Put on a happy face
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想定外だった。
まさかこんなにも早くこの組織が動くとは。
ナマエが潜入捜査をしているこの一ヶ月以上もの期間、何もしなかった訳ではなかった。
ジェイムズに頼んでアメリカで起こった人身売買や売春に関する事件の資料を送って貰いナマエが潜入捜査しているものと関わりがないか調べた。
しかし、なかなかこれといったものはなかった。
ここは日本。そもそも彼らのテリトリーだし、それに自分はこの世に居ない事になっているので表立って捜査する事も出来ない。
もどかしさで増えるのはストレスとタバコの本数。
日に日にイライラは募り、灰皿の吸殻も山を作る。
正直、ナマエと短期間ですら会えないのが辛かった。
『17年も会っていなかった癖に。』
彼女に呆れたように言われてしまいそうだ。
だがあの時は覚悟を決めて、思い出だけで生きていこうと決めた。
しかしこうして再開してしまったら、彼女を想う気持ちにしていた蓋は見るも無惨に砕け散った。
思い出だけではやっていけない程に彼女に恋焦がれていた。
「俺もまだまだだな。」
苦笑しながら取り出した煙草の箱とマッチをテーブルに放り投げた。
ナマエへの心配は勿論だが、
客が彼女を性的な目で見ているであろう事が許せなかった。
今頃客に触られたり、無理矢理キスを迫られたりしていないだろうか…。
挙句に枕営業……いや、それは有り得ないのは分かっている。
ただ自分が勝手に作り上げ膨らませた妄想に嫉妬しているだけ。
風見君や降谷君も居るだろうし、彼女の実力ならせいぜい1ヶ月で解決するだろうと思った。
しかし1ヶ月を過ぎても何の音沙汰もない。
遂に自分の我慢が限界を超えた。
眼鏡を外し、手で顔を覆って歯を食いしばった。
あぁ、ムシャクシャする。
「昴さん?」
ややトーンの高い声に一瞬彼女かと思ったが違った。
「やぁ、ボウヤ。どうした?」
「昴さんこそ酷い顔してるけど、どうしたの?」
「あー…。なんでもない。」
「恋人と喧嘩でもした?」
「いや。」
「…潜入捜査か何かで会えてないの?」
「…ボウヤにはなんでもお見通しだな。」
ボウヤは俺の横に座った。
「その資料見ても良い?」
「あぁ構わんよ。別に極秘の資料がある訳でもない。」
「ありがとう。」
パラパラと資料を捲り、大まかに彼女が扱っている事件と潜入捜査先を伝えた。
「あれ?この人…!」
「その資料か?日本からアメリカに売られたと思われる日本人女性4名だ。」
「僕、この人の顔見た事ある!特徴的なホクロが顔にあるから多分そう。
数年前にキャバクラで火災があって、亡くなったって新聞で読んだよ。お店では源氏名だったから、本名は分からなくて結局身元不明扱いになってたけど…写真だけは残ってたから当時新聞に載ってたんだ。」
「本当か?」
インターネットで調べてみたものの、随分前の事件な上、大々的に話題になっていた訳でもないので写真は見つからなかった。
大学院の図書館なら古い新聞があるかもしれない。
気分転換がてら久々に大学院に顔を出す事にした。
図書館で新聞を閲覧しコピー。
ボウヤの言う通りかなり似ている。
特徴的なホクロも一致している。
これは詳しく調べる価値はありそうだ。
少しの希望にイライラした気持ちは少し収まった。
むしろやるべき事が見つかって口角は上がる。
頭を整理する為にも少しキャンバスから離れて散歩していると、突然怒鳴り声が聞こえた。
ここは日本とはいえ、自分は警察官。
見て見ぬふりをする訳にはいかず近付いた。
どうやら男3人が誰かを恫喝しているらしい。
「何しているんですか?警察呼びますよ。」
「あぁ!?何だテメェ。」
「アンタでいいや、眼鏡のお兄さん。
なーなー、学校通う余裕あるなら俺たちに金くれよ!」
ゲラゲラと品のない笑いを浴びせられ、折角収まっていたイライラがぶり返して頭が痛くなってきた。
思わず目を開き、"失せろ" と低い声で言うと男達は呆気なく散っていった。
「た、助けて頂いてありがとうございました!」
被害者は線の細く頼りなさそうな男かと思ったら、
意外にも派手な格好をしており髪は明るいブラウンだった。
「アニキって呼ばせて下さい!」
「呼んで頂かなくて結構です。
もう二度とお会いすることはありませんから。」
「そんな!お礼させて下さいよ!
俺、良い店知ってるんス!」
面倒だ。黙って足早に撒き車に乗り込んだ。
その後色々調べたが、他にもキャバクラの火災後に身元不明の遺体だったはずの女性が、実は海外で身売りされていたという事件が複数見つかった。
いずれも犯人は捕まっていない。
「この事件の新聞も欲しいな…。」
数日後再度大学院の図書館へ行くと、この間助けた男が近寄ってきた。
「アニキ居たー!俺ずっと探してたんですよ!
連絡先位教えて下さいよー!」
そう言うとテーブルに置いていたスマホを取られ、連絡先を登録された。
見られて困るようなものはデータに入っていないし勝手にさせておいた。
「へぇ、アニキは沖矢昴っていうんすね。
…コナンって人以外連絡先ないじゃないですか!
マジか!ほとんど友達いないんですね。」
必要な連絡先は頭の中にある。
登録は不要だが、一応ボウヤのだけは便宜上登録しているだけだ。
友人が居ないというのは確かだが、少々イラッとした。
この男はハッキリとした物言いをするようだ。
恐らくこの間もそんな喋り方のせいで相手を怒らせ、金を奪われかけたのだろう。
「友人は必要ありませんので。では。」
「待って下さい!今日友達と飲み会するんです!
奢りますから来てくださいよ!」
…これは良い機会かもしれない。
学生らしい事をしている証拠を"安室君"に見せれば、少しは疑いが晴れるかもしれない。
「では、短時間なら。」
車を置いて待ち合わせ場所へ向かうと他にも男が3人居た。彼の同じ学部の友人らしい。
飲み会の場所はチェーン店の大衆居酒屋だった。
適当に返答しながら唐揚げを肴にビールを流し込む。
ビールは好きな方だが、ずっと呑んでいるとバーボンが欲しくなるな。
「昴さん!今度合コンしましょうよ!」
助けた男は目を輝かせながら言ってきた。
「恋人がいるのでやめておきます。」
「えー。やっぱり彼女もちかぁ。残念だなぁ。
昴さんみたいなイケメン連れていけば、絶対盛り上がるのに!」
「バレたら恋人に怒られてしまいます。
…その代わり、といってはなんですが、この後良い所に連れて行ってあげますよ。勿論こちらの奢りで。」
「マジで!?」「やったぁ!」「どこどこ!?」
男達は喜んで着いてきてくれるようだ。
店を出る間際、彼らに頼んで飲み会している姿を写真に撮らせてもらった。
「彼女さん、束縛激しいんですね。」
隣の席の男が哀れんだ顔をした。
男と呑んでいる事を証明するのに写真を撮らせて欲しいと理由をつけた為、随分酷い恋人がいると思われたようだ。
心の中でナマエに謝りながら店を出た。
まさかこんなにも早くこの組織が動くとは。
ナマエが潜入捜査をしているこの一ヶ月以上もの期間、何もしなかった訳ではなかった。
ジェイムズに頼んでアメリカで起こった人身売買や売春に関する事件の資料を送って貰いナマエが潜入捜査しているものと関わりがないか調べた。
しかし、なかなかこれといったものはなかった。
ここは日本。そもそも彼らのテリトリーだし、それに自分はこの世に居ない事になっているので表立って捜査する事も出来ない。
もどかしさで増えるのはストレスとタバコの本数。
日に日にイライラは募り、灰皿の吸殻も山を作る。
正直、ナマエと短期間ですら会えないのが辛かった。
『17年も会っていなかった癖に。』
彼女に呆れたように言われてしまいそうだ。
だがあの時は覚悟を決めて、思い出だけで生きていこうと決めた。
しかしこうして再開してしまったら、彼女を想う気持ちにしていた蓋は見るも無惨に砕け散った。
思い出だけではやっていけない程に彼女に恋焦がれていた。
「俺もまだまだだな。」
苦笑しながら取り出した煙草の箱とマッチをテーブルに放り投げた。
ナマエへの心配は勿論だが、
客が彼女を性的な目で見ているであろう事が許せなかった。
今頃客に触られたり、無理矢理キスを迫られたりしていないだろうか…。
挙句に枕営業……いや、それは有り得ないのは分かっている。
ただ自分が勝手に作り上げ膨らませた妄想に嫉妬しているだけ。
風見君や降谷君も居るだろうし、彼女の実力ならせいぜい1ヶ月で解決するだろうと思った。
しかし1ヶ月を過ぎても何の音沙汰もない。
遂に自分の我慢が限界を超えた。
眼鏡を外し、手で顔を覆って歯を食いしばった。
あぁ、ムシャクシャする。
「昴さん?」
ややトーンの高い声に一瞬彼女かと思ったが違った。
「やぁ、ボウヤ。どうした?」
「昴さんこそ酷い顔してるけど、どうしたの?」
「あー…。なんでもない。」
「恋人と喧嘩でもした?」
「いや。」
「…潜入捜査か何かで会えてないの?」
「…ボウヤにはなんでもお見通しだな。」
ボウヤは俺の横に座った。
「その資料見ても良い?」
「あぁ構わんよ。別に極秘の資料がある訳でもない。」
「ありがとう。」
パラパラと資料を捲り、大まかに彼女が扱っている事件と潜入捜査先を伝えた。
「あれ?この人…!」
「その資料か?日本からアメリカに売られたと思われる日本人女性4名だ。」
「僕、この人の顔見た事ある!特徴的なホクロが顔にあるから多分そう。
数年前にキャバクラで火災があって、亡くなったって新聞で読んだよ。お店では源氏名だったから、本名は分からなくて結局身元不明扱いになってたけど…写真だけは残ってたから当時新聞に載ってたんだ。」
「本当か?」
インターネットで調べてみたものの、随分前の事件な上、大々的に話題になっていた訳でもないので写真は見つからなかった。
大学院の図書館なら古い新聞があるかもしれない。
気分転換がてら久々に大学院に顔を出す事にした。
図書館で新聞を閲覧しコピー。
ボウヤの言う通りかなり似ている。
特徴的なホクロも一致している。
これは詳しく調べる価値はありそうだ。
少しの希望にイライラした気持ちは少し収まった。
むしろやるべき事が見つかって口角は上がる。
頭を整理する為にも少しキャンバスから離れて散歩していると、突然怒鳴り声が聞こえた。
ここは日本とはいえ、自分は警察官。
見て見ぬふりをする訳にはいかず近付いた。
どうやら男3人が誰かを恫喝しているらしい。
「何しているんですか?警察呼びますよ。」
「あぁ!?何だテメェ。」
「アンタでいいや、眼鏡のお兄さん。
なーなー、学校通う余裕あるなら俺たちに金くれよ!」
ゲラゲラと品のない笑いを浴びせられ、折角収まっていたイライラがぶり返して頭が痛くなってきた。
思わず目を開き、"失せろ" と低い声で言うと男達は呆気なく散っていった。
「た、助けて頂いてありがとうございました!」
被害者は線の細く頼りなさそうな男かと思ったら、
意外にも派手な格好をしており髪は明るいブラウンだった。
「アニキって呼ばせて下さい!」
「呼んで頂かなくて結構です。
もう二度とお会いすることはありませんから。」
「そんな!お礼させて下さいよ!
俺、良い店知ってるんス!」
面倒だ。黙って足早に撒き車に乗り込んだ。
その後色々調べたが、他にもキャバクラの火災後に身元不明の遺体だったはずの女性が、実は海外で身売りされていたという事件が複数見つかった。
いずれも犯人は捕まっていない。
「この事件の新聞も欲しいな…。」
数日後再度大学院の図書館へ行くと、この間助けた男が近寄ってきた。
「アニキ居たー!俺ずっと探してたんですよ!
連絡先位教えて下さいよー!」
そう言うとテーブルに置いていたスマホを取られ、連絡先を登録された。
見られて困るようなものはデータに入っていないし勝手にさせておいた。
「へぇ、アニキは沖矢昴っていうんすね。
…コナンって人以外連絡先ないじゃないですか!
マジか!ほとんど友達いないんですね。」
必要な連絡先は頭の中にある。
登録は不要だが、一応ボウヤのだけは便宜上登録しているだけだ。
友人が居ないというのは確かだが、少々イラッとした。
この男はハッキリとした物言いをするようだ。
恐らくこの間もそんな喋り方のせいで相手を怒らせ、金を奪われかけたのだろう。
「友人は必要ありませんので。では。」
「待って下さい!今日友達と飲み会するんです!
奢りますから来てくださいよ!」
…これは良い機会かもしれない。
学生らしい事をしている証拠を"安室君"に見せれば、少しは疑いが晴れるかもしれない。
「では、短時間なら。」
車を置いて待ち合わせ場所へ向かうと他にも男が3人居た。彼の同じ学部の友人らしい。
飲み会の場所はチェーン店の大衆居酒屋だった。
適当に返答しながら唐揚げを肴にビールを流し込む。
ビールは好きな方だが、ずっと呑んでいるとバーボンが欲しくなるな。
「昴さん!今度合コンしましょうよ!」
助けた男は目を輝かせながら言ってきた。
「恋人がいるのでやめておきます。」
「えー。やっぱり彼女もちかぁ。残念だなぁ。
昴さんみたいなイケメン連れていけば、絶対盛り上がるのに!」
「バレたら恋人に怒られてしまいます。
…その代わり、といってはなんですが、この後良い所に連れて行ってあげますよ。勿論こちらの奢りで。」
「マジで!?」「やったぁ!」「どこどこ!?」
男達は喜んで着いてきてくれるようだ。
店を出る間際、彼らに頼んで飲み会している姿を写真に撮らせてもらった。
「彼女さん、束縛激しいんですね。」
隣の席の男が哀れんだ顔をした。
男と呑んでいる事を証明するのに写真を撮らせて欲しいと理由をつけた為、随分酷い恋人がいると思われたようだ。
心の中でナマエに謝りながら店を出た。