第16話 選択
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リリーティアは絶景を臨める丘から下り、草木をかき分けて街道に出た。
この街道は左右を急な丘に挟まれいて、まるで谷底のような所を通っているのが特徴だ。
ここはハルルの街から港町カプワ・ノールの道のりのちょうど中間地点にあたる。
彼女が帝都からここまできた理由は、絶景を見に来ただけではなく、他にもあった。
近々ここに結界魔導器(シルトブラスティア)を設置する予定で、そのための視察が目的でこの丘に訪れたのである。
といっても、結界魔導器(シルトブラスティア)設置の段取りは完了しており、すでに他の者に引き継いであるのだが。
リリーティアはふとどちらがついでであったかを考える。
結界魔導器(シルトブラスティア)の設置予定場所が、壮大な景観が一望できるこの場所と同じだったからか。
それとも、壮大な景観が一望できるこの場所が、結界魔導器(シルトブラスティア)の設置予定場所と同じだったからか。
よくよく考えると自分は後者の考えできたのかもしれない。
つまりは絶景を見たいが為に訪れ、そのついでに、結界魔導器(シルトブラスティア)の設置予定場所だから視察したということだ。
彼女はひとり苦笑を浮かべると、エフミドの丘にのびる街道を歩いていたその足を止めた。
そこが結界魔導器(シルトブラスティア)を設置する場所になっているのだ。
リリーティアは空を見上げた。
ヘルメス式の結界魔導器(シルトブラスティア)の実験時に竜使いの襲撃を受けた日から数年。
あれからも竜使いは度々現れ、ことごとく結界魔導器(シルトブラスティア)を破壊している。
その理由は未だわからないまま。
それでも改善を重ね、当初よりもその機能も質も格段に上がった。
けれど、ひとつだけ気になることが残っている。
それは、当時よりは少しばかり良くなったとは言え、それでも改善されていないといってもいい。
もし、その理由であの竜使いが現れているというのならば、
あの者は----------
リリーティアは目を細め、空に浮かぶ白い雲を遠くに見詰めた。
その雲と共に、ふと一人の少女の姿が思い浮かんだ。
ああ、そうだ、同時にあの少女を悲しませているのだった。
アスピオで出会った、魔導器(ブラスティア)が大好きなあの女の子を。
ここに設置される結界魔導器(シルトブラスティア)に使用している魔導器(ブラスティア)。
その姿を見たとき、あの少女はたぶん深く悲しむのだろう。
いや、それとも怒るのか。
リリーティアは空を見上げたまま静かに目を閉じる。
あたたかな風が頬をなで、髪に流れる。
あれから幾数年。
魔導器(ブラスティア)を破壊し続ける竜使い、人でありながらその執念はどこからやってくるのか。
魔導器(ブラスティア)を心から愛している少女、あの栗色髪の女の子は魔導士になったのだろうか。
リリーティアは目を開けて、もう一度、済んだ蒼い空を見た。
長い間、ただただ空を見上げ続ける。
その瞳は微かに愁い帯びていた。
どれだけ、私はこの手で奪っただろう。
どれだけ、私はこの足で踏みつけてきただろう。
笑顔を。
命を。
そして、
どれだけ、私はこの道に傷跡を残していっただろう。
怒りを。
悲しみを。
憎しみを。
それでも---------------、
しばらくして、彼女は空を見上げるのをやめ、前を向いた。
そして、帝都への道へとその歩みを進める。
その瞳にはすでに憂いさはなく、そこには凛とした表情を浮かべる彼女がいた。
-------------------- これが、私の選んだ道だ。