第6話 変化
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
***********************************
シュヴァーンの私室。
その部屋で、心臓魔導器(ガディスブラスティア)の操作盤を打つリリーティア。
「(だいぶ安定してる。・・・二ヶ月前までは水準値さえ達していなかったのに)」
彼女は心臓魔導器(ガディスブラスティア)の状態変化を不思議に思った。
二か月前、シュヴァーンがギルドに潜入する前に検査を行った時には、深刻なほどではなかったが、それでも安定水準値は下回っていた。
それは、彼の状態がいつ危険に晒されてもおかしくないということだった。
けれど、今の状態はその水準値を上回り、驚くほどまでに安定していた。
この二ヶ月の間に、一体何が心臓魔導器(ガディスブラスティア)に変化をもたらしたのか。
彼女は心臓魔導器(ガディスブラスティア)を操作しながら考えた。
しかし、結局それは知識や論理的には解明できないということに至った。
一番しっくりきた答えが、彼の心境の変化による影響、だった。
それすなわち、ギルドの生活が何かしら彼に影響を与えたということである。
理由はなんであれ、彼女は心臓魔導器(ガディスブラスティア)の状態に心から安堵した。
「ありがとうございます、終わりました。全く問題ありません。非常に安定しています」
安堵の表情を浮かべながら操作盤を消すと、寝台に座っているシュヴァーンに軽く一礼して言った。
「そうか。・・・ありがとう」
「っ!?」
リリーティアは驚きのあまり、何も返せなかった。
それは、彼が言った謝意の言葉に対してではなく、その言葉の中に込められた彼の想いに対して。
今まで彼の言葉は、ほとんどが何も感じられなかった。
感情も何もないものだった。
だけど、この言葉は違っていた。
----------言葉が生きていた。
言葉から彼の心を確かに感じたのだ。
周りにしてみれば、いつもの彼で、シュヴァーンとしては何も変わらないと思うだろう。
けれど彼女にしてみれば、今の彼は大きく変わっていて、そして、あの頃の彼に近づいているように感じた。
それも、微々たるものだが、確かに近づいていた。
「ここ2ヶ月で、何か変わったことはあったか?」
隊服に袖を通しながら、シュヴァーンはリリーティアを見る。
またも彼女はその言葉に驚き、そして、戸惑った。
「(以前の彼なら、そんなこと・・・・・・)」
これまで、何も関心を示さなかった。
周りの成り行きにも無関心で、ただ課せられた仕事を果たすだけ。
どんな仕事内容でさえも、有無を言わずに果たしていた。
そんな彼が、その言葉を発したことは驚くべきことだった。
少なくとも、彼は以前よりも周りの状況に無関心ではなくなったといえた。
「特に・・・、これといって変わったことはありません」
「本当か?」
リリーティアの答えに、シュヴァーンはなぜか訝しげな表情で念を押すかのように確認した。
「ぇ・・・?」
「いや。・・・なら、いい」
「・・・・・・?」
彼の様子に彼女は困惑したが、あまり深く気にとめることはしなかった。
「それでは、私はこれで。安定しているとは言ったのですが、どうか無理はなさらないでください」
「ああ」
彼の返事を聞いた後、彼女はすぐに踵を反し、部屋の扉に向かって歩き出す。
「失礼します」
扉の前で彼に向かって敬礼をすると、彼女はその部屋を出て行った。