第3話 太陽
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「(私は・・・・・・)」
どんどん遠ざかっていく紺青の背中たち。
リリーティアはそれを見詰めながら、歯を食いしばり両の拳を力強く握りしめた。
脅威的な数の魔物たちを前にしても毅然と立っている彼らの姿が、その背中が、遠くになるにつれて胸が苦しくなった。
ただ見ていることが、悔しかった。
「(私は・・・・・・)」
リリーティアは頭(こうべ)を垂れた。
荷馬車が激しく揺れ続ける中、ぎゅっと瞳を閉じる。
その表情は苦渋に歪んでいる。
「(何の為に・・・・・・)」
その時、リリーティアの頭の中に浮かんだのは父の笑顔だった。
まるで子どもように喜ぶ父の笑顔がそこにあった。
「(何の為に・・・・・・)」
次に浮かんだのは母の笑顔。
腕の中に包まれたかのような温かな笑みがそこにあった。
「(何の為に・・・・・)」
そして、キャナリの笑顔が浮かんだ。
これまでの任務の中で、何度となく向けてくれた彼女の笑顔。
「(何の為に・・・・・・)」
彼女だけでなく、ダミュロンやゲアモン、ヒスーム、ソムラス、小隊たちのすべての笑顔が浮かんだ。
優しさに溢れた笑顔がそこにあった。
「(何の為に・・・・・・)」
すると、彼女の頭の中には、再びキャナリの笑顔が浮かんだ。
・ ・ ・
けれど、その笑顔はさっきとは違った。
「(そう、違う・・・、それは違う・・・・・・!)」
リリーティアにとってそれは
笑顔であっても、笑顔ではないものだった。
「(私は・・・・・・!)」
『大丈夫』だと、彼女は笑った。
「(私は・・・・・・!)」
『必ず守るから』と、彼女は笑った。
「(私は・・・・・・!)」
覚悟を決めた彼女の笑顔がそこにあった。
「(私は何の為に----------!)」
リリーティアはぎりっと歯を噛み締め、勢いよく顔を上げた。
勇ましささえ感じるほどの凛々しい表情で。
「----------今までやってきたんだ!」
あらん限りの声で叫びながら、リリーティアは手をついて荷馬車から飛び出した。
そして、何度か勢いよく転がりながらも受け身を取り、地面に着地する。
体中が擦り傷だらけになったが、彼女は構うことなく地面を蹴って駆け出した。
その手に愛用の武器、《レウィスアルマ》を握り締めて。