第10話 永遠
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「・・・で、でき・・・た?」
ダミュロンは自分が何をしたのかよく分からなくなっていた。
まさか本当に魔術が発動できるとは思っていなかったからだ。
キャナリたちも驚きのあまり、その場で固まっている。
「やりましたね、ダミュロンさん!」
皆が唖然としている中、リリーティアは目を輝かせ喜びの声を上げた。
「今のってもしかして・・・成功、した?」
「はい!もしかしなくても、成功です!」
武醒魔導器(ボーディブラスティア)を呆然と見詰めるダミュロン。
まだ彼には自分が魔術を使えたことが信じられないようだった。
「すごいではないか、ダミュロン」
「びっくりしました!」
「まさか本当に使えるとはな」
「ほんと、信じられないわ」
傍から見守っていた彼らは次々と驚きの声をあげる。
小隊たちの皆がざわめきたち、ダミュロンに賞賛の声をかける者たちもいた。
「よっしゃ!」
それでようやく魔術を使えたことを実感したダミュロンは、拳を握り締めて喜んだ。
リリーティアはそんな彼の様子をとても嬉しげに見詰めた。
「でもリリーティア、どうして風属性の魔術と相性がいいっていうことがわかったの?」
「最初にいくつかした質問と一通り各属性の魔術を詠唱してもらって、その様子から判断してみました」
「それで分かるものなんだな」
「なんだか不思議ですね」
「私の勝手な見解なので、本当に風属性と相性がいいのかは、もう少し見てみないと分かりませんが」
魔術にはそれぞれ属性というものがあり、現在理論が確立されているのは、火・風・水・地・闇の五つ。
ちなみに闇属性は最近になって理論が確立されたもので、他の属性より扱いが難しく、闇属性の魔術を使う者はまだ少ない。
それとは逆に属性がついていない、無属性の魔術もある。
そして、属性には人それぞれに相性というものがあった。
その属性と相性がいい人は、他の属性の魔術を扱うよりも相性がいい魔術のほうが発動しやすく、また高度な魔術も扱いやすい。
ダミュロンの場合、それは風属性ということだった。
「でも、リリーティアの教え方はわかりやすくていいと思うね。だらだら講義を聞いているより、俺はこっちのほうが断然いいわ。魔術が使えたのも、まさしく教官の教えが良かったからだな」
「きょ、教官って・・・・・・そ、それに、それはダミュロンさんの実力です。私はただ指示を出しただけですし、使えるか使えないかは本人次第なんですから」
それでも魔術を使えたのはリリーティアのおかげだと、彼は言った。
周りの仲間たちも、うんうんと大きく頷いている。
「魔術理論の講義中、いつも退屈そうにしている男が魔術を使えたというのは、よほどリリーティア殿の教え方がうまかったのでしょう」
「ふふ、それは言えているわね」
「絶っ対にリリーティアのおかげだな」
「そうですよ、リリーティアさんだからこそです」
「ちょっとまて。しれっと俺を馬鹿にしてるだろ、お前ら!」
皆の言い様に、ダミュロンは声を上げた。
仲間たちはそんなことはないと言いながらも、明らかに白々しくダミュロンからさっと目線を逸らしていた。
リリーティアは彼らのやり取りに思わず小さく笑い声をもらした。
「リリーティアもなに笑ってんの」
「はは、ご、ごめんなさい。おかしくて、つい」
可笑しさは抑えられず、結局彼女は声を上げて笑った。
笑う彼女をダミュロンはジト目で見る。
「で、でも、魔術を使えることが出来たのは、紛れもなくダミュロンさんの力ですから」
ジト目を向けてくる彼に彼女は何とか笑いを抑えると、笑顔を浮かべて言葉を続けた。
「おめでとうございます、ダミュロンさん」
ダミュロンは何度か目を瞬かせると、自分のことのように喜ぶ彼女の笑顔につられて彼も笑った。
その彼の笑顔を見た瞬間、リリーティアは自分が初めて魔術を使ったあの日の事を思い出した。
幼なかったその時のことは父の喜ぶ笑顔しか覚えていないけれど、
あの時の自分もあんな風に笑っていたような、そんな気がした。