第15話 強さ
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彼の後姿を見届けた後、リリーティアは自室の扉を開けて荷物を運んだ。
月の光が部屋を仄かに照らし、研究室よりも少し温かさを感じる空気を感じながら、荷物を机の上に置いた。
「優しさが強さ、か」
彼女は彼が言っていた言葉を思い返しす。
人を想うことが、自分の”優しさ”。
そして、その優しさが自分の”強さ”。
リリーティアは思った。
本当にそれは自分の”強さ”なのだろうか。
そもそも、彼の言う”強さ”とは何をさすべきものをいうのか。
改めて考えてみると、彼女には正直よく分からなかった。
ひとつの言葉にもいろいろな意味があり、その人によって同じ言葉でもその意味は大きく変わってくるものだ。
彼女は窓越しに、夜空に浮かぶ上弦の月を見上げた。
いつか分かる日が来るのだろうか。
”優しさ”が”強さ”になるという意味を。
分かるようで、分からない、この言葉を。
自分自身が本当の意味で理解する日が。
彼女は大きく息を吐くと、懐中時計を手に持って見た。
そして、ふっと微笑んだ。
「(今日はもう休んだほうがいいかな)」
研究室から持ってきた大量の資料や書物が無意味なことになってしまうが、
ヒスームがわざと低い声で言っていた言葉を思い出し、彼女はすぐに寝る支度を始めた。
ペルレストが壊滅したと聞いたあの日から、
彼女の頭の中には常に、その壊滅の原因として考えられる様々な仮説が目まぐるしく巡り、
それは寝台で目を閉じている間もずっと頭から消えることはなかった。
しかし、今日は違った。
今、寝台で目を閉じている彼女の頭の中にあるのは、
彼が見せたあの穏やかな笑みと、彼が言った救っているというあの言葉であった。
彼女は目を閉じてしばらく経たないうちに、久しぶりに訪れた深い眠りへと落ちていった。
第15話 強さ -終-