第4話 歪
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騎士たち声。
魔道士たちの声。
アレクセイ閣下の声。
どれも遠くに聞いていた。
ただはっきり耳に捉える音は、
----------助けてください!
彼らの、騎士団長補佐官たちの声。
-----------助けてください!
その声に引き寄せられるように、リリーティアは前へ一歩踏み出す。
一人の魔導士が彼女の腕を掴み、制止の言葉を叫んだ。
それでも彼女は前を見詰め、歩みを止めはしない。
「リリーティア殿、近づいてはいけません!」
-----どうして?なぜ?
-----目の前で助けを求めているのに。
-----あんなに叫んでいるのに。
「あの術式がどういったものが、あなたはよくご存じのはずです!」
-----知っている。
-----知っているからいかなければ。
「リリーティア殿、本当におやめください!!危険ですっ!!」
-----何を言っているの。
-----危険なのは彼らの方なのに。
止まる様子のないリリーティアに他の魔導士たちも止めに入った。
-----どうして止めるの。
リリーティアは、数人の魔導士に肩をおさえられ、前に進めなくなってしまった。
子どもである彼女は、大人数人で抑えられれば、これ以上進むことなどできるはずもなく。
-----どうして・・・!
-----早く助け出さないといけないのにっ!
リリーティアは歯を食いしばり、もがくようにして彼らのその腕を振り払おうとした。
「っ・・・離して!・・・っ・・・離、してっ!・・・っっ・・・っく・・・ぅ・・・・・・っ離せーーー!!」
彼女はあらん限りの声で叫ぶ。
彼女は前に進むことを諦めない。
彼女はただ、前を見て、前へ進んで。
その時、建物上空の術式に変化が生じた。
リリーティアは、はっとして上空を見上げた。
上下に連なる光輪の間を、稲妻のような光が音を立てて断続的に走り抜ける。
次第にその数が増え、激しくなった。
それはまるで、輝く鞭が建物の背を打っているようだった。
あるいは雷蛇が屋根の上でのたくっているようにも。
建物の中に膨大な光が生じているようで、窓という窓、戸口という戸口から光が溢れ出す。
「っ・・・くっ!!」
「リリーティア殿っ!!」
リリーティアは再び激しくもがき、魔導士たちを振り払おうとする。
術式が変化したのを見た彼女は、必死だった。
あれが意味なすことを知る彼女には、分かっていたからだ。
もう、時間がないことを。