Put on a happy face
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目が覚めると、目に入ってきたのは白色だけだった。明るさは認識出来るようだが、未だ霧がかかったように白い。
ただ目を凝らせばなんとか物の輪郭位は分かるので、少しは回復しているらしい。
隣の人型のシルエットに触れるとモゾモゾと動いた。
「寝れたか?」
「よく寝れた。」
「…飯食おうか。」
「うん。夜中に肉まん食べた割にはお腹空いた。」
「だろうな。もう昼だからな。」
「えっ、今は朝じゃないの?」
「肉まん食ってもう一度寝た時点で朝方だった。
なんだ、何か予定があったのか?」
「ないけど、ちょっと驚いただけ。」
時計が見れないと時間の感覚が狂いそうだ。
ぼんやりしてたらあっという間に一日が終わってしまいそう。
昼食にシチューを食べてからソファーに横になった。
身体は少しだる重くて、まだ本調子ではないと感じる。
何も言わずブランケットをかけられ、淹れてもらった熱々の紅茶に癒された。
少ししてリビングに戻ってきた気配を感じたので、ニヤリと笑いながら頭付近をポンポンと叩いた。
私の意図を汲み取ってくれたのか、私の頭を少し持ち上げるとソファーに座った。
頭に当たるシュウの太腿は思った以上に固くて高かった。
やっぱり足もかなり鍛えてるんだろうなぁ。
すごいなぁ。
「寝にくいだろう。やはり退こう。」
「そのまま座ってて。」
寝るのはやめて肩にもたれかかった。
自分よりも高い体温が伝わってきて落ち着く。
彼はコーヒーを飲んでいるんだろう。
コーヒーの香ばしい良い香りがする。
このままぼんやりしていたら寝てしまいそうだ。
何か話そうと口を開いた。
「シュウも閃光弾にやられた事ある?」
「あぁ、何度かある。俺も耳と目を短時間だがやられたよ。手探りでなんとか切り抜けた事もあるが、大抵すぐに仲間に助けられた。
こういった場合、1人でなんとかするのは無理だ。
だから気兼ねなく俺に頼ると良い。」
全面的に頼っているのを申し訳なく思っているのがバレバレだったようだ。
私に気を遣わせないようにそう言ってくれるのは嬉しいが、やっぱり自分の不甲斐なさを感じる。
シュウと再開するまではこんなに役立たずではなかったはずなのに。
「…そういえば、あとでボウヤが来るらしい。
閃光弾にやられたと言ったら随分心配していたよ。
見舞いに来るそうだ。」
「えっ!すっぴんだし、ボロボロなんだけど…。」
「大丈夫だ。十分可愛い。問題ない。」
「かっ…かわっ…!もう、からかわないで!」
冗談っぽく胸板を叩いてみたが、案の定びくともしないのが少し悔しい。
「そ、そうだ。テレビ!テレビ聞こえるか試したい!」慌ててリモコンを手探りで探したが見つからず、シュウが電源を入れてくれた。
「……あれ?」
テレビ、確かここだよね?思わず画面を掴んだ。
耳を近づけてみたり、結構なボリュームにしてもらったものの音が微かにしか聞こえなくて、内容も飛び飛びでよく分からない。
「…ダメそう。やめとく。」
やっぱり生身の人間の声とテレビの音では声質が違うんだろうか?うーん。
ーーー
少ししてコナン君が来てくれた。
下の方でぼんやりと子供のシルエットが浮かぶ。
「久しぶり!来てくれてありがとう。」
「ポアロに居る安室君から、手土産を預かったそうだ。これは…フィナンシェだな。」
「嬉しい!安室さんには後でお礼言わなきゃ。
あ、コナン君。私の耳元で話してくれる?
それなら聞こえると思うから。」
屈んで耳を傾けた。
耳に息はかかるものの、何故か声はほとんど聞こえなかった。あれ、生身なら聞こえるんじゃないの?
「ん…?んー?ごめん、何言ってるか全く分からないや…。」
「俺の声は、聞こえるんだろ?」
「うん。なんでだろ。あっ、そうだ!試しに変声機使ってみてくれる?今度は昴の声で。」
耳元に息はかかるものの、声は聞こえなかった。
「え…?あれ、分かんない。」
「もしかして、音の高低差か?
俺の声より沖矢の声は高いからな。
そうだ、試しにキャメルの声で試してみるか。
彼も声が低いからな。
…どうだ、聞こえるか?」
「!うん、聞こえた。多分、声が低い方が聞こえるのかもしれない。」
「高音域の難聴か。」
「シュウが声が低くて助かる。」
「初めて自分の声が有難いと思ったよ。
…もう帰るのか。」
「コナン君、ありがとね。
また元気になったらお話しようね。」
「お大事に、だそうだ。」
「ありがとう。」
ーーー
さっき貰ったフィナンシェを食べながら紅茶を飲んだ。こんなにぐうたらしていて良いんだろうか。
「明日、病院へ行くんだろう?」
「うん。確か10時予約だったかな。
もう一度検査をしてもらおうと思う。」
「付き添ってやりたいが、残念ながら赤井秀一としては病院へは行けない。
昴の声は聞こえないようだし、キャメルを付き添わせても良いか?」
「そんな、キャメルさんに悪いよ。」
「大丈夫だ。伝えておく。」
…キャメルさんと2人か。正直ほとんど喋った事ないし、気まずい…。
次の日、朝からキャメルさんが迎えに来てくれた。
「キャメルさん、ありがとうございます。」
「いえ、私で良ければいくらでも使って下さい。」
「やっぱり、キャメルさんの声も聞き取りやすい。」
「そうですか!良かったです。
初めて自分の声が役に立ちます。
それでは、ナマエさんをお預かりします!」
「 」多分"頼んだぞ"と言っているんだと思う。
勘だけど。
聞こえないのは少し寂しい。
昴の声も好きだから。
「いってきます。」
病院の診察を受けた所、特に目や耳に異常は見られなかった。
「それなのに、なんでまだ症状が続いているんでしょうか?」
「…閃光弾を受けて前後、強いストレスがかかりませんでしたか?だそうです。」
「強いストレス?…まぁ、人が亡くなるところは見ましたけど、そんなの職業柄いつもの事ですし。
後は、足を撃たれて流石に痛かったです。
…うーん。…それ以上は浮かばないです。」
「自分の死を感じる事はありましたか?だそうです。」
「えっ。」
医師はほんの少しだけ動揺した私を見逃さなかった。
「精神科の受診を勧める、だそうです…。」
「精神科?私にはカウンセリングが必要だと思えません。時間が経てば治ります。」
少しイライラして、嫌な言い方だったかもしれない。
深呼吸して、「様子を見て必要なら予約します」と言うと納得してもらえた。
工藤邸に戻って検査結果は問題なかった事を伝えるとほっとしていた。
「良かったな。すぐに目も良くなるさ。」
「うん。」
その後はなるべく明るく振舞った。
大丈夫、私は問題ない。元気。
だけど頭の片隅に、医師からの言葉がちらつく。
寝る支度をしてベッドに横になった。
今日こそはベッドから落ちないように端を確認しているとシュウが昨日と同じく後ろから抱きしめてきた。
壊れ物を扱うように、強すぎず弱くない力で。
肩にまわされた彼の腕をしっかりと掴むと、安心感から涙腺が緩みそうになった。
誤魔化すように咳払いをしてポーカーフェイスを貫いたつもりだったが。
「本当は医師に何か言われただろ。」
ただ目を凝らせばなんとか物の輪郭位は分かるので、少しは回復しているらしい。
隣の人型のシルエットに触れるとモゾモゾと動いた。
「寝れたか?」
「よく寝れた。」
「…飯食おうか。」
「うん。夜中に肉まん食べた割にはお腹空いた。」
「だろうな。もう昼だからな。」
「えっ、今は朝じゃないの?」
「肉まん食ってもう一度寝た時点で朝方だった。
なんだ、何か予定があったのか?」
「ないけど、ちょっと驚いただけ。」
時計が見れないと時間の感覚が狂いそうだ。
ぼんやりしてたらあっという間に一日が終わってしまいそう。
昼食にシチューを食べてからソファーに横になった。
身体は少しだる重くて、まだ本調子ではないと感じる。
何も言わずブランケットをかけられ、淹れてもらった熱々の紅茶に癒された。
少ししてリビングに戻ってきた気配を感じたので、ニヤリと笑いながら頭付近をポンポンと叩いた。
私の意図を汲み取ってくれたのか、私の頭を少し持ち上げるとソファーに座った。
頭に当たるシュウの太腿は思った以上に固くて高かった。
やっぱり足もかなり鍛えてるんだろうなぁ。
すごいなぁ。
「寝にくいだろう。やはり退こう。」
「そのまま座ってて。」
寝るのはやめて肩にもたれかかった。
自分よりも高い体温が伝わってきて落ち着く。
彼はコーヒーを飲んでいるんだろう。
コーヒーの香ばしい良い香りがする。
このままぼんやりしていたら寝てしまいそうだ。
何か話そうと口を開いた。
「シュウも閃光弾にやられた事ある?」
「あぁ、何度かある。俺も耳と目を短時間だがやられたよ。手探りでなんとか切り抜けた事もあるが、大抵すぐに仲間に助けられた。
こういった場合、1人でなんとかするのは無理だ。
だから気兼ねなく俺に頼ると良い。」
全面的に頼っているのを申し訳なく思っているのがバレバレだったようだ。
私に気を遣わせないようにそう言ってくれるのは嬉しいが、やっぱり自分の不甲斐なさを感じる。
シュウと再開するまではこんなに役立たずではなかったはずなのに。
「…そういえば、あとでボウヤが来るらしい。
閃光弾にやられたと言ったら随分心配していたよ。
見舞いに来るそうだ。」
「えっ!すっぴんだし、ボロボロなんだけど…。」
「大丈夫だ。十分可愛い。問題ない。」
「かっ…かわっ…!もう、からかわないで!」
冗談っぽく胸板を叩いてみたが、案の定びくともしないのが少し悔しい。
「そ、そうだ。テレビ!テレビ聞こえるか試したい!」慌ててリモコンを手探りで探したが見つからず、シュウが電源を入れてくれた。
「……あれ?」
テレビ、確かここだよね?思わず画面を掴んだ。
耳を近づけてみたり、結構なボリュームにしてもらったものの音が微かにしか聞こえなくて、内容も飛び飛びでよく分からない。
「…ダメそう。やめとく。」
やっぱり生身の人間の声とテレビの音では声質が違うんだろうか?うーん。
ーーー
少ししてコナン君が来てくれた。
下の方でぼんやりと子供のシルエットが浮かぶ。
「久しぶり!来てくれてありがとう。」
「ポアロに居る安室君から、手土産を預かったそうだ。これは…フィナンシェだな。」
「嬉しい!安室さんには後でお礼言わなきゃ。
あ、コナン君。私の耳元で話してくれる?
それなら聞こえると思うから。」
屈んで耳を傾けた。
耳に息はかかるものの、何故か声はほとんど聞こえなかった。あれ、生身なら聞こえるんじゃないの?
「ん…?んー?ごめん、何言ってるか全く分からないや…。」
「俺の声は、聞こえるんだろ?」
「うん。なんでだろ。あっ、そうだ!試しに変声機使ってみてくれる?今度は昴の声で。」
耳元に息はかかるものの、声は聞こえなかった。
「え…?あれ、分かんない。」
「もしかして、音の高低差か?
俺の声より沖矢の声は高いからな。
そうだ、試しにキャメルの声で試してみるか。
彼も声が低いからな。
…どうだ、聞こえるか?」
「!うん、聞こえた。多分、声が低い方が聞こえるのかもしれない。」
「高音域の難聴か。」
「シュウが声が低くて助かる。」
「初めて自分の声が有難いと思ったよ。
…もう帰るのか。」
「コナン君、ありがとね。
また元気になったらお話しようね。」
「お大事に、だそうだ。」
「ありがとう。」
ーーー
さっき貰ったフィナンシェを食べながら紅茶を飲んだ。こんなにぐうたらしていて良いんだろうか。
「明日、病院へ行くんだろう?」
「うん。確か10時予約だったかな。
もう一度検査をしてもらおうと思う。」
「付き添ってやりたいが、残念ながら赤井秀一としては病院へは行けない。
昴の声は聞こえないようだし、キャメルを付き添わせても良いか?」
「そんな、キャメルさんに悪いよ。」
「大丈夫だ。伝えておく。」
…キャメルさんと2人か。正直ほとんど喋った事ないし、気まずい…。
次の日、朝からキャメルさんが迎えに来てくれた。
「キャメルさん、ありがとうございます。」
「いえ、私で良ければいくらでも使って下さい。」
「やっぱり、キャメルさんの声も聞き取りやすい。」
「そうですか!良かったです。
初めて自分の声が役に立ちます。
それでは、ナマエさんをお預かりします!」
「 」多分"頼んだぞ"と言っているんだと思う。
勘だけど。
聞こえないのは少し寂しい。
昴の声も好きだから。
「いってきます。」
病院の診察を受けた所、特に目や耳に異常は見られなかった。
「それなのに、なんでまだ症状が続いているんでしょうか?」
「…閃光弾を受けて前後、強いストレスがかかりませんでしたか?だそうです。」
「強いストレス?…まぁ、人が亡くなるところは見ましたけど、そんなの職業柄いつもの事ですし。
後は、足を撃たれて流石に痛かったです。
…うーん。…それ以上は浮かばないです。」
「自分の死を感じる事はありましたか?だそうです。」
「えっ。」
医師はほんの少しだけ動揺した私を見逃さなかった。
「精神科の受診を勧める、だそうです…。」
「精神科?私にはカウンセリングが必要だと思えません。時間が経てば治ります。」
少しイライラして、嫌な言い方だったかもしれない。
深呼吸して、「様子を見て必要なら予約します」と言うと納得してもらえた。
工藤邸に戻って検査結果は問題なかった事を伝えるとほっとしていた。
「良かったな。すぐに目も良くなるさ。」
「うん。」
その後はなるべく明るく振舞った。
大丈夫、私は問題ない。元気。
だけど頭の片隅に、医師からの言葉がちらつく。
寝る支度をしてベッドに横になった。
今日こそはベッドから落ちないように端を確認しているとシュウが昨日と同じく後ろから抱きしめてきた。
壊れ物を扱うように、強すぎず弱くない力で。
肩にまわされた彼の腕をしっかりと掴むと、安心感から涙腺が緩みそうになった。
誤魔化すように咳払いをしてポーカーフェイスを貫いたつもりだったが。
「本当は医師に何か言われただろ。」