第5話 信念
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「あ、すみません・・・。なんだか色々と話してしまって・・・」
リリーティアは突然はっとすると、申し訳なさそうに笑った。
どうでもいいような事をつい勝手に話してしまったように思えて、彼女は胸の中でふと恥ずかしさを感じた。
「俺と違って早いうちからちゃんと《なりたいもの》が分かっていたんだな」
「《なりたいもの》・・・ですか?」
「そう。おまえさんの頃の俺は何も考えず遊びほうけていたからな。《なりたいもの》とか、先のことなんかまったく考えて無かったねぇ」
ダミュロンはハルルの樹ではなく、星が輝く夜空を見上げて昔の自分を思い返した。
「今になってようやく、少しずつだけどもそれが見えてきたって感じだもんなぁ」
そう呟くように言うと、彼は苦い笑いを浮かべている。
「あの、ダミュロンさんの《なりたいもの》って何ですか?」
「あー、なんて言っていいかねぇ」
窺うように尋ねる彼女に、ダミュロンは頭を掻きながら困ったように笑った。
「あ・・・、す、すみません」
「違う違う、そうじゃないって。ほんと、どう言葉にしていいもんか分からんのよ」
彼女は困っているダミュロンを見て、易々と聞いてはいけないことだったのかもしれないと、申し訳なく思ったらしい。
その謝罪を意味を察して、彼はすぐに彼女の誤解を否定した。
「う~ん、そうだな・・・・・・」
”本当の騎士”
ダミュロンの頭の中にはそんな言葉が思い浮かんだ。
けれど、彼はその言葉を口にすることをためらった。
今の自分には、まだその言葉を口にするべきではないような気がした。
「いい言葉が浮かんだらまた話すわな」
ダミュロンは申し訳なさそうに笑って言った。
結局、彼にはそれ以外の言葉が思い浮かばなかった。
しかし、その言葉を口にするのにためらいがある彼には、いつか言える時が来るまで彼女には待ってもらうことにした。
近いうちにも胸を張って言える時がくることを、その胸に思いながら。
「はい。是非聞かせてください」
そして、リリーティアは笑顔で頷いた。
いつか彼が話してくれる時を楽しみに待っていようと、その胸に思いながら。
その夜のハルルの樹は、まるで二人をそっと見守っているかのように、優しげな光を放っていた
第5話 信念 -終-