第5話 少女
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兵装魔導器(ホブローブラスティア)の部品が収められている保管庫は研究所の地下にあるらしい。
リリーティアは保管庫に向かっている間ずっと研究員から問われた言葉が頭から離れないでいた。
----------『リリーティア殿はどうして魔導士になろうと思ったのですか?』
「(どうして、・・・どうして、・・・魔導士になった?・・・・・・それは・・・、)」
頭に浮かぶのは、父と母の----------笑顔。
彼女はすぐにその笑顔を消した。
闇で塗り潰すように、その浮かんだものを真っ黒に消した。
その瞬間、リリーティアの表情は微かに歪み、その瞳は哀しみに揺れた。
彼女に背を向けて歩く研究員はもちろん、彼女の背中しか見えない騎士団も、その表情の変化に気づくはずもなかった。
魔導士に
笑顔のためだった。
それは確かな始まり。
それは確かなきっかけ。
魔導士に
それも、誰かの笑顔のため。
そして、誰かの役に立ちたいため。
けれど、
果たして、
そのために何を為しただろう?
そのために何を残しただろう?
私が為したことは?
私が残したものは?
それは、
黒一色の街。
朱殷(あか)く染まった砂。
赤く輝く魔導器(ブラスティア)
黒く染まった瞳。
光、炎、瓦礫の山。
歪む心。
闇を纏った心。
それが私が為したもので、私が残したもの。
けれどそこには、
----------笑顔などなかった。
あったとすれば、それは
----------薄ら笑った顔だけ。
私が為したことはあっても、何もなかった。
私が残したものはあっても、何もなかった。
ならば、
魔導士に
・・・。
・・・・・・。
なんのため?
なんのためなんだ?
理想のため?
研究のため?
そこには何が為せる?
そこには何が残る?
何も為せない私が。
何も残せない私が。
何ができる?
何が・・・・・・、
--------------------、
------------------------------。
リリーティアはそこで考えるのをやめた。
ふと、前を歩く研究員の背中を見る。
そして、憧れの眼差しを向けていた彼を思い出した。
「(私は、・・・・・・そんな器じゃない)」
彼女は、周りが聞こえないほどの小さなため息を吐いた。