第16話 日常
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遠征当日。
「すみませんが、手紙のほうよろしくお願いします」
「ええ、任せておいて。ちゃんとあなたのお父様に届けるわ」
キャナリの執務室で、リリーティアは遠征出発前の見送りとしてキャナリと話をしていた。
「皆さんなら心配はいらないでしょうが。
いつもの顔ぶれが揃ったダミュロンたちに向かって、リリーティアは満面の笑みで言った。
あえて”一応”という部分を強調して。
「一応って・・・・・・」
「ははは、おまえさんも言うようになったね~」
ソムラスは彼女の言い方に冷や汗をかいた。
ダミュロンに至っては、腰に片手を当ててまるで人事のように笑っている。
彼女は彼らの反応を気にも留めず、再びキャナリに向き直った。
「帰ってくる日を楽しみに待っていますので、どうか無事に帰ってきて下さい」
「ええ、ありがとう。リリーティアもまた無理をしてはだめよ。頑張るのはいいけれどほどほどにね。いい、これは命令よ」
「はは。はい、任務のほど承りました。-----ありがとうございます」
愛嬌を交えたキャナリの命令に、リリーティアも愛嬌をもって騎士の敬礼で応えた。
そうして、二人はお互いに笑い合い、しばらく会えないことを惜しんだ。
「なんか俺たちとだいぶ扱いが違わないか」
二人の様子を見ていたダミュロンが少し声を抑えながら、仲間たちに言う。
彼の言葉はリリーティアにもはっきりと聞こえていたが、わざと聞こえていない振りをしてキャナリとの会話を続けた。
「これはこれは、嫌われましたかな」
「お前らがからかいすぎて愛想つかされたんじゃないか」
「ゲアモン、それは君に言えることだよ」
ヒスームが苦笑を浮かべている横で、
ゲアモンが非難の目でダミュロンとソムラスに向かって言うと、ソムラスは呆れた表情で反論した。
「俺よりもダミュロンだろ。よくからかってたからな」
「は?俺?」
ゲアモンの言葉に、ダミュロンは訝しい表情を浮かべる。
「「確かに」」
「いちいち声を揃えるなっての」
ヒスーム、ソムラスの声が見事に一致する。
納得の面持ちで大きく頷いている二人に、ダミュロンはジト目で睨んだ。
「ふふ、ごめんなさい。冗談ですから」
「謝んなくたっていいぜ、リリーティア。意地悪なダミュロンが悪い」
「<砦>にはリリーティア殿のお父上もいることだ。花見より先になるが、そこでダミュロンと
「ああ、それがいいですね!」
以前ヘリオースが帝都に帰ってきた時のことと関連して、彼らは話し始める
「そんなことあったなぁ」とリリーティアは懐かしむように苦笑を浮かべた。
「よかったなぁ、ダミュロン。あの時逃したチャンスがすぐにも巡ってきたぜ」
「こんなに早くチャンスが巡ってくるなんて運がいいですね」
「お前らしつこい!だからどうして俺だけが悪いみたいになってんだ」
彼らの相変わらずなやり取りに、リリーティアは声を上げて笑う。
その隣ではキャナリが呆れたように笑っていた。
「またこうして皆さんと一緒に過ごせる時間を楽しみにしています。どうかお気をつけて」
リリーティアは改めてダミュロンたちに言葉を送る。
その言葉こそ、彼らに向けての心からの想いだ。
「そのためにもオレたち頑張るからよ」
「少しでも早く終わることを願っていてください」
「だな、ちゃちゃっと行って帰ってくるとしますか」
「リリーティア殿もお体にはお気をつけて」
彼らの言葉にリリーティアは笑みを浮かべて応えた。
彼らが早く帰ってこられるよう、<帝国>の混乱に陥れている様々な問題を一刻も早く究明することに、さらに力を注いでいこう。
そう彼女は心に決意を新たにした。
もちろん、キャナリから受けた命令のことも、ちゃんと忘れずに。
「さぁ、そろそろ出発するわよ。リリーティア、行ってくるわね」
「あ、はい!キャナリおね-----小隊長・・・」
彼女は今度こそと思ったのだが、やはりそれは昨日と同じことだった。
どうしても言葉にする勇気がない。
「リリーティア?」
「い、いえ!任務、頑張ってください」
結局、キャナリに対して”お姉ちゃん”と呼ぶことは諦めた。
また帰ってきたときにでもいいだろうと落ち込む気持ちを笑顔で隠し、廊下を進んでいく仲間たちに小さく手を振って見送った。
皆の姿が見えなくなると深くため息をつき、しばらくの間、彼女はキャナリの執務室の前で立ち尽くしていた。