第1話 始まり
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----------コン、コン
その時、騎士団長執務室に控えめに扉を叩く音が響く。
誰かが訪問してきたようで、アレクセイの正面に立っていたリリーティアは一歩横へと下がった。
「入りたまえ」
「失礼します」
深く一礼して入ってきた人物は女の騎士だった。
碧(あお)の隊服に、背には紺青の外套、左胸には羽を模った徽章をつけている。
「(あの羽・・・。確か、閣下が立ち上げた部隊の・・・・・・)」
「ちょうどいい所にきてくれた」
「お呼びでしょうか、騎士団長」
その女騎士は胸に手をあてて、騎士の敬礼をした。
「呼んだのは他でもない、次の任務についてなのだが」
アレクセイはそういうとリリーティアの横に立った。
「今回の任務は彼女の護衛、兼補佐をしてもらいたい」
その時、リリーティアは女騎士と目が合った。
彼女のその瞳からはどこか芯の強さが感じられ、その中に聡明さがあるような。
リリーティアから見た彼女の印象はまさに凛とした女性であった。
「彼女は皇帝直属に仕える魔導博士研究員として、この<帝国>を支えてもらっている」
「初めまして、リリーティアと申します」
そう言って、リリーティアは女騎士へと軽く一礼する。
すぐに相手も同じく一礼を返して応えた。
「私は<帝国>騎士団 キャナリ小隊 の小隊長を務めております、キャナリです。初めまして」
キャナリという女騎士は姿勢を正すと、リリーティアへと微かな笑みを浮かべた。
「それで詳しい任務の内容だが----------」
魔物の凶暴化対策の一環として、ある街の結界魔導器(シルトブラスティア)の結界力の強化を行うことが決定され、その実行責任者となったリリーティア。
キャナリ小隊の任務は帝都からその街までの道中、彼女を護衛し、そして、彼女の任務を補佐することだ。
アレクセイが任務の詳細を告げている間、キャナリはそれを一字一句聞き逃さないとでもいうように真剣な眼差しで聞いていた。
「わかりました」
「君たちの活躍ぶりは身に余る思いだ。感謝している」
「いえ、ただ私たちは市民のためにやるべきことをしています。それが騎士ですから」
瞬間、リリーティアの瞳の中で目の前にいるキャナリの姿が母の姿と重なった。
なぜこの時、彼女と母の姿が重なって見えたのか、リリーティア自身もよく分からなかった。
「私たちが責任を持って、あなたを護衛し補佐します」
「はい。どうかよろしくお願い致します」
キャナリの言葉はその通り頼もしく、誠意が感じられるものだった。
リリーティアは不思議と心から安心するのを感じながら、彼女に向かって深く一礼した。
「護衛とは言ったが、リリーティアはかなりの魔術の使い手で武術もなかなかの腕だ。あてにするといい」
「ア、アレクセイ閣下!・・・そ、それはあまりに買い被りすぎですから」
「何を言う。事実を言ったまでだ」
「っ・・・・・・」
あまりにもきっぱりとした物言いでアレクセイが賞するものだから、リリーティアは何も言い返すことができずに言葉に詰まった。
「・・・・・・勘弁して下さい」
少し頬が熱くなるのを感じながら、やっと出た言葉がその一言。
リリーティアは恥ずかしさやらで、なんとも言えない表情になっていた。
「ははは。キャナリ、リリーティアをよろしく頼む」
そんな彼女の様子にアレクセイは声を出して笑うと、キャナリに向き直って言った。
「は、はい」
彼のその言葉は騎士団長としての言葉というより、どこか親身な想いが込められたもののように聞こえ、キャナリは二人のやりとりを物珍しそうに見ていた。