第17話 灯陽
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「ダミュロン!!」
アレクセイの叫び声。
彼はリリーティアの横を過ぎ、倒れているダミュロンの脇に屈んだ。
返事も、息も、動くこともない。
すべてを失っていた。
左胸から生えるこげ茶色の槍を見れば、それはわかりきったことだった。
心臓(いのち)が、そこにはなかった。
リリーティアは、声も出なかった。
ただそこに立ち尽くしたまま、ダミュロンを見下ろしていた。
よくおどけて笑っていた彼。
けれど今は、喜びも、悲しみも、苦しみさえも、何もない。
何も表情がなかった。
『俺が保証する!』
遠征前、そう言って笑っていた彼。
彼が見せた、最後の笑顔。
あの時は、最後になるなんて思ってもいなかった笑顔。
いつまでのそこにあるのだと思っていた笑顔。
そう思う以前に、当たり前だった笑顔。
彼の瞳には今や瞬きもなく、開いたままの瞳は何も映してなどいない。
映すことも出来ない。
リリーティアは彼の光のない瞳を自分の揺れる瞳に映し続けた。
アレクセイは黙したままダミュロンをじっと見ていた。
そして、静かに手を伸ばす。
震える大きな手で、彼の開いたままの目をそっと閉じた。
アレクセイはしばらくその場で動かなかった。
苦渋に歪んだ表情で目を閉じていた。
その間、リリーティアも騎士団たちも、一切の言葉もなく、僅かに動くこともしなかった。
誰も、動くことが出来なかった。
この悲劇を前に、ただ呆然と立ち尽くすことしか出来なかったのだ。
長い間、沈黙の時が流れた。
沈黙の中、一番最初に動いたのはアレクセイだった。
彼はゆっくりと立ち上がると、意気消沈する騎士たちへと振り返った。
そして、騎士たちに指示を出す声が響き渡る。
仲間の死という悲しみを振り払うかのように、それは張りのある大きな声だった。