第17話 灯陽
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
大切なものがどんどん失われていくという現実。
まだ、助けられる命があるという希望。
そんな現実と希望の狭間の中。
残酷な風が、奇跡の灯《ひかり》に容赦なく吹き付け、その灯《ひかり》を消そうとしている。
それでも、リリーティアは必死になって希望を心に持ち、その風から灯《ひかり》を守った。
今はただ、奇跡が起きてくれるのを信じることしかできなかった。
そう信じていなければならなかった。
ここに立っているためには。
リリーティアを含む救援隊はアレクセイを先頭に砂漠の中を歩いていた。
一部隊は艦隊周辺の捜査を行い、残りはテムザへ向かいながら生存者の捜索を行っていた。
照り付ける太陽と熱く乾いた風が容赦なく一行を襲った。
それでも前へと進み、生存者を捜し続ける。
「騎士団長、あそこになにか」
ひとりの騎士が指し示す方を見ると、その先に黒いものが点々と見えた。
リリーティアは早足にそこへ向かい、騎士たちもそれに続く。
リリーティアも少し遅れてそれを追いけた。
「来るな、リリーティア!!」
「!?」
アレクセイの叫声に、リリーティアは肩を大きく震わせてその足を止めた。
彼の必死な声に彼女は戸惑ったが、目の前にいる騎士たちを見て、彼の言葉を意図を理解した。
先では騎士たちが口を押さえたり、こちらに体を向けて目を逸らしている者もいる。
中には嗚咽を漏らす声もあった。
その様子を見れば誰だって理解する。
あの先には、惨劇が広がっているのだろうと。
リリーティアは体中が震えるのを感じた。
そして、ゆっくりと目を閉じる。
しばらくそうした後、意を決したような目で前を見据えた。
口元を引き締め、足を踏み出す。
目の前に惨劇が広がっていることを知りながら、どうしてそこに向かったのか。
彼女自身にもわからなかった。
なぜか、体が動いた。
騎士たちを間をすり抜け、前へと進んだ。
誰かの声に止められたような気がしたが、それでも構わず、彼女は進んだ。
そして、見た。
ああ、また----------、
黒く染まった砂の中でアレクセイは騎士たちに何かを言っていた。
彼の腕の中にはひとりの騎士が抱き起こされていた。
けれど、その頭も、その手も、ぐったりと力なく垂れ下がっている。
そこにも、命がなかった。
その騎士は、よく皮肉を言っていた。
けれど、紳士に接する優しさを持つ人であった。
些細な事でも、何度となく助けてくれた人。
------------奇跡の灯陽《ひかり》が、
「リリーティア、来るなと言ったはずだ!」
アレクセイの叫びに近い怒声に、リリーティアは静かに微笑んでみせた。
大丈夫だという意味を込めた笑みを、彼に向けたつもりだった。
「っ・・・・・・リリーティア」
しかし、彼には、それは絶望をたたえた笑みにしか見えず、思わず息を詰まらせた。
彼はただ彼女の名前を囁くことしかできなかった。
----------小さくなるのを感じた。
ああ、お願い、消さないで。
この灯陽《ひかり》を。