第2話 絆
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「これなら!」
結界を停止してどれくらい経ったのか。
一切の言葉を喋らず操作盤を打ち続けていたリリーティアが急に声を上げた。
そして、一人の技師に、結界を起動した後もしばらくその場で待機してくれるよう小隊たちへの伝言を頼んだ。
「結界を稼動します!」
その指示が行き渡ったところで、結界を起動させた。
すると、エルカバルゼの上空に見慣れた白い輪が現れた。
街の人たちは結界の出現に口々に安堵した言葉を言い合い、街の周りに待機するキャナリ小隊たちも安堵の表情を見せた
しかし、それで終わったわけではない。
ここからさらに、この計画の最終目的である結界魔導器(シルトブラスティア)結界力の強化を慎重に進めていかなければならないのだ。
リリーティアは先の異常事態の原因を踏まえ、所々当初の設定を変えながら操作を行っていった。
アスピオの魔道士たちにも指示を出しながら操作を続けていると、上空に浮かぶ結界の輪がもうひとつ現れたのである。
それから、しばらく経った時。
「全ての数値安定、効率値クリア。・・・・・・強化完了です!」
リリーティアの声にあたりは一瞬静まり返ると、周りの魔導士や技師たちが安堵と喜びの声を上げた。
そして、急いで小隊の人たちに成功した事を報告しに走っていく。
そのことは、街中にあっという間に広がり、人々は喜びに沸いた。
広場の周りには飛び跳ねて喜んでいる子どもたちもいる。
「・・・・・・出来た」
リリーティアはまだ成功したことに実感が沸かず、その場に立ち尽くしていた。
滲んでいた額の汗を拭い、上空に浮かぶ結界の輪を見上げた。
新たに作られた結界の輪は、はじめからそこにあったかのように白く光り輝いている。
「リリーティア!」
背後からキャナリの声が聞こえ、振り向いた。
彼女だけではなく、小隊の皆がこちらに駆けくるのが見えた。
「うまくいったみたいね」
「はい、なんとか」
リリーティアは肩をすくめながらも笑みを浮かべた。
「よくやったな、リリーティア」
「良かったですね!」
「実にお見事です」
ダミュロンとソムラス、ヒスームたちもリリーティアに賞賛の声を上げた。
「いえ、それもこれもみなさんの力があったからこそです。問題が起きてしまった時は正直どうしようかと・・・。
でも、皆さんがいて下さったおかげで、私は冷静に判断を下すことができました。
この成功は皆さんが支えてくれたおかげなんです。本当にありがとうございました!」
リリーティアは息つく間もなく感謝の言葉を紡いだ。
何度も頭を下げる彼女に、感謝の気持ちが痛いほど伝わってきた。
「そこまでされるとちょっと照れくさいですね」
「わたしたちはリリーティア殿を補佐するためにここにいるのですから」
「それにオレ達は仲間だしな。遠慮なんていらないぜ」
頭を掻きなが照れた様子を見せるソムラス。
当然のだと言うように騎士の敬礼をするヒスーム。
力強い声音で胸を張って言うゲアモン。
「お互いにやれることを精一杯やった。礼なんていいっていいって」
手をひらひらさせながら、にっと歯を見せて笑うダミュロン。
「リリーティアは私たちを信じてあの時指示をくれたわ。だから私たちもその想いに応えたかったの」
微笑むキャナリ。
「みなさん」
リリーティアは胸の前でぎゅっと両手を握り締めた。
彼女は顔を伏せると、しばらくそのまま黙り込んでしまった。
「リリーティア!?」
キャナリが声を上げてリリーティアの傍へ駆け寄った。
ダミュロンたちも慌てて彼女に駆け寄る。
彼らが慌てたのには、しばらく黙り込んでいた彼女が、突然ぺたんと地面に座り込んでしまったからだ。
キャナリは彼女の肩に手を置くと、項垂れた彼女の顔を急いで覗き込んだ。
「良かった・・・。本当に良かった、・・・・・・うまく、できた・・・」
リリーティアは呟くように言った。
その声はとても消え入りそうな声だったが、心配するキャナリたちの耳にも届いていた。
彼女は今になって張り詰めいていた緊張の糸が解け、急に力が抜けたようであった。
キャナリやダミュロンたちは互いに顔を見合わせると、心底ほっとした笑みを浮かべた。
彼らのその笑みは、仲間を想う優しさに溢れていた。
そう、リリーティア自身はまだ気づいていなかったが、
すでに彼女とキャナリ小隊たちの間は、-------“強い絆”で結ばれていたのだった。
第2話 絆 -終-