第4話 歪
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私は探し続けた。
大切なものを。
守るはずだったものを。
手から零れ落ちてしまったものを、もう一度すくいあげるように。
何度も、何度も、すくいあげた。
けれど、その手に残るのは瓦礫だけ。
それさえも脆く崩れ、手から零れ落ちた。
確かにあったものは、今はもうない。
其処にいたのに。
彼らの叫びが聞こえたのに。
彼らの悲痛な表情が見えたのに。
半狂乱になって光にのみ込まれる仲間たちの姿が、目の前にあったのに。
また、私は守れなかった。
それでも、何度もすくいあげようとした。
もう、そこにはないと知りながらも。
絶望の淵から、希望を見つけようとするように。
闇の中から、光射す場所を探すように。
私は探し続けた。
けれど、私の手に残ったものは、
--------------------黒と朱(あか)しかなかった。
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「リリーティア殿、どうかもうお休みください」
ひとりの騎士が心配げに言う。
声をかける騎士の顔には、ひどく疲れた色が窺えた。
「リリーティア殿!」
もう一度、騎士は叫ぶようにして言った。
「・・・・・・・・・」
声をかけられている本人、リリーティアはそんな騎士の声も耳に届いていなのか、瓦礫の中を掻き分けていた。
何度も、何度も。
必死で瓦礫の中を掻き分け続ける。
その様子に、騎士はいつの間にか彼女に対して言葉も失い、しばらくただそれを見ていた。
そして、騎士は目を伏せると、悲痛な面持ちで静かにその場を離れた。
それでも、彼女は瓦礫の中にいた。
何度も、何度も、何度も、瓦礫の中を掻き分け続けた。
空が闇に覆われても、
空が光に包まれても、
誰かの声が響いても、
手が黒く染まっても、
手が紅く染まっても、
もう、何もないことを知っても、
守るべきものを失ってしまった彼女は、ただひたすらに瓦礫の中を掻き分け続けた。