第5話 少女
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「お会いできて光栄です。お待ちしておりました」
白い魔導服(ローブ)を着ている魔導器(ブラスティア)研究員が、リリーティアに言った。
どこか感情が高揚してるように見えるその研究員。
彼女の名は魔導学を学ぶ者ならば誰もが知っている名前であり、彼女の父である今は亡き天才魔導士ヘリオースに並び、彼女に憧れ、尊敬する者は多い。
その反面、天才魔導士の息女という、その背景にある威光の大きさだけを見て妬む者、まだ年若い年齢のためか僻む者も多かった。
だが、この研究員はどうやら前者のようで、純粋に憧れの眼差しで彼女を見ているようだ。
その様子から、彼女に向けて言ったその言葉は、世間に基づいた単なる決まり文句ではないことは分かる。
リリーティアは今、アスピオに訪れていた。
アスピオ。
それは、世界中の魔導士、技術者が集う街。
ここは街自体が巨大な研究施設として機能しており、<帝国>魔導器(ブラスティア)研究所が置かれている場所である。
同地の近隣にあるシャイコス遺跡という古代遺跡から多数の魔導器(ブラスティア)が発見されたため、魔導士や技術者が集い、一大学術都市が形成されたのがこの街のはじまりだった。
当然、ここの住民のほとんどが魔導器(ブラスティア)研究やその関連事業に従事している。
魔導器(ブラスティア)は<帝国>が管理しているように、魔導器(ブラスティア)研究所があるアスピオも<帝国>の管理下に属し、<帝国>の許可なくこの都市への立ち入りは禁じられている。
そのため、アスピオは《学術
リリーティアは、数人の<帝国>騎士たちと共に,、アスピオに在住している研究員の案内のもと都市内へと入っていく。
彼女は兵装魔導器(ホブローブラスティア)の部品を取りに行く<帝国>騎士団に同行してここまで来た。
主な理由は、アレクセイの指示の下に行っている研究に関して、調べものをするためだった。
あの爆破事件によって、多くの貴重な資料が失われた今、アスピオだけが唯一の魔導器(ブラスティア)資料の宝庫となってしまった。
ひとまず、その調べものの前に兵装魔導器(ホブローブラスティア)の部品を見に行くため、アスピオの魔導器(ブラスティア)保管庫へと向かう。
案内をする研究員は、隣を歩くリリーティアへずっと話かけていた。
彼女が著した研究書物を読み感銘を受けたとか、彼女のこれまでの研究に興味がある等々。
話の中、彼女の父であるヘリオースのことを触れてしまったときには、研究員はっとして口を閉ざし、心底に申し訳なさそうな表情で謝っていたが、彼女は気にしなようにと笑って言葉をかけた。
その言葉に研究員は困ったように笑いながら、ほっとした表情を見せると、再び憧れに満ちた瞳を向けて話し始めた。
そうして興奮気味に喋り続ける研究員に対し、後ろを歩く騎士たちは少し呆れた様子でその研究員を見ていた。
でもリリーティアはそれを不愉快に思うこともなく、研究員の話に耳を傾け、丁寧に応えている。
寧ろ彼女にとっては、研究員の言葉は照れくさいものがあったが、嬉しい限りのものであった。
しかし、その中には何とも言えない気持ちが混じっていた。
そう、例えばそれは、罪悪感のような。
「あの、失礼の承知の上でお聞きしたいことがあるのですが」
「はい。なんでしょう?」
研究員は恐縮した態度で話すが、その瞳は興味津々の様であった。
「リリーティア殿はどうして魔導士になろうと思ったのですか?」
「っ・・・!」
彼女は内心動揺した。
不意に歩く足を止めた彼女は、黙したままその場に立ち尽くす。
ひとりの騎士が彼女の名を呼ぶが、聞こえていないのか返事は返ってこなかった。
彼女の様子に研究員と騎士団たちは困惑した顔で彼女を見詰めた。
「(どうして?・・・・・・それは・・・)」
頭に浮かぶのは、父と母の----------、
「す、すみません・・・!」
「・・・え?」
リリーティアは、はっとして声が聞こえたほうに視線を向けた
見ると、研究員が慌てた様子で頭を下げていた。
「初対面であるにもかかわらず、不躾な質問をしてしまいました!本当に申し訳ありません!」
「え、・・・あ!ち、違います。本当に違うんですよ。そんな、失礼だなんて思っていませんから」
突然黙り込んでしまった彼女を見て、研究員は自分の質問が相手に不快感を与えてしまったのだと解釈してしまったらしい。
リリーティアは、深く考え込んでしまっていたのだと言って、慌てて相手の誤解を解いた。
それでも、研究員は詫びる態度を崩すことなく、もう一度謝罪の言葉を言うと、改めて目的地までの案内を再開した。
それからは研究員も態度を改めたのか、彼女は質問責めにあうことはなかった。