第6話 約束
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そして、ハルルの街が遠くに見える所まで後退した頃、リュネールが声を張り上げた。
「魔物の進行をここで食い止める!リリーティア!」
彼女の声に走る足を止め、リリーティアはその場で目を閉じる。
足元には青色の術式が浮かんだ。
「天(あま)駆ける水の支配者 その荘厳たる身形(みなり)に汝らを慴伏(しょうふく)せん。-----ウェルテクスドラコ!!」
魔物の群れに向けてリリーティアは魔術を発動させた。
広範囲に巨大な水の渦が発生し、そこから水龍が現われ魔物を飲み込んでいく。
僅かだが魔物の突進してくる勢いを鈍らせることができていた。
「ありがとう!」
「どうか気をつけてください!」
「よろしく頼みます!」
その隙に最後尾を走っていたリュネール隊員の全てが彼女たちの横を通り過ぎていく。
魔物の足止めのために、その場に構えているリリーティアやキャナリ小隊たちに様々な言葉をかけながら、彼らはその場を横切っていった。
「援護を!」
そうして全ての仲間が通り過ぎたのを確認したリュネールはリリーティアの隣に立ち、目を閉じた。
リリーティアもそれにならって再び目を閉じる。
二人の足元にはそれぞれ赤い術式が描かれて輝き出す。
その間、キャナリ、ダミュロンをはじめとする弓の編成隊が突進してくる魔物に向かって次々と弓を放っていった。
無数の矢が雨のように降り注ぎ、魔物たちを襲っていく。
「無慈悲なる劫火は汝らの心をも燃やし尽くす」
「猛りし心 烈火の如く 燃え盛りたる焔(ほむら)となれ」
リュネールが静かに詠唱し、リリーティアがそれに続く。
それぞれの足元に浮かび上がっていた術式がさらに輝きを放ったかと思うと、その術式が二人の間で重なった。
すると、二人の足元にはまた一つの大きな術式が現れた。
「言葉は礎(いしずえ)となり」
「想いは焔とならん」
無数の赤い術式の輪が二人を包む。
まるで示し合わせたかのように同時に目を見開くと、二人は片腕を振り上げた。
「「ルーベルフィルム!!」」
魔物の群れの上空に大きな術式が現われた。
炎の渦が勢いよく燃え盛り魔物を焼き尽くすと、大きな爆発を起こして周りの敵を炎風で空高く吹き飛ばした。
圧倒的な威力をもった魔術を目の当たりにして、そこにいた者たちはみな言葉を失い唖然として立ち尽くしていた。
「何をしている!今のうちに私たちもハルルの街まで退避!」
「は、はい!」
リュネールは一喝し、街に向かって走るよう促した。
今の魔術の威力には相当効果があったのか、大半の魔物たちは呻き声を上げていて、動きからしてもだいぶ弱っているようだ。
逃げるなら今のうちだった。
「(追いかけてこない・・・?)」
ハルルの街へ急ぎながら、リリーティアは背後の様子を伺った。
よく見ると攻撃を免れた魔物たちまでもその場で動きを止めている。
まったく追いかけてくる様子がなかったのだ。
「(さっき戦っている間もどこか違和感があったけど・・・)」
どうも魔物の動きがおかしい。
リリーティアはそんな風に感じていた。
訝しく思いながらも、彼女は街へ向かってただひたすらに駆けた。
そうして、皆が無事にハルルの街まで退避することが出来た。
最後尾をつとめたリリーティアたちは息を切らして街の入り口に座り込んだ。
そんな中、一足先に退避した仲間たちが一行に駆け寄り、労いの言葉をかけてくれた。
その言葉に少しだけ疲れが取れるのをリリーティアやキャナリ小隊たちは感じたのだった。