第14話 想い
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「どう責任を負うつもりかね?」
「今は事態の把握を急ぐと共に騎士団を各地に派遣、街の守備をさらに強化させ、今後の対応を図っていきます」
<帝国>評議会議事堂。
ペルレストで起きた非常事態について、今まさに議論されている最中だった。
アレクセイは<帝国>評議会議員たちに囲まれた発言台立ち、議員たちを見上げている。
「騎士団長、我々は言ったはずだが」
議員の男はそう言うと、アレクセイの後ろの席に座っているある人物の顔をちらりと見る。
それは、<帝国>の紋章が描かれた徽章を左胸に付け、紅の魔導服(ローブ)を羽織ったリリーティアだった。
彼女は視線をやや下に落とし、座席に座っている。
「本当に、任せてもいいのかと」
低い声が議事堂に響く。
その声音は威圧的で、リリーティアに重くのしかかる。
アレクセイは険しい顔つきで、さっきから話し続けている議員に顔を向けた。
その議員、<帝国>評議会議員 カクターフ公。
一大門閥貴族の長、評議会指折りの実力者でもある彼は、ほかの議員よりも食ってかかるかのようにアレクセイを責め立てていた。
「この非常事態に市民は混乱しています。まずは<帝国>がこの事態にどう動くべきか、今はその話し合いが大切だと思われますが?」
カクターフはアレクセイを睨み見た。
「団長、話を逸らさないでもらおうか?はたまた、責任から逃れようとしているのではなかろうな」
「話を逸らすとは?わたしは今この会議が開かれている主旨を申したまでです」
カクターフの鋭い視線に臆することなく、アレクセイは平然として言葉を返す。
「結界に守られている街が一晩で滅びたなど前代未聞のことだ。凶暴化した魔物の仕業と言っているが、・・・本当にそうなのかね?」
リリーティアはカクターフの鋭い視線をじりじりと感じた。
彼女はこの会議が始まってから一度も議員たちに対して目を合わせられないままでいた。
「といいますと?」
「結界魔導器(シルトブラスティア)の結界力の強化、そして、結界範囲の拡大などするから、本来持つ結界魔導器(シルトブラスティア)の性能が失われ、魔物が結界を潜り抜けて街を滅ぼした、ということを言っておるのだよ。リリーティア・アイレンス博士研究員の考えた、あの計画案が原因でな」
「(やはり・・・・・・)」
評議会からの疑惑的な言葉。
それは、この会議に自分が呼ばれた時点から思っていた通りの文句だった。
リリーティアは恐る恐る視線を上げ、アレクセイを見た。
どんな表情でカクターフの言葉を聞いているのか、後ろからでは分からなかったが毅然としたいつもの彼の背中があった。
「我々の声も聞かず、君が彼女を推挙したのだぞ。あのヘリオース氏の息女だからか知らんが、あまりにも彼女を庇護しずぎではないかね?」
その言葉に、そこにいる大勢の議員たちが頷いていた。
「庇護も何も、彼女は<帝国>のためにこれまでよくやってくれています。彼女の努力に、<帝国>が、そして、市民がどれだけ助けられているのかご存じですか」
アレクセイは声を張り上げて言った。
しかし、カクターフを始め、数人の議員たちには彼に冷ややかな目を向けている。
アレクセイの言葉はただ彼女を守っているだけの口実にしか聞こえていないようだ。
「市民がどうかは知らんが。しかし、結局のところ、その努力は街を滅ぼすきっかけを与えてしまっただけではないのかね?」
リリーティアは膝に乗せた手に力を込める。
「余計なことを施すからそうなるのだよ」
不敵な面構えでカクターフは言い放つ。
その時、リリーティアはばっと顔を上げた。
意を決したような目。
「議長、進言権を申し立てます」
リリーティアの突然の発言に、議員だけでなく、アレクセイや彼の補佐官らも彼女を瞠った。
周りの視線を気にすることなく、彼女はじっと議長と見据えている。
幾秒かの沈黙に包まれた後、議長は評議会議員たちに目配せすると小さく頷いた。
「よろしい。議員のみなさま、騎士団長も宜しいか」
カクターフを始め、評議会議員はそれぞれに互い顔を見合わせると、カクターフは黙って自分の座席へと座った。
リリーティアは席を立つと、発言台へと歩み寄る。
対してアレクセイは発言台を降りると、自分の席へと歩いた。
彼はすれ違いざまにリリーティアを様子を窺い見ると、彼女はただまっすぐに前を見ていた。
彼女のその目を見たアレクセイははっとした。
それは、いつもの彼女は違う雰囲気であるのを感じたからだ。
何かに立ち向かわんとする凛とした瞳であり、何も怖れてなどいない自信あふれた瞳。
そして、リリーティアは発言台に立つ。
それは、まさに堂々とした出で立ちだった。