第17話 灯陽
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アレクセイの指示を遠くに聞きながら、リリーティアは騎士団たちとは少し離れた所にひとり立っていた。
彼女は遠征隊が全滅したという事実が未だに信じられなかった。
それでも、この時はまだ、心の中に灯《ひかり》があった。
本当に小さな、今にも消え入りそうな灯《ひかり》。
奇跡という灯《ひかり》が微かに灯っていた。
まだ、助けられる人がいる。
まだ、出来ることがある。
まだ、やるべきことがある。
その為にここにきたのだから、と。
彼女は心の中で、何度も、何度も、自分に言い聞かせた。
そうしなければ立っていられなかった。
無理に頼んでここまで来たのに足手まといになる訳にはいかないと、彼女は凛とした姿でそこに立っていた。
「大丈夫?」
目の前の広大な砂漠を眺めていたリリーティアは、突然背後から誰かに声をかけられた。
振り向くと、金色の髪をもったクリティア族の男がいた。
後ろにはデュークもいる。
出会ってから一言も話さず、ただデュークの傍に寄り添うようにいた彼。
その声は優しさに溢れた温かみのある声色だった。
初めて会ったはずなのに、どこかで聞いたこともあるような声だった。
「ぇ、ぁ・・・はい」
リリーティアはぎこちなく返事を返す。
まだ名前も知らないクリティア族の彼から急に声をかけられて戸惑っていた。
「助けられなくて、・・・ごめんね」
---------------私は言葉を失った。
沈黙の中、微かな熱風が髪を煽った。
「エルシフル、行くぞ」
デュークがその沈黙を破った。
エルシフルという名前らしい、クリティア族の男は静かに頷いた。
その時、デュークがリリーティアの方を見る。
彼は彼女を見据えると口を開きかけたが、何を思ったのか思い留まるようにその口を噤んだ。
「・・・・・・・・・」
---------------また、私は言葉を失った。
リリーティアの知る限り、彼はあまり感情を表に出さない人であった。
現にこの砂漠で出会ってからも彼の表情はひとつも変わらず、今何を思っているのかも分からなかった。
けれど、今のは違った。
何かをためらい、口を噤んだ後のあの表情。
それは、リリーティアに謝ったエルシフルの表情とまったく同じものだった。
その彼と比べれば、その表情には乏しさがあったが確かに同じ表情をしていた。
悲しみでもあり、苦しみでもあり、その中に、悔しさがあるような。
そんな、複雑な感情が入り混じった表情。
それは、あまりに痛々しかった。
あまりにもその表情が痛々しすぎて、彼女は息を呑んだ。
喉を掴まれたかように、言葉が詰まった。
だから、彼女は何も言えなかった。
言葉を失ってしまった。
結局、砂漠の中へ消えていく彼らの後ろ姿を、リリーティアはただ見詰め続けることしか出来なかった。