第18話 罪
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
***********************************
リリーティアとアレクセイはあれから一度部屋を出で、騎士団本部内の廊下に立ち、柱を境にして広がっている中庭を見ていた。
空には暗雲が垂れこみ、まるで今の二人の心情を表しているかのようだ。
「皮肉なものだ」
アレクセイは眉間のしわを深くし、ポツリと呟いた。
その隣でリリーティアはなにも言葉を返すことなく、中庭に咲く花を見ている。
「心臓魔導器(ガディスブラスティア)は、人類にとって新たな福音となるはずだったというのに・・・。そのふたりの成功者がどちらも生に望みを失おうとは」
アレクセイは曇天の空を見上げた。
ダミュロンだけでなく、その前に意識を取り戻したもう一人の生存者。
その男もまたデズエールの惨劇を通じて、あまりにも深い傷を精神(こころ)に負っていた。
黒く沈んだ瞳だった。
生きているのにその瞳には光が宿っていなかったのだ。
それは、先刻のダミュロンと同じ瞳の色をしていた。
絶望を湛えた色を。
「大丈夫、です。・・・大丈夫。・・・彼は、彼らは・・・生きています」
リリーティアの微かな声。
それはアレクセイにではなく、自分に言い聞かせている言葉のようにも聞こえる。
「信じています。・・・きっと、・・・・・・戻ってきてくれると」
今は生に望みを失った二人。
だけど、もう少し時間をおけば、以前のように光を取り戻してくれるだろう。
今はただ混乱しているだけなのだ、と。
リリーティアは信じた。
この手で灯した奇跡の灯陽《ひかり》はまだ消えていないと。
そう、信じたかった。