第17話 灯陽
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
リリーティアたちはまず周辺を捜索した。
その後、テムザに向かう予定である。
他に生き残っている者がいないか捜索している中、騎士の一人が何かを見つけた。
「これはなんだ?」
「だいぶ汚れているな。・・・・・・弓か?」
「!」
"弓"という言葉にリリーティアは強く反応する。
弓はキャナリ小隊を象徴する武器なのだ。
「見せてください!」
リリーティアはその騎士の元へ駆け寄ると、半ば奪うようにして弓を手にとった。
「ぁ・・・!?」
瞬間、彼女の弓を持つ手が震えた。
その弓はだいぶ汚れていて、黒いものがこびりついていた。
魔物の血なのだろうか、得体の知れない黒いものに汚れた下からは僅かに白が見える。
それでも、その弓には見憶えがあった。
いや、実際に彼女自身その弓を持って矢を射ったことだってある。
騎士団本部の訓練所で、この弓の持ち主に指導をしてもらったことが。
あの時はうまく的に当たらなかったけれど、それでも褒めてくれたのだ。
笑みを浮かべて。
怒った顔、悲しんだ顔、微笑んだ顔。
その表情すべてが相手を想ってのものだった。
誰よりも叱り、誰よりも心配し、誰より支えてくれた。
それは、仲間のように、家族のように。
「キャナリ・・・お姉ちゃん・・・」
任務から戻ってきた時、これからは何度もそう呼ぼうと思っていた、この言葉。
どんな表情をしてくれるのだろう。
不安も少しはあったけれど、それでいて楽しみだった。
喜んでくれると信じて、また呼べる日を待っていた。
しかし、それも幻想となってしまった。
彼女の武器が落ちていただけのことだ。
遺体は見つかっていない。
まだ、望みはある。
リリーティアにそんな思いが頭によぎった。
でも、心の中で揺れる灯陽《ひかり》は、小さくなっていくのを感じていた。
信じたくなかった。
けれど、この時確かに思ったのだ。
もう呼ぶことはできない、と。
奇跡の灯陽《ひかり》が小さくなっていくのを感じた。
ああ、お願い、消さないで。
この灯陽《ひかり》を。