Put on a happy face
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"もうすぐ着く"
LINEの通知に現れた一文。
絵文字も何も無く、その一言だけというのが彼らしい。それから1分も経たずに玄関のドアが開いた。
「おかえり。」
ふざけてそう言うと、彼は少し笑い"ただいま"と返事をした。
「LINEきてから1分も経ってないよ。早くてびっくりした。」
「下の駐車場で送ったからな。」
「そういえば今日はシュウなんだね。」
「家で寛ぐだけだと言っていたからな。
下の駐車場で変装を解いてきた。
たまには昴ではなく、俺と接して欲しいからな。」
私を見つめる彼の瞳がキラキラと輝いていて、なんだか照れくさくなった。
なんでそんな綺麗な目をしているのか。
あらゆる死線を越えて嫌な場面を随分沢山見てきただろうに、それを微塵も感じさせず、力強ささえ感じる。
「…ん?ボーッとして…大丈夫か?」
更に近付いてきて目を覗き込まれた。
「ッ!ご、…ごめん!なんでもない!」
「もしかして、沖矢昴がよかったと思っているのか?」
「そんな訳ないでしょう。
…改めて…目、綺麗だなって…見惚れてたの。」
そう言うと彼は少し動揺した。
「何度か言われた事はあるが…恋人に言われると少々恥ずかしいな。
あまり自分の目の色を意識した事はないが…。
母親に感謝だな。」
「シュウはお母さん似…だよね?顔、かなり似てるし。」
「そうだな。顔は母親、雰囲気は父に似ていると思う。まぁ弟の方が顔は父に似ている気がするが。」
「あ、昔メアリーさんが小学生位の男の子連れてるのを見た事ある!」
「羽田秀吉を知っているか?あれが弟だ。」
「嘘!?太閤名人??」
驚きすぎて思わずたじろいだ。
「私実は太閤名人の大ファンで!テレビ出演してるものはほとんど全部録画して見てるよ〜!
あんまりシュウとは似てないね。
あ、でも真純ちゃんとは確かに雰囲気近いかも…。」
「そうか。いつか会わせてやる。」
「嬉しい!そういえば、メアリーさんは元気?」
「さぁ…しばらく会ってないから分からない。」
「…そっか。
潜入捜査してたり亡くなったことにしてるからしばらく連絡取れてないよね。
メアリーさんならきっと大丈夫だよね。
真純ちゃん、ホテル暮らしって言ってたけど…1人暮らしなのかな?」
「機会があったら真純に母の事を聞いてみて欲しい。俺も無事かどうか気になるからな。」
「分かった。今度この間一緒に行ったカフェに皆で行くつもりだから、それとなく聞いてみるね。」
「頼む。」
「うん。
そうそう、前に言ったけど甘さ控えめなデザート作ったんだけど…食べてみる?」
「あぁ。貰うよ。この間からずっと楽しみにしていたんだ。」
「そこ座ってて待ってて!」
冷蔵庫からものを取り出してテーブルに置いた。
「じゃーん!コーヒーゼリーです!」
「ホォー。」
「かなり甘さをおさえて、上にかけるミルクだけ甘くしたんだけど。
だからほぼブラックコーヒーをゼリーで固めたような感じだけどね。」
彼は皿の上のゼリーをしばらく眺めた後、少しスプーンで掬い口に運んだ。
1口食べた後は気に入ったのか随分な勢いで完食した。
「美味かった。ご馳走様。ほとんど甘くなくて俺好みだ。よかったらまた作って欲しい。」
思わず腕を掴んで彼の目を覗き込む。
「こら、脈を確認するな。俺は嘘はついていないし、前回のブレスレットもつけていないぞ。」
「ほんとに?無理してない?
…まぁどうせシュウの脈をこうして確認した所で、脈拍コントロールされて本心は分からないかもしれないけどね…。」
「ナマエと会っている時はわざわざそんな事はしない。不味かったらはっきり言うし、脈拍コントロールなんて面倒臭い事はしないぞ。
証拠を見せてやる。」
そう言うと勢いよくソファーに押し倒されて口を塞がれた。舌を絡ませると、ほんのり甘くて苦いコーヒーゼリーの味がする。
「これが証拠だ。」
覆い被さるように抱きしめられ、彼の胸板が視界を塞いだ。暗闇の中分かるのは、ただ1つ。
彼の分厚い胸板の上でも分かるくらい、心臓の鼓動は早くドクドクと脈打っていた。
「しようと思えば脈のペースは落とせる。
だが、俺は、いつだって君の前ではこうして素直に反応している。
今だってキスひとつで俺は全く余裕がない。
身体も素直に反応しているしな。」
そう言うと下半身に熱を帯びたモノを押し当てられた。
「嘘はついていないと、分かってくれたか?」
彼を押しのけつつ、顔を赤らめかなりの勢いで頷いた。この状態はかなり恥ずかしい。
思ったよりもすんなりと私の上から降りると、何度か深呼吸をした。
"少し時間が欲しい"と言って窓を開けてると外を眺め始めた。
「そういえば、夏休み勉強していた時も時々そうやって窓の外を眺めてたよね。
外見るの、好きなの?」
「…それは、本気で言っているのか?この状況の後で?」
「え?」
「俺が下半身に押し付けたものをなんだと思ってるんだ?気持ちを落ち着かせる為に風に当たってるんだが?それとも襲って欲しいのか。」
「あの時もそうだったの?
ごめん、そういうのあんまりよく分かってなくて。」
「俺はゆっくり関係を進めたいんだ。
昔は切羽詰まって別れ際襲ってしまったからな。
今度はゆっくり時間をかけてから身体の関係を持ちたい。
…1番の理由は、1度襲ってしまったら、俺は会う度にしたくなってしまいそうだというのもあるが…。
勿論今すぐ襲って欲しいならそうする。」
「そんなふうに思ってくれてたんだ…。
確かに私も、1度シたとはいえあれから時間が経ってるし…今すぐはちょっと怖いかも…。」
「そうだろうと思って我慢してるんだ。
今度から俺が外を見出したら少し放っておいてくれ。」
「り、了解しました…。」
今はあのコーヒーゼリーみたいな、少し甘いだけの関係で満足している。
彼ともっと甘い関係になってしまったら、私は公安という立場を忘れてFBI贔屓になってしまいそうだ。
自分と彼を落ち着かせる為にも紅茶の用意をした。