第6話 変化
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リリーティアはシュヴァーンの部屋を後にして、自分の研究私室へと向かった。
廊下を歩いている間、彼の変化を嬉しいと思うのと同時に、ギルドの生活の中で、何が彼の心を揺さぶったのか考えていた。
「(ギルドの生活が彼の心に何かしらの影響を与えた。それも、いい方向に。いや、一番はドン・ホワイトホースのおかげなのかもしれない)」
彼を騎士団の人間と知りながらも、手元に置いた人物。
彼はドン・ホワイトホースにとっては取るに足りないことだったからではないかと言っていた。
だが、それだけではドン・ホワイトホースの行動は理解しかねるところがありすぎている。
アレクセイは、ドン・ホワイトホースについて話す彼を、「弁護しているようだ」と指摘していたが、弁護はともかく、あの報告内容を聞く限り、シュヴァーンはドン・ホワイトホースに関心があるということをリリーティアは感じた。
だから、彼の心を揺さぶったものは、ドン・ホワイトホースという人物に違いないと半ば確信に近いものがあった。
「(そうだとしたら・・・、ここでいるより、ギルドにいる方が彼にとっていいことなのは確か。そのほうが彼も・・・・・・)」
彼女は柱を隔てた先にある中庭へと視線を移すと、夜空を仰いだ。
空には上弦の月が浮かんでいる。
「(なら、これ以上・・・こんなことに彼を巻き込むことは・・・)」
したくないと、彼女は強く思った。
ギルドにいることで彼は、あの頃の彼を、心を、取り戻すかもしれない。
だから、この歪んだ理想に巻き込むことはこれ以上したくない、と。
けれど、必要とあらばアレクセイは彼を呼び戻し、彼もまたアレクセイの指令を断ることはしないだろう。
今の彼でも、以前と変わらずどんな任務をも果たすのだろう。
それが、公にできない任務だとしても-------そのすべてを。
リリーティアは視線を落とし、自分の左手を見詰めた。
彼女は、しばらくそうしていた。
「(全ては無理でも、私が出来ることは・・・、ううん、それ以上にやらなければ)」
彼女はその手を力強く握りしめると、再び空を見上げ、月をひたと見詰めた。
その瞳は、何かを覚悟したかように見えた。
第6話 変化 -終-