第11話 姉妹
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「リリーティア殿、大丈夫でしたかな?」
「あ、はい。すみません、ありがとうございます」
リリーティアの椅子を引きながら、ヒスームが言葉をかける。
彼の紳士的な振る舞いにお礼を言いながら、彼女は椅子に座った。
「あんな態度とらなくたっていいのに・・・」
「あれは貴族出身の騎士ですな。同じ者の出として恥ずかしい限りだ」
ソムラスに続いて、貴族の出であるヒスームが呆れ顔で言った。
さっきの騎士の態度に、人としても同じ貴族出身者としても憤りを感じているようだ。
「いえ、あれは私からぶつかってしまいましたし、相手のあの反応は当然のことですから」
自分に非があるとリリーティアは申し訳なさそう笑った。
何かあれば全てを自分の責任に結びつける、相変わらずな彼女の気質に、ダミュロンたちはただ苦笑を浮かべる。
「ま、さっきの騎士のことなんか気にすんなよ、リリーティア」
そう言うと、ゲアモンは手に持ったフォークで料理を口に運んだ。
「そうそう、気にするだけ無駄ってもんだ」
「はい。ありがとうございます」
ダミュロンも頷きながら笑って言う。
彼ら優しい言葉に、リリーティアは嬉しげな笑みを浮かべて頷いた。
「それにしても小隊長、早かったな」
「?」
何が早かったのだろう。
ゲアモンの言葉にリリーティアは首を傾げた。
「グラスの割れる音が聞こえて、それがリリーティア殿だと気づくや否や走っていきましたからな」
彼らによると、グラスが割れてすぐ、それは相手の騎士が怒鳴よりも早く、
キャナリはその場をさっと立ち上がると、リリーティアの元へ駆けていったということだった。
それを聞いて彼女は少し驚いたが、なんだが嬉しいような恥ずかしような、むず痒さを感じた。
思えば出会った当初から彼女はよく自分のことを気にかけてくれていたと、リリーティアはこれまでのことを思い返した。
何かあれば心配してくれたり、真剣に怒ってくれたり、何度も温かい言葉をかけてくれる。
その時、ふとリリーティアは思った。
「お姉ちゃんっていうのは、あんな感じなのかなぁ」
それは、独り言のように呟いた言葉だった。
彼女も声に出すつもりはなかったらしく、無意識のうちに思っていた事が声に出てしまったようで、言った後からはっとして気付き、少しバツの悪そうな表情を浮かべた。
「ち、小さい頃なんですけど、兄弟姉妹(きょうだい)に憧れていたことがあったんです。それで、ちょっと・・・」
「でも、確かにお二人を見てると本当の姉妹のように見えますよ」
「え・・・そ、そうですか?」
ソムラスの言葉に目を瞬かせるリリーティア。
彼の言葉に、ダミュロンたちも頷いていた。
彼女はさっきと同じように、嬉しいような恥ずかしいような、むず痒さを感じていたが、
さっきよりも嬉しいという気持ちのほうが今は遥かに大きかった。
「私にもあんな優しいお姉ちゃんが本当にいてくれたらよかったんですけど」
「あら、私はもうリリーティアのことを本当の妹のように思っているんだけど」
「っ!?」
突然のキャナリの声にリリーティアは大きく肩を震わせた。
そして、かっと頬が熱くなるのを感じた。
「はい、どうぞ」
「・・・あ、ありがと、ございます」
割れたグラスの後片付けを終えたキャナリは、新たに水を入れたグラスをリリーティアの前に置いた。
本人に聞かれたことがよほど恥ずかしかったのだろう。
リリーティアは赤くなった顔を俯かせていて、礼を言うその声はとても小さかった。
「す、すみません、キャナリ小隊長。その、私・・・勝手なことを・・・」
リリーティアはキャナリに視線を合わせられないまま、不安げな面持ちで彼女に謝った。
それは、自分の言ったことは彼女には迷惑だったかもしれないと、そう思ったからだ。
「どうして謝るの?そう言ってくれて、私はとても嬉しいんだから。ね?」
反して、キャナリはとても嬉しそうに笑っていた。
彼女のその笑顔に、リリーティアの不安は一瞬にしてかき消される。
恥ずかしさの名残からか、まだ少しその顔は赤く染まっていたが、リリーティアははにかんだ笑みを見せた。
ダミュロンたちはそんな二人の様子に自然と笑みを零した。
誰が見ても、二人のその姿は本当の姉妹そのものだった。
第11話 姉妹 -終-