第14話 騎士
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「ばっかもーんっ!!」
今まで何度として部下たちを叱責するルブランのその大音声を耳にしてきただろう。
その度に苦笑しながらも、リリーティア自身、疲れが吹っ飛ぶような気さえ感じさせるほど彼の声は活力に溢れた声力がある。
しかし、いつもは疲れが吹っ飛ぶその声も、今回は肩の痛みと申し訳なさが相まって、それを感じる余裕はなかった。
目の前でルブランに叱責されている部下数名。
アジト内で拘束者を見張っていた者たちだ。
彼の咎める言葉に隊員たちはこれでもかというほど肩をすぼめている。
さっきのことは自分にも非があると彼女は言ったのだが、ルブランはしっかりと部下たちにお灸をすえていた。
リリーティアはアジトの外に集められた拘束された過激派の人たちに視線をやった。
その中には、自分を襲った男が未だ気絶したまま横たわっているのが見える。
シュヴァーンのおかげで事なきを得たが、もしも、彼が今日ここにいなかった場合、自分はどうしていただろうか。
あのままなら首を絞められ、その後、それから自分はどう動いていたのかは今では見当もつかない。
憎悪に燃えるあの男の姿を自分自身と重ね合わせ思いを巡らせていたぐらいだから、案外あの時は冷静だったのかもしれないとも思えた。
けれど、彼女はよくよく考えて、思っていた以上に動揺し焦っていたのだと改めた。
なぜなら、あの時、肩の痛みを忘れるぐらいに必死だったのだから。
そう考えると、やはりひとりでは対処しきれなかったかもしれない。
リリーティアは息を吐いた。
それは重く深いため息。
「大丈夫か?」
「あ、はい。すみません」
そのため息が聞こえたのか、隣に立っていたシュヴァーンが声を掛けてきて、リリーティアは半ば反射的に謝罪の言葉を口にした。
彼はその謝罪の意図が分からず、僅かに訝しげな表情を浮かべたが、すぐにルブランたちへと視線を戻した。
彼女は自分自身に対して情けなさを感じていた。
ルブランに叱責されている部下たちを見詰めながら、ただただ情けないと思い詰めていた。
先の任務にて怪我を負い、その身を案じてくれたルブラン小隊長の気持ちを汲まず、無理に頼んでまでして任務に就いたというのに、
己の一時の油断から襲ってきた男に対して対処できず、挙句、シュヴァーン隊長にまで迷惑をかけてしまった。
ルブランの隣に立ったシュヴァーンが、落ち込む部下たちに何かを言っているのを遠く聞きながら、リリーティアはひとり、自分の不甲斐無さに己の未熟さを痛感していた。