Put on a happy face
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「風見さぁん!ずるいです!
なんで昨日早々帰っちゃったんですか!
私なんて昨日も終電で帰って今日も始発で来たんですよ!?何日こんな生活をしている事か!いい加減病みますよ!」
「悪いな、昨日はどうしても外せない用があったんだ。」
爽やかに微笑む風見さんについ悪態をついてしまう。
私なんてしばらく定時で帰ってないぞ。
「少し私の仕事引き受けて下さいよー。
いい加減もう彼氏不足で死にそうですよ…。」
50cmくらいある大きめのぬいぐるみをギュッと抱きしめ、顔を埋めた。
このぬいぐるみは工藤優作氏脚本の映画、
"緋色の捜査官"の主人公をデフォルメしたものだ。
目の色などは違うものの、纏う雰囲気や服装などはどことなく赤井秀一に似ている。
最近ではこれを彼の代わりにして仕事の活力にしていた。
…まぁ、周囲の人達は哀れんだ目で見ているけど。
「ぜっったいに今日で全て終わらせる!!
残ったら風見さんに仕事分けても良いですか!?」
「…なるべく最低限にして欲しい。」
「はーい。」
でも今日でなんとか終わらせる事が出来る目処はついている。頑張るぞ!
…結局終電近い時間になってようやく9.5割終わった。
「うおぉ…。終わらなかった……。」
こんな時間に工藤邸に行く訳にはいかない。
今日こそは、と思ったのに。
絶望的な顔をしながら帰る支度をした。
「すまなかった。降谷さんなら定時で帰らせるほどの技量があっただろうが、オレにはなかなか…。」
「大丈夫ですよ。自分の仕事ですから。
風見さんに残った仕事を押し付ける、なんて冗談ですよ。」
笑いながら風見さんの背中を小突いた。
「明日は休みだろ。…きちんと話し合って来い。」
「風見さん…ありがとうございます。
それじゃあお疲れ様でしたー。」
警視庁を出ると部屋との温度差で思いっきりくしゃみが出た。
「えっくしょい!…さっむ……。」
鼻をすすりながら顔を上げた瞬間、視界に入ってきた人物に酷く動揺した。
「……すばる……。」
こちらを見ると手のひらを上に向けて手招きされた。
彼の元にゆっくり近づくと、無言でドアを開け助手席に座らされた。
何か言ってくるのかとじっと見つめていたが、お互い無言のまま車は発進した。
完全に脳内はパニックだ。なんて言えば良い?
"勘違いだ!仕事で!"
改めてそんな事を言った所で信じて貰えるんだろうか?前にそう言ったが取り合って貰えなかったじゃないか。
風見さんに服を選んだ事は別に後悔していないが、
まさか見られるとは思っていなかった。
あの場面だけならいかにもデート、つまりは浮気しているようにも見えるし勘違いするのは当然。
悪いのは私だ。
事前に仕事内容伝えておくべきだった。
何を言うか頭をフル回転させていたが、最初に口を開いたのは昴だった。
「少し、ドライブをしても良いか?」
「うん……。」
それを言うと彼はまた黙ってしまった。
静まり返った車内がとても怖い。
けど口を開こうとすると言葉が出てこない。
しばらく乗っていると、緊迫感があるはずなのに
車の心地よい揺れと彼の煙草の残り香に包まれて眠気が襲ってきた。
「眠いなら寝てろ。」
そう言った彼の横顔がどことなく優しく感じて少しほっとした。
連日の疲れが出ているのだろう。結局目を閉じた。
どれくらい寝てただろうか。
起きたら来葉峠の頂上にいた。
車内からでも眼下に広がる街の明かりがキラキラと輝いているのは分かった。
「わ…綺麗…。」
「起きたか。」
「ごめんなさい。つい寝ちゃった。」
「いや、疲れているのに連れ回して悪かったな。
きちんと話をしようと思ったんだ。」
何を言われるのかと思わず身構えた。
「昨日、風見という君の職場の男が家に来た。」
「えっ!?風見さんが?」
「勘違いしていると言ってあの日の事を話してくれたよ。きちんとした、真面目な男だな。」
「うん…。良い人だよ、風見さんは。」
「…一つ聞きたい。
15の時の俺に、縛られてはいないか?」
「…どういう意味?」
「あの頃付き合っていたから、今も付き合ってくれているのではないかと思っている。
本命がいるなら、そっちに行ってくれても構わない。
あぁ、そうだ。…公安の方にも俺の正体を言ってくれても問題はない。また姿をくらますだけだからな。
ナマエにとって不利にならないように動いてくれ。こちらの事は気にしなくて良い。
俺の事を監視する必要はもうないぞ。」
「は?」
思わず昴の胸ぐらを強く掴んだ。
「私が!どんな想いで!貴方を好きなのか!
分かってないでしょう!?」
ここが来葉峠で周囲に誰もいない事が幸いだ。
車外に響くほどの大声で怒鳴ってしまった。
しかし1度出た言葉は堰を切ったように止まらない。
「私が15の時の思い出に引っ張られて今でも付き合ってると本気で思ってるの?
バカにしないでくれる?
勿論15の時から好きで、ずっと長い事秀一君を気にかけてたよ!
けどね、ハッキリ言える。
あの時も好きだったけど、今の方がずっと好き!」
その言葉に面食らったように昴は目を見開いて固まった。
「この際だから、思ってる事全部言う。
正直私は15の時の時点で9割方、秀一君の事は諦めてたよ!
もう二度と会えなくても仕方ないって思ってた。
だからなんとか自分なりに、自分の道を進もうって思ったの。
学校で犯沢先生に襲われかけて秀一君のお母さんに助けられた時、"貴女は自分の人生を大切に、楽しんで歩みなさい"って言われたの。」
「襲われたってどういう」
「いいから聞いてて!
メアリーさんに助けられた時、私もこうなりたいって強く思った。もっと強くなって、こうして人を助けたいって。
それで公安に入る気持ちが高まった。
だからずっと感謝してた。
秀一君のおかげで公安を目指せたし、メアリーさんのおかげでその気持ちが強まった。
もし二度と会えなくても…何処かで生きていてくれればいいって思ってた。
指輪を持ってたのは、秀一君やメアリーお母さんのように強くなれるように・赤井家の人達が何処かで無事に、安全に生きていますようにってお守りの気持ちで持っていただけ!
だからただ単に15の時の気持ちを引きずっていたから指輪を持っていたんじゃないの!」
「そんな風に…思ってくれていたとは…。」
「私本当はもう二度と恋愛する気はなかった。
けど再会して秀一君を見た時、やっぱり好きだって思った。昔の思いを引きずっているのもあるとは思う。
けど、それだけじゃないよ。
私に最後、手紙をくれたでしょう?
メアリーさんから受け取ったの。
"他の人達が知らないことを知るのが僕の仕事だ"って、ホームズの名言の中の一文。
あの時は意味分からなかったけど、
シュウがFBIだと知った時にこの事だったのかってやっと分かった。
だから…ちゃんと夢を叶えたシュウの事が誇らしくて、凄いカッコイイって惚れ直しちゃった。
…あの頃、私に待っててって言えなかったんでしょう?危険な仕事だから。
それでも少しでも何かしておきたくて、手紙と指輪を渡したんでしょう?
不器用過ぎるでしょ!他にやり方あったんじゃない?
なーんて、そう思ったら可笑しくて……。
私、そんな言葉足らずで不器用な人を少しでも近くで支えたいって思ったんだよね。
あの時助けてもらったから、今度は私が助けたい。
今は本当に大変な時だけど、一緒にいる時だけは少しでもお互い笑いあえたら良いなって。
お互いまだまだ再会して日は浅いし、知らない事も多いと思うけど…今の貴方の事、もっともっと知りたい。
本命は、貴方以外ありえないんだからね!」
「ナマエには敵わないな。
悪かった。自分でGPSを付けさせておきながら、それを利用して勘違いして指輪を駄目にしてしまった。」
「指輪は一応修理に出してるけど…もういいから。
今度からもっと思ったことを言葉にしてよね。
一方的すぎ。あの時と変わらないじゃない。」
「俺は本当によく言葉が足りなくて勘違いされたり、
思わぬ恨みを買いやすい。
…15の時からそこは変わってないな。すまない。」
「そういう所も含めて私がフォローしていきたい。
ねぇ、私も近くで組織を潰す協力をさせて。
今はあの頃の私と違う。
公安のゼロとして…そしてシュウの右腕として手助けがしたい。
…私を公私共にワトソンにしてくれる?」
「あぁ、よろしく頼むよ。ワトソン君。」
ニヤリと笑う彼に勢いよく抱きついた。
「よ、よかった…!
やっぱり別れたいとか言われるかと。」
「悪いが俺は別れたくない。風見という男とお似合いだと思ったし、俺といると窮屈な思いをさせてしまうとは思って葛藤したんだが…。
やはりもう二度と手放したくないみたいだ。
俺は不器用な上に往生際も悪い。すまんな。」
そう言って強く抱き締め返してくれた。
「風見さんとは、本当に何もないから。」
「もう分かった。…指輪、本当に悪かった。
今度代わりの物をプレゼントさせてくれ。」
「ううん、何もいらない。…秀一君が生きてさえいてくれれば、それ以上は何も望まない。」
私の中で自然に笑顔が溢れた。
いつもの作ったような笑みは彼といる時は影を潜めてくれる。
彼は再出発の意味を込めて来葉峠を選んだのだろう。
赤井秀一が沖矢昴になったように、私達の関係も15の時とは見かけ上は大きく違って見えるかもしれない。
けれど私達の根底にあるお互いを思う気持ちは変わらない。
やっぱり私にはこの人しかいない。
なんで昨日早々帰っちゃったんですか!
私なんて昨日も終電で帰って今日も始発で来たんですよ!?何日こんな生活をしている事か!いい加減病みますよ!」
「悪いな、昨日はどうしても外せない用があったんだ。」
爽やかに微笑む風見さんについ悪態をついてしまう。
私なんてしばらく定時で帰ってないぞ。
「少し私の仕事引き受けて下さいよー。
いい加減もう彼氏不足で死にそうですよ…。」
50cmくらいある大きめのぬいぐるみをギュッと抱きしめ、顔を埋めた。
このぬいぐるみは工藤優作氏脚本の映画、
"緋色の捜査官"の主人公をデフォルメしたものだ。
目の色などは違うものの、纏う雰囲気や服装などはどことなく赤井秀一に似ている。
最近ではこれを彼の代わりにして仕事の活力にしていた。
…まぁ、周囲の人達は哀れんだ目で見ているけど。
「ぜっったいに今日で全て終わらせる!!
残ったら風見さんに仕事分けても良いですか!?」
「…なるべく最低限にして欲しい。」
「はーい。」
でも今日でなんとか終わらせる事が出来る目処はついている。頑張るぞ!
…結局終電近い時間になってようやく9.5割終わった。
「うおぉ…。終わらなかった……。」
こんな時間に工藤邸に行く訳にはいかない。
今日こそは、と思ったのに。
絶望的な顔をしながら帰る支度をした。
「すまなかった。降谷さんなら定時で帰らせるほどの技量があっただろうが、オレにはなかなか…。」
「大丈夫ですよ。自分の仕事ですから。
風見さんに残った仕事を押し付ける、なんて冗談ですよ。」
笑いながら風見さんの背中を小突いた。
「明日は休みだろ。…きちんと話し合って来い。」
「風見さん…ありがとうございます。
それじゃあお疲れ様でしたー。」
警視庁を出ると部屋との温度差で思いっきりくしゃみが出た。
「えっくしょい!…さっむ……。」
鼻をすすりながら顔を上げた瞬間、視界に入ってきた人物に酷く動揺した。
「……すばる……。」
こちらを見ると手のひらを上に向けて手招きされた。
彼の元にゆっくり近づくと、無言でドアを開け助手席に座らされた。
何か言ってくるのかとじっと見つめていたが、お互い無言のまま車は発進した。
完全に脳内はパニックだ。なんて言えば良い?
"勘違いだ!仕事で!"
改めてそんな事を言った所で信じて貰えるんだろうか?前にそう言ったが取り合って貰えなかったじゃないか。
風見さんに服を選んだ事は別に後悔していないが、
まさか見られるとは思っていなかった。
あの場面だけならいかにもデート、つまりは浮気しているようにも見えるし勘違いするのは当然。
悪いのは私だ。
事前に仕事内容伝えておくべきだった。
何を言うか頭をフル回転させていたが、最初に口を開いたのは昴だった。
「少し、ドライブをしても良いか?」
「うん……。」
それを言うと彼はまた黙ってしまった。
静まり返った車内がとても怖い。
けど口を開こうとすると言葉が出てこない。
しばらく乗っていると、緊迫感があるはずなのに
車の心地よい揺れと彼の煙草の残り香に包まれて眠気が襲ってきた。
「眠いなら寝てろ。」
そう言った彼の横顔がどことなく優しく感じて少しほっとした。
連日の疲れが出ているのだろう。結局目を閉じた。
どれくらい寝てただろうか。
起きたら来葉峠の頂上にいた。
車内からでも眼下に広がる街の明かりがキラキラと輝いているのは分かった。
「わ…綺麗…。」
「起きたか。」
「ごめんなさい。つい寝ちゃった。」
「いや、疲れているのに連れ回して悪かったな。
きちんと話をしようと思ったんだ。」
何を言われるのかと思わず身構えた。
「昨日、風見という君の職場の男が家に来た。」
「えっ!?風見さんが?」
「勘違いしていると言ってあの日の事を話してくれたよ。きちんとした、真面目な男だな。」
「うん…。良い人だよ、風見さんは。」
「…一つ聞きたい。
15の時の俺に、縛られてはいないか?」
「…どういう意味?」
「あの頃付き合っていたから、今も付き合ってくれているのではないかと思っている。
本命がいるなら、そっちに行ってくれても構わない。
あぁ、そうだ。…公安の方にも俺の正体を言ってくれても問題はない。また姿をくらますだけだからな。
ナマエにとって不利にならないように動いてくれ。こちらの事は気にしなくて良い。
俺の事を監視する必要はもうないぞ。」
「は?」
思わず昴の胸ぐらを強く掴んだ。
「私が!どんな想いで!貴方を好きなのか!
分かってないでしょう!?」
ここが来葉峠で周囲に誰もいない事が幸いだ。
車外に響くほどの大声で怒鳴ってしまった。
しかし1度出た言葉は堰を切ったように止まらない。
「私が15の時の思い出に引っ張られて今でも付き合ってると本気で思ってるの?
バカにしないでくれる?
勿論15の時から好きで、ずっと長い事秀一君を気にかけてたよ!
けどね、ハッキリ言える。
あの時も好きだったけど、今の方がずっと好き!」
その言葉に面食らったように昴は目を見開いて固まった。
「この際だから、思ってる事全部言う。
正直私は15の時の時点で9割方、秀一君の事は諦めてたよ!
もう二度と会えなくても仕方ないって思ってた。
だからなんとか自分なりに、自分の道を進もうって思ったの。
学校で犯沢先生に襲われかけて秀一君のお母さんに助けられた時、"貴女は自分の人生を大切に、楽しんで歩みなさい"って言われたの。」
「襲われたってどういう」
「いいから聞いてて!
メアリーさんに助けられた時、私もこうなりたいって強く思った。もっと強くなって、こうして人を助けたいって。
それで公安に入る気持ちが高まった。
だからずっと感謝してた。
秀一君のおかげで公安を目指せたし、メアリーさんのおかげでその気持ちが強まった。
もし二度と会えなくても…何処かで生きていてくれればいいって思ってた。
指輪を持ってたのは、秀一君やメアリーお母さんのように強くなれるように・赤井家の人達が何処かで無事に、安全に生きていますようにってお守りの気持ちで持っていただけ!
だからただ単に15の時の気持ちを引きずっていたから指輪を持っていたんじゃないの!」
「そんな風に…思ってくれていたとは…。」
「私本当はもう二度と恋愛する気はなかった。
けど再会して秀一君を見た時、やっぱり好きだって思った。昔の思いを引きずっているのもあるとは思う。
けど、それだけじゃないよ。
私に最後、手紙をくれたでしょう?
メアリーさんから受け取ったの。
"他の人達が知らないことを知るのが僕の仕事だ"って、ホームズの名言の中の一文。
あの時は意味分からなかったけど、
シュウがFBIだと知った時にこの事だったのかってやっと分かった。
だから…ちゃんと夢を叶えたシュウの事が誇らしくて、凄いカッコイイって惚れ直しちゃった。
…あの頃、私に待っててって言えなかったんでしょう?危険な仕事だから。
それでも少しでも何かしておきたくて、手紙と指輪を渡したんでしょう?
不器用過ぎるでしょ!他にやり方あったんじゃない?
なーんて、そう思ったら可笑しくて……。
私、そんな言葉足らずで不器用な人を少しでも近くで支えたいって思ったんだよね。
あの時助けてもらったから、今度は私が助けたい。
今は本当に大変な時だけど、一緒にいる時だけは少しでもお互い笑いあえたら良いなって。
お互いまだまだ再会して日は浅いし、知らない事も多いと思うけど…今の貴方の事、もっともっと知りたい。
本命は、貴方以外ありえないんだからね!」
「ナマエには敵わないな。
悪かった。自分でGPSを付けさせておきながら、それを利用して勘違いして指輪を駄目にしてしまった。」
「指輪は一応修理に出してるけど…もういいから。
今度からもっと思ったことを言葉にしてよね。
一方的すぎ。あの時と変わらないじゃない。」
「俺は本当によく言葉が足りなくて勘違いされたり、
思わぬ恨みを買いやすい。
…15の時からそこは変わってないな。すまない。」
「そういう所も含めて私がフォローしていきたい。
ねぇ、私も近くで組織を潰す協力をさせて。
今はあの頃の私と違う。
公安のゼロとして…そしてシュウの右腕として手助けがしたい。
…私を公私共にワトソンにしてくれる?」
「あぁ、よろしく頼むよ。ワトソン君。」
ニヤリと笑う彼に勢いよく抱きついた。
「よ、よかった…!
やっぱり別れたいとか言われるかと。」
「悪いが俺は別れたくない。風見という男とお似合いだと思ったし、俺といると窮屈な思いをさせてしまうとは思って葛藤したんだが…。
やはりもう二度と手放したくないみたいだ。
俺は不器用な上に往生際も悪い。すまんな。」
そう言って強く抱き締め返してくれた。
「風見さんとは、本当に何もないから。」
「もう分かった。…指輪、本当に悪かった。
今度代わりの物をプレゼントさせてくれ。」
「ううん、何もいらない。…秀一君が生きてさえいてくれれば、それ以上は何も望まない。」
私の中で自然に笑顔が溢れた。
いつもの作ったような笑みは彼といる時は影を潜めてくれる。
彼は再出発の意味を込めて来葉峠を選んだのだろう。
赤井秀一が沖矢昴になったように、私達の関係も15の時とは見かけ上は大きく違って見えるかもしれない。
けれど私達の根底にあるお互いを思う気持ちは変わらない。
やっぱり私にはこの人しかいない。