第14話 想い
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「それはどういうことですか?!」
ヘリオースが帝都を発ってからひと月半。
騎士団長の執務室から、リリーティアの驚愕した声が響いた。
「捜索隊によれば到着した時にはすでに街は壊滅状態だったようだ。誰一人、生存者もいなかったと報告がきている」
「か、壊滅って・・・。そ、そんな、結界魔導器(シルトブラスティア)は正常に起動して・・・」
アレクセイの報告に動揺を隠せない彼女。
「確かに結界魔導器(シルトブラスティア)の状態は、その時まで異常はなかったと聞いている」
「そ、それならば、街を襲った魔物が・・・、結界の効かない生態だった、ということですか?・・・ま、まさか・・・そんな」
その声は少し上ずっていた。
僅かに唇が震えている。
「この信じがたい事態に皇帝の名において<帝国>全土に非常事態宣言を出すことが決定した。気の毒だが、騎士団にはこの事態が落ち着くまで、今まで以上の激務に耐えてもらわなければならん」
アレクセイは小さく息を吐いた。
落ち着いているように見えるが、その表情から実際は困惑していることが窺えた。
誰だってこの事態は信じられないことだろう。
その事態とは、----------”結界で守られているはずの都市がひとつ壊滅した”
誰もがその事実に驚き、壊滅させたといわれる魔物たちを恐れた。
すでに<帝国>全土で問題になっている、魔物が頻繁に出没し魔物が凶暴化しているという事態も、結局は不幸な偶然として見ていただけであった。
確かに不安だったことは事実だが、結界の中ならおそらく大丈夫だろうと誰もが思っていた。
特にリリーティアによって結界魔導器(シルトブラスティア)を強化した街は、あれからというもの不安な気持ちさえもなく、毎日を平和そのものの中で過ごしていた。
どれだけ魔物が凶暴化したとしてもこの街は大丈夫だ。
そう、その平和の中には”絶対”があった。
結界魔導器(シルトブラスティア)を強化したこの街なら、という”絶対”が。
しかし、それは脆くも崩されることになった。
壊滅した街の名は----------ペルレスト。
ふた月以上前にキャナリ小隊たちと共に赴き、結界魔導器(シルトブラスティア)を結界力を強化したばかりだった。
《豊穣の街》と呼ばれ、豊かで美しかった島の街。
それが今や瓦礫の島と化し、その面影は一晩にして消えてしまったのだという。
街が壊滅する時、その近くの海域を船で航海していた者たちの話はこうだった。
夜も深まった頃、何とも言えぬ声 -魔物たちの咆哮だったのだろうと思われる- が遥か水平線の彼方から響き、
瞬間、激しい爆発音と共に白く迸る光柱が空を貫いた。
真夜中だというのに昼間のような明るさに包まれ、爆発音と混じって魔物たちの咆哮が聞こえた。
魔物たちの声を聞いた者たちは遠くから響いているはずなのに、不思議と身も震えるほどの恐怖を感じたという。
穏やかだった波もその声に反響しているかのように荒れはじめ、身の危険を感じ、急いでその場から離れたということだった。
その報告を受けた<帝国>は早急に捜索隊を派遣し、その海域へ向かわせた。
焦げ臭い匂いが漂う海を渡った先には大きな島があった。
島に辿り着く前に、すでに無残な光景が目の前に広がっているのがわかった。
捜索隊はその光景を目にした途端、あまりの恐怖にしばらく動けなかったらしい。
そこにあったはずの街は瓦礫の山ばかり、建造物ひとつ何も残っていなかった。
そんな中に人の影も在るはずもなく・・・。
街だけの話ではない、島全体が何もなかった。
まるでこの島だけが黒以外の色をすべて奪われたかような。
そう、そこには”黒”しかなかったのだ。