第1話 始まり
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騎士団長執務室を出て、騎士団本部内の廊下を並んで歩いているリリーティアとキャナリ。
二人はキャナリ小隊の仲間に今回の任務のことを伝えるために、小隊長であるキャナリの執務室に向かっていた。
「リリーティアさんは騎士団長と、とても親しいのですね」
「はい。閣下には昔からお世話になっているんです」
キャナリによると、あの執務室でリリーティアと楽しげに話すアレクセイの姿を目の当たりにした時、内心呆気にとられていたのだという。
騎士としての任務の指示、報告でのやりとりでしか騎士団長と会話を交わさないのもあり、あのように楽しげに笑っている騎士団長の姿は彼女にとっては珍しいものであったらしい。
確かに彼のあの様子は相手と親しい間柄であるからこそ見せる一面ともいえた。
「それでは皇帝にお仕えしてもう長いのですか?」
「いえ、皇帝陛下直々にお仕えさせて頂くようになったのは二年ほど前からです」
リリーティアが皇帝直属としての魔道士になったのは博士号を取ってすぐのことであった。
「皇帝直属ということは、それだけ皇帝の信頼が厚いということですね」
キャナリは感嘆した表情でリリーティアを見た。
そもそも魔導器(ブラスティア)研究員は<帝国>直属に配しており、<帝国>から命ぜられた仕事は請け負うことが義務となっている。
それはもちろんリリーティアも同じことだが、<帝国>直属と皇帝直属との大きな違いは他の魔道士と比べて様々な面で研究を支援されているところにある。
例えばそれは、研究資金などの提供限度額が大きいこと、また、<帝国>が管理している貴重な物や場所を研究のためなら優遇的に許可を取れる権限もあった。
一個人の研究者に<帝国>がそこまで支援をしてくれるということは、つまり、それだけ彼女は皇帝から真に信頼されているということであった。
皇帝家に仕える魔導師となって与えられた左胸にある徽章はまさにその証だ。
「あ、はい、そうですね。有難いことに・・・・・・と言えばいいでしょうか」
照れたような、また困ったような表情を浮かべると、 その表情を隠すためかリリーティアは目を伏せた。
その後もキャナリの執務室に向かう間に二人は互いに何度か会話を交わしていく。
その内、リリーティアは彼女に対してだんだんと親しみを感じていった。
まだ会って間もないというのに、そう感じるのは不思議な感覚ではあったが、それはさっきから彼女が幾度と話しかけてきてくれるからなのか、これまで会った他の騎士とは違ってとても話しやすく、誰よりも強く親しみを抱いた。
「あの、もし良ければなんだけど、・・・リリーティアと呼んでもかまわないかしら?」
そんな不思議な感覚を感じていた時、キャナリが伺うようにして尋ねてきた。
リリーティアは思わず目を瞬かせてキャナリを見る。
その言葉もまた、不思議と嬉しかった。
「はい、もちろんです。どうかお気兼ねなく」
リリーティアが快く頷いて応えると、キャナリは笑みを浮かべた。
「ふふ、ありがとう。それじゃあ、改めてよろしくね、リリーティア」
それはとても温かみのある笑みだった。
「だからすぐに親しみを感じたのだろうか」と、リリーティアはふと思った。
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
そう言って、リリーティアも笑顔を向けた。
彼女のその笑顔はとてもあどけないもので、キャナリはその笑顔から彼女の人柄がよく見て取れたような気がした。
とても心の優しい持ち主なのだろう、と。
そして、キャナリ自身も不思議に思うほどに、リリーティアに対して深い親近感を抱いていたのであった。