第16話 選択
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リリーティアの研究私室。
机の上で灯る光照魔導器(ルクスブラスティア)の小さな光の中で彼女は椅子に腰掛けていた。
彼女は今、エステリーゼのことを考えていた。
本が好きで、毎日のように読んでいる少女。
<帝国>の姫らしく、仕草もその話し方にも品があり、印象としては愛らしい少女。
浮かべる笑みは、どこか温かく嘘偽りがない。
実際に彼女は優しい心を持った、おそらく困っている人がいたら無視できない性格だろう。
そう思えるほど、彼女を取り巻く空気は優しさに溢れている。
そんな彼女は、<帝国>の次期皇帝候補であり、そして----------、
「-------満月の子、か・・・」
リリーティアは呟いた。
そして、深く息を吐く。
魔導器(ブラスティア)を使わずとも術を行使できる”力”を持った〈満月の子〉。
代々皇帝家がその末裔であるが、長い歳月の間にすっかりその血は薄れ、結果、その力はほとんど象徴としての意味以上のものではなくなった。
つまり、一般人とほぼ変わらないものとなっているのである。
おそらく、皇族であるエステリーゼも同じと思われた。
かつて行っていた”〈満月の子〉人造計画”
それが失敗に終わってから現在まで、その研究はほとんど進んでいない。
しかし、理想を実現させるためには必要不可欠なもので、今でもリリーティアは日夜試行錯誤の中で研究を続けている。
そんな中で、彼女は〈満月の子〉の末裔が力を失っているということに、心底ほっとしている部分もあった。
なぜなら、もしも古来の〈満月の子〉の力を有する末裔がいた場合、その末裔は必ずアレクセイの理想のために利用される、ということになるからだ。
力を使うことをその末裔が拒んでも、おそらく、いや、強制的にあの人は行使するだろう。
どんなにその者が嘆き悲しんだとしても。
今のあの人なら、臆することなく。
そして、-------私もあの人と同じに。
もう、あの”戦争”から長い年月(とき)が流れた。
その時間の中で、
何度も行った実験。
何度も奪った命。
何度も偽った真実。
何度も、何度も。
そうしてここまできてしまった。
思い描いた通りに。
あの時、彼が言ってたように、予想通りに。
ただひとつ、思い通りにいっていないとしても、それでもあまりにも当時計画していた以上に事が動いていた。
評議会議員のラゴウと魔導器(ブラスティア)のことも。
『紅の傭兵団(ブラッドアライアンス)』のことも。
すべてが、順調に進んでいた。
リリーティアは、机の上に山のように積んである書類の中の一枚を手にとった。
そこには、”宙の戒典(デインノモス)”という文字が頻繁に書かれている。
それを見詰めながら、彼女は険しい表情を浮かべた。
そう、すべてあの人の思惑(シナリオ)通りに進んでいる。
それは、----------恐ろしい程、忠実に。