第13話 笑顔
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陽光が燦々(さんさん)と降りそそぐ騎士団本部の正門前。
そこには多くの人が集まっていた。
リリーティアとキャナリ小隊たち、そして、アレクセイ。
その向かいにはヘリオースと、緑色の隊服をきた騎士が何十人といた。
緑の隊服、それはかつてリュネールが率いていたリュネール隊だった。
ハルルの街の任務を終えてから今現在も、リュネール隊はヘリオースがいる<砦>の守備隊としての任についている。
未だ隊長不在のままだがヘリオースがその役割を果たしていた。
「ハルルでのお花見楽しみにしているよ」
「はい。私たちも楽しみに待っています」
キャナリが頷くと、ヘリオースは笑顔を返した。
小隊の皆がどこか嬉しそうな表情で、その時を楽しみにしている様子であった。
「おっと、そうそうダミュロン君。その時にでも語り合おうな♪」
「え゛っ・・・!?」
にっと満面の笑みを向けられたダミュロンは顔を引きつらせた。
キャナリたちはくすくすと笑い合い、良かったなと言う仲間たちをダミュロンは横目で睨んだ。
そんな彼らのやり取りにヘリオースは小さく笑った後、アレクセイに向き直ってびしっと指を差した。
「アレクセイ!いいか、絶対に行くからな!」
「だから、そう簡単に本部をあけることはできんと何度------」
「はい決定!」
アレクセイは抗議の声をあげようとしたが、ヘリオースは「決定といったら決定だ」と言い張るばかりだった。
あまりの勝手さに呆れて物が言えず、アレクセイは「もう知らん」と相手にすること自体を止めた。
相手の態度にヘリオースはむっとすると、キャナリ小隊たちのほうへと向いた。
そして、顔の前に人差し指を立て、真剣な眼差しで彼らを見る。
「いいか、みんな。昨日言ったとおり強制連行だ。あいつは何が何でも連れて行くからな。あ、それまでにしっかり鍛えといてくれよ。あいつの力は並大抵なものでは太刀打ちできないからな」
「はい!」
キャナリ小隊たちも真剣な表情を浮かべて、まるでそれが任務が如くに威勢のいい声で応えた。
昨日の今日だというのに、すでにヘリオースとキャナリ小隊の息はピッタリのようである。
その様子を見ていたリリーティアは困ったような笑みを浮かべずにはいられなかった。
「まさか、君たちまで・・・・・・」
アレクセイは本気で困った顔をした。
花見については、リリーティアとヘリオースから話を聞いた彼だが、やはり騎士団のトップがそう簡単に本部をあけることはできないのだ。
だから、彼は申し訳ないと思いながらも断りを入れたのだが、ヘリオースはそれを許さなかった。
挙句には「すでにひとつは手を打った」などと言い出して、「首を洗って待っとけよ」とその場に捨て台詞まで残していく始末であった。
そのひとつの手がキャナリ小隊たちのことだったのだろう。
親友に毒されてしまったと、アレクセイはひとり深いため息をついた。
そんな彼をよそにヘリオースはリリーティアへと向き直る。
「リリーティア、体には気をつけてな」
「うん。お父さんも無理しないでね。道中、気をつけて」
「ああ。ありがとう」
そして、リリーティアは自分も父のように頑張ることを伝えた。
彼女の言葉にヘリオースは嬉しげに笑って頷いた。
「じゃあな、リリーティア~!みんな、アレクセイをよろしくな~!」
ヘリオースは大きく手を振りながら、騎士団本部の正門を潜って行く。
リリーティアも父と同じように大きく手を振って見送った。
彼女の隣では、「疲れるやつだ」とアレクセイがひとりぼやいていたが、その目はとても穏やかだった。
帝都を発つ、ヘリオースの笑顔。
その笑顔はまたしばらく会えない寂しさを和らげてくれた。
リリーティアは彼に負けない笑顔で、父の姿が見えなくなるまで手を振り続けた。
次はハルルの樹の下で、父の楽しげな笑顔を見られる日を思いながら。
第13話 笑顔 -終-