第10話 永遠
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リリーティアは、まず簡単な質問を行った。
その質問はすべて魔術の理論に関するものだったが、魔術を扱う上での初歩的な知識のことばかりだ。
その質問を終えると、彼女はダミュロンに初級魔術の詠唱時に唱える言葉を教えながら、それぞれの属性の魔術をイメージさせた。
たとえば風の属性の魔術なら、自分なりに吹き渡る風をイメージする、といったやり方である。
詠唱した後は魔術名を唱えながら発動させるというのが一通りの流れだが、
リリーティアは発動させる手前で彼を止めるということを繰り返し、その流れをすべての属性分の魔術で行った。
その様子を物珍しげにキャナリたちは見詰めていた。
指導を受けている彼自身も、これで本当に魔術がうまく発動できるのだろうかと半信半疑で、彼女の言われる通りにやっていく。
「ダミュロンさん。もう一度だけ、風属性の魔術を詠唱してもらえますか?」
「ああ。えっと・・・風よ、切り刻め」
戸惑いながらもダミュロンは目を閉じ、彼女が教えてくれた通りに詠唱する。
彼の足元には緑色に輝く術式が浮かんでいた。
「(ん?なんだ、この感じ・・・?)」
彼は詠唱を唱え終わるのと同時に何かを感じたようだ。
「はい、そこまででお願いします」
不思議な感覚に戸惑いながらも、リリーティアの声に従い、彼は目を開けて詠唱をやめた。
「・・・なんか、今」
「何か感じましたか?」
「なんて言っていいかわからんけども、・・・不思議な感じがしたような」
彼は腕につけている武醒魔導器(ボーディブラスティア)を訝しげに見た。
「不思議な感覚ってなんだ?」
「いや、これが俺もなんて言っていいかわからないんだわ」
ゲアモンの問いにダミュロンは肩をすくめる。
そんな二人の会話を聞きながら、リリーティアは口元に手を当てて真剣に何か考えている様子である。
「(やっぱり・・・)」
「リリーティア?」
ひとり何やら考え込んでいるリリーティアに、ダミュロンは声をかける。
「ダミュロンさんは、風属性との相性がいいように思います」
「そう、なのか?」
きょとんとするダミュロンに彼女は頷いた。
キャナリたちも不思議な表情を浮かべている。
「それでは、実際に魔術を発動させてみましょう。魔術を発動させるタイミングはもう分かると思います。さっき何かを感じたと言っていましたが、それこそが合図です。
そして、ここからあの的までの距離を考えて下さい。ここで弓の訓練をしているダミュロンさんなら的までの距離感覚は十分掴んでいるので、魔術の発動が出来さえすればうまくあの的に攻撃できます」
ダミュロンは頷くと、静かに目を閉じた。
「(大地に吹く風、的までの距離。そして・・・)」
先ほどと同じように、ダミュロンの足元には緑色に輝く術式が浮かびがる。
祈るような気持ちで彼を見ながら、リリーティアは自分の足につけてある武醒魔導器(ボーディブラスティア)に少しだけ意識を込めた。
それは、もしもの時の対処のためだ。
魔術を扱うことは、下手をすれば、周りの人たちや術者自身が怪我を負うこともある。
辺り一帯には僅かに張り詰めた空気が漂い、キャナリたちも固唾を呑んでその様子を見守った。
「風よ、切り刻め」
ダミュロンは吹き渡る風を思い浮かべ、また、ここから的までの距離を考えながら詠唱した。
すると、再びあの不思議な感覚が起こる。
その感覚を体全体で感じようと、さらに意識を集中させた。
「ウィンドカッター!」
ダミュロンは右手を振り上げて叫んだ。
すると緑輝く風が三日月を描くようにして、数メートル離れている的を切り刻む。
的は真っ二つに割れると、カランカランと音をたて地面に落ちた。
魔術による風によって砂埃が舞い上がり、それは上空に溶けるようにして消えていった。