあまりに心身が疲れ切っている。
シュヴァーンは目を閉じると、静かに闇へと身を委ね、泥のように眠った。