第14話 騎士
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「<帝国>騎士団である。全員大人しくするのだ!」
アジト内にルブランの声とガチャガチャと甲冑の音が騒がしく響き渡る。
中にいた過激派の人たちは、突然現れた騎士団に狼狽の色を隠せなかった。
リリーティアは、シュヴァーンの合図の元、彼とルブラン、幾人かの部下たちがアジトへ乗り込むのを見届けると、
残りの部下たちと共にアジトの周辺にそのまま待機し、アジトの外へと逃げ出す過激派の残党たちを捕まえていった。
結局、外へと逃れ出てきたのはたったの三人だったため、彼女たちは難なく自分たちの役目を果たすことができた。
そして、彼女は残党たちを部下たちに任せると、伝令係に森の入り口付近で待機している別隊への連絡を頼み、彼女もアジトの中へと入った。
部屋の奥では、シュヴァーンとルブランが木箱を中を見ながら何やら話をしていて、おそらくその中に爆発物が納まっているのだろう。
手前にいる拘束された者たちも騒ぎ立てる様子もなく、大人しく座っており、見張っている部下の中の幾人かはすでに少し緊張が緩んでいる者がいるのを見て、過激派集団の身柄拘束は、円滑に事が進んだことが知れた。
想定していたよりも、ことのほかすんなりと済んだようだと、彼女は胸を撫で下ろした。
しかし、それがいけなかった。
任務が完全に完了するその時まで油断はしてはいけない。
そして、拘束者を見張っている部下の幾人かの気が緩んでいることを知っていながら、それをもっと注視しておくべきだった。
安堵した後、アジト周辺の様子を見て回ろうと彼女が外へ出ようとした、その時だった。
「な!?待てっ!!」
「リリーティア!」
その声に驚き振り向くと、ひとりの男がこちら目掛けて走ってきていた。
この時すでに、男との間の距離はたったの三歩ほどしかなかった。
考える間もなく、リリーティアは反射的に《レウィスアルマ》を両手に引き抜いた。
一瞬、視界にシュヴァーンがこちらに走ってくるのが見えたが、突撃してくる男によってその視界はすぐに覆われた。
----------ッキィィン!!
「っ!!」
武器と武器がぶつかり合う甲高い音を耳にした途端、右肩に激しい痛みを感じ、リリーティアは顔を歪めた。
あの時の竜使いから受けた傷口に響いてしまったらしい。
相手の攻撃は受け止めたが、体躯のいい男のその一撃は想像以上に重く、さらに、とっさにとった行動だったため受け止め方にも問題があったのだろう。
肩の痛みと相手の力強さに押され、受け止めるのに精一杯の中で彼女は相手の顔を見た。
「っ・・・!」
彼女は目を瞠り、その男を凝視する。
相手のその眼は瞳孔が開ききっていた。
その瞳に宿るもの----------怒涛たる怒り、憎しみ。
それを見て悟った。
騎士団から逃げようとして、この男はこのような行動をとったのではないということを。
男は、一矢を報いようとしている。
<帝国>に対する全ての恨みつらみをこの刃に込めて。
捕まるとか、逃げるとか、それはこの男にとってはどうでもいいことなのだ。
どんな手段を使っても、<帝国>の人間に恨みを晴らすためならば。
彼女は肩の痛みさえ忘れ、憎しみに燃える男の瞳に、自分自身を重ねた。
怒り、憎しみ。
私もこうだったのだろうか。
あの者をこの目で見ていた時。
あの者をこの手にかけた時。
それとも、もっと酷い有様だったのかもしれない。
怒りに震え、憎しみに燃える男は雄叫びを上げて、ぐっと力を押し込んできた。
リリーティアはそれを利用して、わざと体の力を抜いて男の横へとすっと流れるように体重をかけた。
すると、男の体ががくっと前へと傾き、バランスを崩す。
それを見計らって《レウィスアルマ》を大きく振り上げると肩の痛みも忘れ、刃物を握る男の手首に力いっぱい叩き込んだ。
男は呻き声をあげ、刃物は地面へと落ちた。
彼女はその刃物を払うようにして蹴飛ばすと、男が瞳孔が開ききったまま彼女の首元を狙って腕を伸ばしてきた。
男の手が首に微かに触れ、彼女が身の危険を感じた、その時。
「がぁあっ!・・・ぅ、ぁ・・・ぁ・・・」
鈍い音と悲痛な声と共に、男の手がピタッと止まった。
彼女は何が起きたのかわからなかった。
----------ドサッ
男は小さくうめき声を上げながら地へと倒れ、一度も起き上がることもなくそこで気絶した。
あたりに漂う張りつめた空気を感じながら、リリーティアは気絶した男からゆっくりと視線を上げる。
そこには、男を見下ろしているシュヴァーンの姿があった。
彼を目にしてほっとした瞬間、彼女は肩の痛みを思い出したのだった。