Put on a happy face
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父が危険な事件に巻き込まれた為に、危険が及ばないよう弟と母親と共に去年の冬この日本に逃げてきた。
イギリス出身だということを隠して過ごさなければならない。
弟は友達とお別れもしてないのにとショックを受けていた。
弟が余計にごねると思い言わなかったが、俺だってこうして突然日本に来るのは気が進まなかった。
生まれ育った国を離れるというのは結構なストレスと不安がかかるものだ。
日本語に関しては問題ないものの、文化やコミュニケーション方法は全く違うだろう。
俺が馴染める可能性は低いかもしれない。
4月、高校1年生として入学した。
クラスの人達は見た目で拒否反応を示したり嫌がらせをしてくるような事は特になかった。
ただ俺は空気を読むだとか愛想笑いといったものは極端に下手だったし、しようとも思わないタイプだ。
当然友人は出来なかった。
日本の空気に馴染めず、別にこのままでもいいかとは思っていた。
しかし教室にいるのがどうにも苦痛で気付けば屋上のドア前で座り込んでいた。
「はー…。」イギリスに帰りたい。
ふとポケットにヘアピンが入っていることに気付いた。
そういえばピッキングの練習がしたくて母親からくすねたんだ。
試しに屋上の鍵穴にヘアピンを差し込んで解錠を試みた。
「開いた…。」
思いの外簡単に開いた。
「風が心地良い。」
それからはそこが自分にとっての安寧の地になった。
ただすぐに見つからないように高い所に登っておかないと。
幸い壁に出っ張りや老朽化で崩れた壁の凹みがあったので利用して簡単に登れた。
「ここならバレないだろうな。」
ここの屋上は外から簡単に鍵の開け閉めが出来るので締め出されることもない。
カバンを枕にして横になった。
入学から2週間程経ったある日、ガチャと勢いよくドアが開く音がした。
カバンを掴んで警戒する。
…なんだ、生徒か。
「あ…いい気持ち。」
女子生徒はボソッと呟いて両手を広げた。
それが以前と自分と重なって下におりると思わず声をかけた。
「ここはくつろぐには最高だ。」
彼女が驚いてヒッと声をあげたので慌てて謝罪した。
「すまない、驚かせてしまったかな?
俺も一瞬先生が来たかと思って驚いたぜ。
もしかして君もサボりに来たのか?」
黒髪でロングヘア、眼の色はグレーで切れ長。日本人離れした目鼻立ちなのでハーフだろうか。
綺麗な顔立ちをしている。
それにどこか纏う雰囲気が自分に近いものを感じた。
驚いて俺をじっと見たが、さほど興味無さそうに立ち去ろうとしていた。
いつもなら放っておくのだろうが、彼女が随分と顔色が悪いのでつい気になって腕を掴んだ。
白色を通り越してなんだか青い。
「顔色が悪いな。大丈夫か?ちゃんと飯食っているのか?痩せすぎだろ。そうだ、これ食っていいぞ。」
カバンから取り出したパンを渡す。
今朝コンビニでいくつか適当に掴んで買ったのだが、よく見もせず買ったせいで随分甘そうなパンを買ってしまった。
「今朝間違えて買ってしまった。俺は甘いものは苦手なんだ。」
不機嫌そうに俺の渡したパンを見つめたので受け取って貰えないだろうな、と諦め半分に様子を伺った。
「あははは!甘そう!でも私、甘い物好き。
ありがとう…今食べていい?」
予想外の反応だった。
大口を開けて笑う彼女が今まで見た誰よりも綺麗で、正直言って一目惚れだった。
心臓がキュッと締め付けられるような感覚と彼女に触れてみたいという妙な感覚に襲われた。
誰かを好きになった事はあったが、一目惚れというのは初めてで酷く動揺したままパンを手渡した。
そのまま固い地面に座ろうとしたので慌ててジャケットを脱いで座るよう促した。
「え、いいよ。ジャケット汚れるよ?」
「構わんよ。君のスカートが汚れるよりは良いさ。」
「ありがとう。」
困ったような作り笑顔を浮かべるとジャケットに座ってパンを食べ始めた。
「見た目よりは甘くないよ。美味しい。」
彼女は美味しそうにはみ出たパンのクリームを舐めとった。
思わず喉が鳴る。
「…そうか。1口貰っていいか?」
「うん。そもそも貴方のだけど。はい。」
「Uh… Sickly-sweet.」想像以上に甘くて思わず盛大に咳き込んだ。
喉が焼けるようだ。
「えっ、そうだった?…あ、じゃあお礼にこれあげる。お茶。」
「いいのか?」
「私、水筒持ってるの。このお茶は貰っただけ。」
貰った?…彼氏にでも買ってもらったのだろうか。
頭のてっぺんから冷水を被ったように急激に冷静になった。
それはそうだ。これだけの美人なら恋人もいるだろう。冷めた声でお茶を返した。
「…誰かに貰ったものなら、いらない。」
そう言うと若干イラッとした顔をされたが次の瞬間には貼り付けたような笑顔を向けられた。
「それじゃあ、後日私にお礼させて。」
「別に礼は不要だが、そう言うなら。」
「ねぇ、何年何組?」
「1年4組。君は?」
「私3組。隣ね。パン、本当にありがとう。そろそろ戻るわ。またね。ジャケットもありがとう。」
そう言ってジャケットを手渡すとより一層嘘臭い笑顔を顔に貼り付けて行ってしまった。
最初に見た笑顔とは大違いだ。
何故あんなにもどこか悲しそうに笑うんだろう。
普通の人は何の問題もない笑顔だと認識するだろうが俺の目は誤魔化せないぞ。
もう一度、最初の笑顔が見てみたい。
少し彼女の事を調べてみるか…。
イギリス出身だということを隠して過ごさなければならない。
弟は友達とお別れもしてないのにとショックを受けていた。
弟が余計にごねると思い言わなかったが、俺だってこうして突然日本に来るのは気が進まなかった。
生まれ育った国を離れるというのは結構なストレスと不安がかかるものだ。
日本語に関しては問題ないものの、文化やコミュニケーション方法は全く違うだろう。
俺が馴染める可能性は低いかもしれない。
4月、高校1年生として入学した。
クラスの人達は見た目で拒否反応を示したり嫌がらせをしてくるような事は特になかった。
ただ俺は空気を読むだとか愛想笑いといったものは極端に下手だったし、しようとも思わないタイプだ。
当然友人は出来なかった。
日本の空気に馴染めず、別にこのままでもいいかとは思っていた。
しかし教室にいるのがどうにも苦痛で気付けば屋上のドア前で座り込んでいた。
「はー…。」イギリスに帰りたい。
ふとポケットにヘアピンが入っていることに気付いた。
そういえばピッキングの練習がしたくて母親からくすねたんだ。
試しに屋上の鍵穴にヘアピンを差し込んで解錠を試みた。
「開いた…。」
思いの外簡単に開いた。
「風が心地良い。」
それからはそこが自分にとっての安寧の地になった。
ただすぐに見つからないように高い所に登っておかないと。
幸い壁に出っ張りや老朽化で崩れた壁の凹みがあったので利用して簡単に登れた。
「ここならバレないだろうな。」
ここの屋上は外から簡単に鍵の開け閉めが出来るので締め出されることもない。
カバンを枕にして横になった。
入学から2週間程経ったある日、ガチャと勢いよくドアが開く音がした。
カバンを掴んで警戒する。
…なんだ、生徒か。
「あ…いい気持ち。」
女子生徒はボソッと呟いて両手を広げた。
それが以前と自分と重なって下におりると思わず声をかけた。
「ここはくつろぐには最高だ。」
彼女が驚いてヒッと声をあげたので慌てて謝罪した。
「すまない、驚かせてしまったかな?
俺も一瞬先生が来たかと思って驚いたぜ。
もしかして君もサボりに来たのか?」
黒髪でロングヘア、眼の色はグレーで切れ長。日本人離れした目鼻立ちなのでハーフだろうか。
綺麗な顔立ちをしている。
それにどこか纏う雰囲気が自分に近いものを感じた。
驚いて俺をじっと見たが、さほど興味無さそうに立ち去ろうとしていた。
いつもなら放っておくのだろうが、彼女が随分と顔色が悪いのでつい気になって腕を掴んだ。
白色を通り越してなんだか青い。
「顔色が悪いな。大丈夫か?ちゃんと飯食っているのか?痩せすぎだろ。そうだ、これ食っていいぞ。」
カバンから取り出したパンを渡す。
今朝コンビニでいくつか適当に掴んで買ったのだが、よく見もせず買ったせいで随分甘そうなパンを買ってしまった。
「今朝間違えて買ってしまった。俺は甘いものは苦手なんだ。」
不機嫌そうに俺の渡したパンを見つめたので受け取って貰えないだろうな、と諦め半分に様子を伺った。
「あははは!甘そう!でも私、甘い物好き。
ありがとう…今食べていい?」
予想外の反応だった。
大口を開けて笑う彼女が今まで見た誰よりも綺麗で、正直言って一目惚れだった。
心臓がキュッと締め付けられるような感覚と彼女に触れてみたいという妙な感覚に襲われた。
誰かを好きになった事はあったが、一目惚れというのは初めてで酷く動揺したままパンを手渡した。
そのまま固い地面に座ろうとしたので慌ててジャケットを脱いで座るよう促した。
「え、いいよ。ジャケット汚れるよ?」
「構わんよ。君のスカートが汚れるよりは良いさ。」
「ありがとう。」
困ったような作り笑顔を浮かべるとジャケットに座ってパンを食べ始めた。
「見た目よりは甘くないよ。美味しい。」
彼女は美味しそうにはみ出たパンのクリームを舐めとった。
思わず喉が鳴る。
「…そうか。1口貰っていいか?」
「うん。そもそも貴方のだけど。はい。」
「Uh… Sickly-sweet.」想像以上に甘くて思わず盛大に咳き込んだ。
喉が焼けるようだ。
「えっ、そうだった?…あ、じゃあお礼にこれあげる。お茶。」
「いいのか?」
「私、水筒持ってるの。このお茶は貰っただけ。」
貰った?…彼氏にでも買ってもらったのだろうか。
頭のてっぺんから冷水を被ったように急激に冷静になった。
それはそうだ。これだけの美人なら恋人もいるだろう。冷めた声でお茶を返した。
「…誰かに貰ったものなら、いらない。」
そう言うと若干イラッとした顔をされたが次の瞬間には貼り付けたような笑顔を向けられた。
「それじゃあ、後日私にお礼させて。」
「別に礼は不要だが、そう言うなら。」
「ねぇ、何年何組?」
「1年4組。君は?」
「私3組。隣ね。パン、本当にありがとう。そろそろ戻るわ。またね。ジャケットもありがとう。」
そう言ってジャケットを手渡すとより一層嘘臭い笑顔を顔に貼り付けて行ってしまった。
最初に見た笑顔とは大違いだ。
何故あんなにもどこか悲しそうに笑うんだろう。
普通の人は何の問題もない笑顔だと認識するだろうが俺の目は誤魔化せないぞ。
もう一度、最初の笑顔が見てみたい。
少し彼女の事を調べてみるか…。