Put on a happy face
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組織に潜入してからは、怒涛の日々だった。
正直、この1年あっという間だった。
ジンの勧めで組織に入る事になり、最初は主に雑用。
意外な事にデスクワークがあり、パソコンと見つめ合うだけの日々が続いた。
そこそこ認められてからは、(幸いな事に!)
バーボンのサポート役として任務を果たした。
しばらく経って"ライ"というコードネームを貰った。
ジンからは"黒髪で長髪のお前にお似合いだ。前任と同じように組織を裏切ったら殺す"と皮肉めいた言い方をされた。
隣にいたバーボンは酷く不服そうな顔をしていたと思う。
コードネームを与えられた事と、私が裏切らないか随分気になるのかジンと行動を共にする時間は次第に増えていった。
そのおかげで様々な情報が得られて組織壊滅に貢献する事が出来た。
手榴弾、爆弾、銃撃戦。
組織のメンバーを捕まえる為の戦いは凄まじかった。
民間人には被害が出ないよう全力を尽くせたと思う。
そして私は今、空しか見る事が出来ていない。
片足が瓦礫の下敷きになって身動きが取れなくなっていた。
隣に落ちているスマホは笑えるくらい粉々だ。
多くの瓦礫が壁をなし、鉄骨が剥き出しという周囲の惨劇とは正反対に、空はとても綺麗だった。
青空に煙のグレーが混ざって降谷さんの目の色みたいだ。
降谷さんの能力は空のように広大で、本質は雲のようで絶対掴ませてはくれない。バーボンとして隣に立つ彼の実力に何度驚かされたか。私が最も尊敬する上司。今頃、降谷さんは多くの人達に手錠をかけているんだろうな。
それなのにこんな所で身動きが取れなくなっている私はなんて愚かなんだろうか。
さっきまで響いていた銃の音や爆発音もいつしか聞こえなくなっていた。
…助けは来るのかな。ここは結構奥まっている場所な上、随分と下まで落とされてしまった。
見つけにくい事この上ない。
助けが来たとしても、発見が遅れればクラッシュ症候群で命を落とすかもしれない。
その前にこの周囲の瓦礫が崩れてペシャンコになるかもしれないな。
「あーぁ…。ここまでかな…。」
潜入した時点で生きて帰る事は諦めていたはずなのに気付いたら涙が頬を伝っていた。
伝った涙は首元のマフラーを濡らした。
あの時シュウから借りたマフラー。
ずっとお守り代わりに持っていた。
使い込んで少し擦り切れている所もある。
もう彼の残り香は一切ない。
「……シュウは大丈夫かな。
いや、シュウの事だから絶対大丈夫か。」
彼が生きていてくれればもういいか。
ゆっくり目を閉じてこの状況に耐えた。
足の痛みはいつしか感じなくなっていて、足が痺れた時のジンジンしたような重だるい感じだけが残っていた。
マフラーをギュッと握りしめる。
これがあると、シュウに抱きしめられているような気になる。
でも、やっぱり本物がいいな。
一年前、自分から突き放したのに"会いたい"なんて虫が良すぎるよね。そうボソッと呟いた瞬間、上から声がした。
「ナマエ、大丈夫か?」
瓦礫の上から私を見下ろすのは紛れもなく赤井秀一だった。
珍しくニット帽は被っておらず、服は煤や血で汚れているようだった。
「…なんで…ここに…?」
さっき煙を吸ったせいもあるが、驚き過ぎて声が掠れた。
まさか会いたいって呟いた次の瞬間に会えるとは普通思わないし。
「助けに来た。…足が挟まっているんだろう?
今助けるからな。挟まってからどれくらいの時間が経った?」
「わからない…けど、30分位だと思う。この瓦礫、かなり重いよ?」
「俺を見くびるなよ。」
上から軽々降りてくると、瓦礫に手をかけた。
ぐっと力を入れると瓦礫が浮き、すんなりと右足を引き抜く事が出来た。
「わっ…!」
足は痺れたようにジンジンしているけど、急に血液が流れたようで足の感覚と共にじわじわと痛みが襲ってきた。足は麻痺していないようで良かった。
「ありがとう!シュウ!ここでこのままかと少し諦めかけてた…っ!」
「無事で良かった。瓦礫に巻き込まれていく君を見た時は肝が冷えた。追っ手を殺るのに時間がかかって、すぐに助けに行けなくて悪かった。怖かったな?」
「…近くで見てたの?」
「あぁ。応戦しようと思って近くにいたんだ。」
「よく私がいる所が分かったね?」
「まぁな。だてにこの一年、君を監視していない。」
「えっ!?」
「以前、ナマエのご両親がスマホに細工をしたと言っていただろう。」
「あっ、そういえば!すっかり忘れてた!
まぁいいやと思って諦めて何も対処してなかった。」
「仕事用のスマホには盗聴器がつけられていた。君のご両親に頼んで俺も情報を得ていたんだ。」
「もしかして、色々会話聞いたり…してた?」
「…そうだな。ご両親に代わって俺がずっと会話を盗聴していた。大丈夫だ、俺しか聞いていない。」
その言葉に血の気が引いた。
「うわぁぁぁ!!」
「可愛かったよ。
寝る前にはよく俺の名前を呼んでくれていたな?
それに時々、俺を想って自分で慰めていたようだ。
布の擦れる音や君の可愛らしい声を聞いて何度犯してやりたいと耐えたか。
はっきり言って拷問だった。
君の元へ向かわなかっただけ褒めて欲しいくらいだ。」
ため息混じりにどことなくイラついているような視線を向けられた。
「いーやー!!もうやだ!!!」
恥ずかしすぎて顔から火が出そう!
あの時、再び抱かれた事で自分の熱情は抑え込めなくなっていた。
時々シュウとの行為を思い出しては自分でシていたけど、まさか聞かれているとは思わなかった。
恥ずかしさで思わず地面を転がり回りたい位だった。ひとまず顔を伏せてその場でもがいてみても、いたたまれない気持ちは消えない。
「恥ずかしがる事はない。俺だって君を想ってする事はよくある。50:50だ。」
「全然フィフティ・フィフティじゃない!
私はシュウの聞いた事ないし!!!」
「そうか?じゃあ帰ったら俺がどうやって、
ナマエを想ってしていたか実際に見せやろう。」
「えっ、違!聞きたい訳でも見たい訳でもなくて!!
あーもうやだ!もう無理!聞かれてたなんて…!
誰だよ盗聴器つけたの!両親!覚えてろ!
私、ここでやっぱり死ぬ事にする!!
だから見殺しにして!ここに置いてって!
なんなら瓦礫の下敷きにでも!」
「馬鹿か!」
「もうシュウの顔二度と見れない〜!!
私を諦めて幸せになって!もう生きていけない!」
「前にも言ったはず。俺は君がいないと幸せにはなれんよ。少し黙っていろ。
これ以上ふざけた事を抜かすと無理矢理口塞ぐぞ。
今は大人しく俺に担がれていろ。」
軽々と担がれ、くぼみを利用してホイホイと瓦礫を登った。少し怖くて落とされないようにしがみつくのが精一杯だった。
そういえば、高校の時も屋上の高い所を軽々登っていたっけ。あの頃から身体能力凄かったもんね。
シュウのおかげであっという間に瓦礫の上に足をつく事が出来た。
「上から見ると、本当に酷い光景…。」
火は消えていたものの、瓦礫の隙間から立ちのぼる黒煙は細々と空へと向かっていた。
焦げ臭い匂いが鼻を突く。
「…ぜんぶ、終わったの?」
「そうだな、ひとまずは終わった。
後は各国にいる末端や残党を捕まえる位だな。」
「そう、良かった…。」
「あぁ。よく頑張ったな。」
シュウが目を細めて笑う。いつもよりずっと子供っぽい、昔見た笑顔そっくりだった。
その笑顔を見て、ようやく終わったのだと感じた。
心底ほっとした。私も心の底からまた笑える気がした。
お互い笑い合うとシュウが胸元からボロボロの手のひらサイズのノートを取り出し、感慨深く眺めた。
「第1段階の目標は、達成したよ。父さん。」
「それ、何…?」
「これは日本に来る少し前に父から渡された物だ。
少しだが、組織に関する情報が書かれている。」
「シュウに託したんだね…。」
「あぁ。それにまさか15のガキがこんな大事なもの持っているとは誰も思わんからな。
俺なら真相にたどり着くと思ったんだろう。
昔から俺は好奇心旺盛だったからな。
俺の次の目標はナマエと幸せになる事と、父を探す事だ。
…例え死体だったとしても。
一緒に叶えてくれないか?」
ゆっくり頷くと、シュウの手がそっと右頬に触れた。
陶器を扱うように優しい手。
次に起こる事に期待してそっと目を閉じた。
「…やはり、ここではやめておこう。」
「えっ。」
「キスでは済まなくなりそうなのと―
君の上司が歩いてきている。」
振り返ると降谷さんが酷い形相で近づいてきた。
右手に拳銃を持って。
「このままここに居たら殺されかねん勢いだな。
ひとまず俺は退散するとしよう。
ジェイムズ達と合流する必要もあるしな。
またな。気をつけて警視庁に帰れよ。
それと、あの時の忘れ物だ。」
そう言って一年前、工藤邸に置いていったコピーの指輪を私の指に嵌めて立ち去った。
忙しくて体重が減ったせいか、指輪のサイズはぶかぶかになっていた。
「チッ…赤井は行ったか。」
「降谷さん!やっぱり無事だったんですね。」
「あぁ。…ナマエ、足を怪我しているんだろ?とにかくまずは病院へ。おぶってやるから乗れ。」
「そんな、歩けるから大丈夫ですよ。」
「折れてたらどうする。黙って運ばれてろ!」
申し訳なく思いながらも降谷さんの背中に身体を預けた。
正直、この1年あっという間だった。
ジンの勧めで組織に入る事になり、最初は主に雑用。
意外な事にデスクワークがあり、パソコンと見つめ合うだけの日々が続いた。
そこそこ認められてからは、(幸いな事に!)
バーボンのサポート役として任務を果たした。
しばらく経って"ライ"というコードネームを貰った。
ジンからは"黒髪で長髪のお前にお似合いだ。前任と同じように組織を裏切ったら殺す"と皮肉めいた言い方をされた。
隣にいたバーボンは酷く不服そうな顔をしていたと思う。
コードネームを与えられた事と、私が裏切らないか随分気になるのかジンと行動を共にする時間は次第に増えていった。
そのおかげで様々な情報が得られて組織壊滅に貢献する事が出来た。
手榴弾、爆弾、銃撃戦。
組織のメンバーを捕まえる為の戦いは凄まじかった。
民間人には被害が出ないよう全力を尽くせたと思う。
そして私は今、空しか見る事が出来ていない。
片足が瓦礫の下敷きになって身動きが取れなくなっていた。
隣に落ちているスマホは笑えるくらい粉々だ。
多くの瓦礫が壁をなし、鉄骨が剥き出しという周囲の惨劇とは正反対に、空はとても綺麗だった。
青空に煙のグレーが混ざって降谷さんの目の色みたいだ。
降谷さんの能力は空のように広大で、本質は雲のようで絶対掴ませてはくれない。バーボンとして隣に立つ彼の実力に何度驚かされたか。私が最も尊敬する上司。今頃、降谷さんは多くの人達に手錠をかけているんだろうな。
それなのにこんな所で身動きが取れなくなっている私はなんて愚かなんだろうか。
さっきまで響いていた銃の音や爆発音もいつしか聞こえなくなっていた。
…助けは来るのかな。ここは結構奥まっている場所な上、随分と下まで落とされてしまった。
見つけにくい事この上ない。
助けが来たとしても、発見が遅れればクラッシュ症候群で命を落とすかもしれない。
その前にこの周囲の瓦礫が崩れてペシャンコになるかもしれないな。
「あーぁ…。ここまでかな…。」
潜入した時点で生きて帰る事は諦めていたはずなのに気付いたら涙が頬を伝っていた。
伝った涙は首元のマフラーを濡らした。
あの時シュウから借りたマフラー。
ずっとお守り代わりに持っていた。
使い込んで少し擦り切れている所もある。
もう彼の残り香は一切ない。
「……シュウは大丈夫かな。
いや、シュウの事だから絶対大丈夫か。」
彼が生きていてくれればもういいか。
ゆっくり目を閉じてこの状況に耐えた。
足の痛みはいつしか感じなくなっていて、足が痺れた時のジンジンしたような重だるい感じだけが残っていた。
マフラーをギュッと握りしめる。
これがあると、シュウに抱きしめられているような気になる。
でも、やっぱり本物がいいな。
一年前、自分から突き放したのに"会いたい"なんて虫が良すぎるよね。そうボソッと呟いた瞬間、上から声がした。
「ナマエ、大丈夫か?」
瓦礫の上から私を見下ろすのは紛れもなく赤井秀一だった。
珍しくニット帽は被っておらず、服は煤や血で汚れているようだった。
「…なんで…ここに…?」
さっき煙を吸ったせいもあるが、驚き過ぎて声が掠れた。
まさか会いたいって呟いた次の瞬間に会えるとは普通思わないし。
「助けに来た。…足が挟まっているんだろう?
今助けるからな。挟まってからどれくらいの時間が経った?」
「わからない…けど、30分位だと思う。この瓦礫、かなり重いよ?」
「俺を見くびるなよ。」
上から軽々降りてくると、瓦礫に手をかけた。
ぐっと力を入れると瓦礫が浮き、すんなりと右足を引き抜く事が出来た。
「わっ…!」
足は痺れたようにジンジンしているけど、急に血液が流れたようで足の感覚と共にじわじわと痛みが襲ってきた。足は麻痺していないようで良かった。
「ありがとう!シュウ!ここでこのままかと少し諦めかけてた…っ!」
「無事で良かった。瓦礫に巻き込まれていく君を見た時は肝が冷えた。追っ手を殺るのに時間がかかって、すぐに助けに行けなくて悪かった。怖かったな?」
「…近くで見てたの?」
「あぁ。応戦しようと思って近くにいたんだ。」
「よく私がいる所が分かったね?」
「まぁな。だてにこの一年、君を監視していない。」
「えっ!?」
「以前、ナマエのご両親がスマホに細工をしたと言っていただろう。」
「あっ、そういえば!すっかり忘れてた!
まぁいいやと思って諦めて何も対処してなかった。」
「仕事用のスマホには盗聴器がつけられていた。君のご両親に頼んで俺も情報を得ていたんだ。」
「もしかして、色々会話聞いたり…してた?」
「…そうだな。ご両親に代わって俺がずっと会話を盗聴していた。大丈夫だ、俺しか聞いていない。」
その言葉に血の気が引いた。
「うわぁぁぁ!!」
「可愛かったよ。
寝る前にはよく俺の名前を呼んでくれていたな?
それに時々、俺を想って自分で慰めていたようだ。
布の擦れる音や君の可愛らしい声を聞いて何度犯してやりたいと耐えたか。
はっきり言って拷問だった。
君の元へ向かわなかっただけ褒めて欲しいくらいだ。」
ため息混じりにどことなくイラついているような視線を向けられた。
「いーやー!!もうやだ!!!」
恥ずかしすぎて顔から火が出そう!
あの時、再び抱かれた事で自分の熱情は抑え込めなくなっていた。
時々シュウとの行為を思い出しては自分でシていたけど、まさか聞かれているとは思わなかった。
恥ずかしさで思わず地面を転がり回りたい位だった。ひとまず顔を伏せてその場でもがいてみても、いたたまれない気持ちは消えない。
「恥ずかしがる事はない。俺だって君を想ってする事はよくある。50:50だ。」
「全然フィフティ・フィフティじゃない!
私はシュウの聞いた事ないし!!!」
「そうか?じゃあ帰ったら俺がどうやって、
ナマエを想ってしていたか実際に見せやろう。」
「えっ、違!聞きたい訳でも見たい訳でもなくて!!
あーもうやだ!もう無理!聞かれてたなんて…!
誰だよ盗聴器つけたの!両親!覚えてろ!
私、ここでやっぱり死ぬ事にする!!
だから見殺しにして!ここに置いてって!
なんなら瓦礫の下敷きにでも!」
「馬鹿か!」
「もうシュウの顔二度と見れない〜!!
私を諦めて幸せになって!もう生きていけない!」
「前にも言ったはず。俺は君がいないと幸せにはなれんよ。少し黙っていろ。
これ以上ふざけた事を抜かすと無理矢理口塞ぐぞ。
今は大人しく俺に担がれていろ。」
軽々と担がれ、くぼみを利用してホイホイと瓦礫を登った。少し怖くて落とされないようにしがみつくのが精一杯だった。
そういえば、高校の時も屋上の高い所を軽々登っていたっけ。あの頃から身体能力凄かったもんね。
シュウのおかげであっという間に瓦礫の上に足をつく事が出来た。
「上から見ると、本当に酷い光景…。」
火は消えていたものの、瓦礫の隙間から立ちのぼる黒煙は細々と空へと向かっていた。
焦げ臭い匂いが鼻を突く。
「…ぜんぶ、終わったの?」
「そうだな、ひとまずは終わった。
後は各国にいる末端や残党を捕まえる位だな。」
「そう、良かった…。」
「あぁ。よく頑張ったな。」
シュウが目を細めて笑う。いつもよりずっと子供っぽい、昔見た笑顔そっくりだった。
その笑顔を見て、ようやく終わったのだと感じた。
心底ほっとした。私も心の底からまた笑える気がした。
お互い笑い合うとシュウが胸元からボロボロの手のひらサイズのノートを取り出し、感慨深く眺めた。
「第1段階の目標は、達成したよ。父さん。」
「それ、何…?」
「これは日本に来る少し前に父から渡された物だ。
少しだが、組織に関する情報が書かれている。」
「シュウに託したんだね…。」
「あぁ。それにまさか15のガキがこんな大事なもの持っているとは誰も思わんからな。
俺なら真相にたどり着くと思ったんだろう。
昔から俺は好奇心旺盛だったからな。
俺の次の目標はナマエと幸せになる事と、父を探す事だ。
…例え死体だったとしても。
一緒に叶えてくれないか?」
ゆっくり頷くと、シュウの手がそっと右頬に触れた。
陶器を扱うように優しい手。
次に起こる事に期待してそっと目を閉じた。
「…やはり、ここではやめておこう。」
「えっ。」
「キスでは済まなくなりそうなのと―
君の上司が歩いてきている。」
振り返ると降谷さんが酷い形相で近づいてきた。
右手に拳銃を持って。
「このままここに居たら殺されかねん勢いだな。
ひとまず俺は退散するとしよう。
ジェイムズ達と合流する必要もあるしな。
またな。気をつけて警視庁に帰れよ。
それと、あの時の忘れ物だ。」
そう言って一年前、工藤邸に置いていったコピーの指輪を私の指に嵌めて立ち去った。
忙しくて体重が減ったせいか、指輪のサイズはぶかぶかになっていた。
「チッ…赤井は行ったか。」
「降谷さん!やっぱり無事だったんですね。」
「あぁ。…ナマエ、足を怪我しているんだろ?とにかくまずは病院へ。おぶってやるから乗れ。」
「そんな、歩けるから大丈夫ですよ。」
「折れてたらどうする。黙って運ばれてろ!」
申し訳なく思いながらも降谷さんの背中に身体を預けた。