第2話 絆
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翌朝。
リリーティアはキャナリ小隊と共に朝早く帝都を発った。
初の試みとなる結界魔導器(シルトブラスティ)結界力の強化を行う場所はエルカバルゼという街だ。
エルカバルゼは東ペイオキア平原にある中規模の都市である。
一行はまずエルカバルゼまでの道のりの途中にあるデイドン砦を目指していた。
現在、キャナリ小隊の数は約三十。
隊の後ろには1台の荷馬車が引かれ、その中には今回の結界魔導器(シルトブラスティア)に必要なものと騎士達の予備武器が入っている。
今のところ魔物に遭遇することもなく順調に進んでいた。
「あ~、平和だねぇ」
「なにを呑気なこと言ってるの」
ダミュロンは気の抜けた事を言いながら空を仰ぐ。
そんな呑気な彼に隊の先頭を歩くキャナリは呆れた表情を浮かべた。
「この世界に魔物さえいなければねぇ」
「それは魔物の方にしても、わたしたち人に対して思っていることかもしれぬな」
「ちょっと待て。それは冗談でもこわいぞ」
他の仲間たちもダミュロンの言葉に乗ってか、何も起こらないこの道中に他愛無い会話を交わし始めた。
それは到底任務中とは思えないほどの陽気な雰囲気で、互いに軽口を言い合っている。
そんな彼らの様子にリリーティアは思わず笑みを零していると、
「ん?何か嬉しいことでもあった?」
不意にダミュロンがリリーティアへと話かけてきた。
口元を抑えて、ひとり笑っている彼女に気づいたらしい。
「い、いえ、すみません。その、楽しい方たちだな・・・と」
思っていたことが顔に出ていたのを知り、リリーティアは内心恥ずかしく思いながら苦笑を浮かべた。
すると、キャナリがダミュロンたちのほうを横目で見ながら小さくため息をつく。
「呆れられているわよ・・・。もう少し緊張感っていうものがないのかしら」
「まぁ、ずっと気ぃ張り詰めていても疲れるだけだって」
呆れる彼女をよそにダミュロンは楽観的な様子で、「な?」と言ってリリーティアへと陽気な笑みを投げた。
彼に同意を求められたリリーティアは、少し戸惑いながらも笑って頷き返したのだった。
キャナリ小隊たちと出会ったのはまだ昨日のことだが、 リリーティアはこの気兼ねない雰囲気がとても好きに感じていた。
それは、今のやりとりのように彼らの方から気さくに話しかけてくれるおかげもあるのだろう。
キャナリ小隊たちの中で過ごす時間は、すでに彼女にとって安心できるひとつの場所になりつつあった。
それは、彼女自身でも気づかぬ間に。