第6話 変化
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リリーティアは変わらず、アレクセイの理想のもと動いていた。
ひと月前に言っていた実験は予定より先送りになり、一先ず安心していたが、いつかは行うべき実験だということは変わりない。
その日が来ることを恐れ、日に日にその不安、恐怖は増すばかりだった。
他の研究をこなしながらも、その実験を少しでもいい方向へ導くために何度も考えを巡らせた。
しかし、時間はないという中、確実な方法はいまだ見出せずにいる。
そんな切羽詰まった日々を送っているにも関わらず、心身ともに弱っているということを彼女は自身のことながら気付いていなかった。
彼女自身がそのことに気付いていないせいもあるのか、彼女のいつも通りの変わらぬ振舞いに、彼女を取り巻く周りの者もその異変に気付くことはなかった。
リリーティアは、いつもならその実験のことを考えながら、自分の研究私室に向かうが今回は違った。
その表情は微かにだが穏やかである。
「(本当に、無事で良かった。・・・・それに、少し・・・変わったよう)」
彼の変化に驚きさえしたが、それは不安なものではなかった。
寧ろ、安堵に近いような感覚で、どこか嬉しくも感じていた。
「リリーティア」
「!! ぁ、・・・シュヴァーン隊長」
リリーティアからしてみれば、こんな所で彼から声をかけてくるとは思いもよらないことだったので、ひどく驚いた。
「任務のほどお疲れ様です」
「ああ」
労いの言葉にシュヴァーンは短く答えたが、彼女には、以前の彼と比べると素っ気なさが和らいだような印象を受けた。
やはり変わったと感じた。
「ご無事で何よりでした。二ヶ月もの間、音信不通でしたので。その、心配しました」
「・・・・・・」
リリーティアは笑みを浮かべそう話すと、なぜか彼は微かに眉をよせて彼女を見た。
「? ど、どうかなさいましたか?・・・あ、私、何か気に障るような事を-------」
「いや、気苦労をかけたな」
「っ、・・・い、いえ。・・・体調の方はいかがですか?」
「ああ。問題ない」
「そう、ですか。・・・・・・良かった」
リリーティアは目を伏せて、小さく息を吐いた。
彼女の最後の言葉は、シュヴァーンに向けて言った言葉でなく、ただ無意識に出た言葉のようであった。
「すみません、戻ってきたばかりで申し訳ないのですが、よろしいですか?不都合であれば、また後ほどお伺いいたしますが」
何がを聞かずとも彼には分かっている。
それは心臓魔導器(ガディスブラスティア)のことを言っていた。
肝心な言葉を省くのは、周りに心臓魔魔導器(ガディスブラスティア)のことを悟られないよう注意してのことだ。
「よろしく頼む」
「はい」
彼女の言葉にシュヴァーンが頷くと、彼女は笑みを浮かべた。