第4話 家族
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「ははは。リリーティアの親父さんってほんと面白い人だな」
ダミュロンは楽しげな声で笑った。
他のみんなも同じように笑っている。
「リリーティアのこと本当に可愛がっているのね」
キャナリの言葉にリリーティアは少し照れたように笑った。
その隣でリュネールがあっと思い出したように手をぽんっと叩いた。
「あ!初めてっていえば・・・リリーティアが初めて魔物と戦った時になるんだけれど-----」
「お母さん!もういいよ!」
まだまだ話をしようとする彼女に、リリーティアは椅子から立ち上がってそれを止めた。
「えー、俺はもっと聞きたいけど?」
ダミュロンはにっと笑って言った。
それはどこかわざとらしく、からかっているようにも見える。
彼には、リュネールの話が面白いのと同時に、その横であたふたするリリーティアの様子が可笑しくて見ていて飽きないらしい。
実を言うと、それは他の皆も同じようであった。
「ほら、もっと聞きたいってリリーティア」
リュネールは、本当に嬉しそうに笑った。
リリーティアはぐっと言葉を飲み込んで椅子に座ると、勘弁してほしいと大きくため息をつき、頭を抱えた。
「それでね」
リュネールは項垂れる彼女をよそに、にこにことして話を続けた。
「リリーティアが7歳の頃なんだけれど。ある日に私と二人、帝都で買い物をしていたらね-----」
----------6年前。
『何か欲しいものはある?』
『う~ん、と・・・』
沢山の露天が並び、多くの人に溢れている商店街。
7歳のリリーティアは、今日は非番である母リュネールと買い物をしに街の中を歩いていた。
彼女は沢山並ぶ店をきょろきょろと見渡し、何を買おうか思い悩んでいる。
何か欲しいものはと聞かれても彼女はすぐに思い浮かぶものがなかった。
それは、母とこうして手を繋いで街を歩いているだけで嬉しくて十分満足していたからでもある。
『何がいいかな~』
『ゆっくり考えていいからね。今日は一日たっぷりあるから』
『うん!』
久しぶりに母と二人での買い物だった。
欲を言うならば父のヘリオースを含めて三人で一緒に過ごしたかったが、彼は今行っている研究に忙しい為それは無理だった。
仕方が無いんだと少し残念な気持ちはありながらも、リリーティアは今日一日母と一緒に思いっきり楽しもうと考えた。
しかし、そんな時だった。
『た、助けてくれー!!た、大変だ!』
突然、帝都の出入り口門から、一人の男が叫びながら走ってきた。
男は騎士の甲冑をつけており、見習いの騎士であることが見て取れた。
『はぁ、はぁ、ま、まも、・・・に・・・・・・。はぁ、はぁ、おそ・・・れ・・・』
見習い騎士は大きく息を切らしてその場に膝をついた。
あまりに必死になって走ってきたのか、うまく呂律が回っていない。
何を言いたいのか聞き取れなかった。
その見習い騎士の様子にただ事ではない雰囲気だけは伝わり、周りの市民たちは不安にざわめき立った。
『何があったの?』
『!?・・・あ、あなたは・・・、リュ、リュネール隊長!!』
見習い騎士は話しかけてきたリュネールに驚きの声を上げた。
その驚きの声の中に安堵したようなものも感じられる。
『落ち着きなさい。何があったのか要点を話して』
『に、任務で商人たちをここまで護衛していたのですが、すぐその先で魔物の群れに襲われました。魔物の数は正確に把握できませんでしが、それなりに多く・・・』
未だ息を荒くしながらも見習い騎士は状況を報告する。
その報告を聞くリュネールの顔は先ほどのリリーティアに対する母の顔はなく、騎士としての凛々しい顔つきに変わっていた。
『あなたは至急騎士団本部へ連絡を。私は救援に向かいます』
『は、はい!』
見習い騎士はリュネールに敬礼をすると、騎士団本部に向かって全力で駆け出していった。
再びリュネールは母としての穏やかな表情でリリーティアを見る。
『リリーティアはこの辺りで待っててくれる?』
『お母さん・・・』
リリーティアは不安でいっぱいの顔で母の顔を見上げた。
リュネールは困ったように笑いなふがら、その場にしゃがみ込み娘の頭を優しく撫でる。
『リリーティア、いつもごめんね。でも心配しないで』
リリーティアはただ黙って頷いた。
そして、少しだけ笑みを浮かべる。
リュネールは、もう一度娘の頭を撫でると、すぐに戻るからと言って帝都の外へ向かって走っていった。
その時には、すでにその顔は騎士としての凛々しい表情になっていた。
そんな母の後ろ姿をリリーティアはじっと見詰め続けた。
小さな拳を力いっぱい握り締めながら。