寝ている間、うっすら運ばれている感覚があった。
起きたらやはり自分のベッドで寝ていて、降谷さんはソファーで横になっていた。

「もう5時か…。」
目覚ましがなる前に止め、起き上がろうとすると降谷さんも起きた。
「おはようございます。すみません…結局私がベッドを占拠してますね。運んで下さったんですか？」
「寝相が悪くて落ちそうだったから運んだだけだ。」
口ではそう言うが気を使ってくれたんだろう。
「降谷さん、今日はポアロでしたっけ？」
「あぁ。今日は登庁するんだろ？送っていこうか？」
「じゃあお願いします。朝ごはん何か作りますね。」
「やるからいい。その間支度しろ。女性は何かと支度に時間かかるだろ。」
「ありがとうございます。…降谷さん、ほんと優しいですよね。皆、降谷さんを怖がり過ぎですよね。」
「怖い上司で悪かったな。
…そもそも皆、周囲が見えてない。
危険に晒したくないからつい口うるさく言ってしまう。はぁー…。皆ナマエのように優秀ならばそんなうるさく言わないんだけどな。」
「私優秀ですか？ありがとうございます！
まぁ、子供の頃から親から色々英才教育されてますからね〜。」
冗談めかして言うと苦笑いされた。
そりゃあね、私両親が元MI6＆元公安だし。
小さい頃から色々教わりましたよ…。


支度を終えると降谷さんに手招きされた。味見？
出されたスプーンを口に含んだ。
「ん、これ美味しいです！」
「ミートボールとキャベツのトマトミルク煮。
今度ポアロの新メニューにしようと思って。」
「絶対人気出ますよ！！メニューになったら食べに行きますね！」
「前にみたいに週一で来るのはやめてくれ。客が恋人なのかと探ってくるから面倒なんだよ。」
「えー。分かりました。」

作ってもらった料理を食べて車で警視庁まで送ってもらった。
「しばらくは赤井秀一に気をつけろよ。沖矢昴にも。」
「分かってます。…あの……降谷さん、私が沖矢昴と付き合うって言ったら…どうしますか？」
「は？……もしかして、告白されたのか？」
「だいぶ前ですけど…ずっと返事を保留しているんです…。色々情報を引き出せるかもしれませんし、どうですか？」
「ナマエ。」
「はい？」
「沖矢昴の事、好きなのか？それともハニートラップのつもりか？」
「…正直………私の中で、赤井秀一と沖矢昴が天秤にかかっているような状態です。」
「どちらも好きという事か…。」
「そうかもしれません。」
「…付き合うかどうかは任せるけど、危なくなったらすぐに手を引け。それと、無理にハイネックを捲ろうなんて無茶するなよ。
公安に不利になるような事をしなければ好きにすれば良い。何かあったら相談に乗るから言ってくれ。
男心は男が1番よく分かってるから。」
珍しく優しげな笑みを浮かべて頭をくしゃくしゃ撫でられた。
「…子供扱いしてます？」
「ごめん、僕よりちっちゃいからつい。」
「降谷さんがでかいんです!!まったくいじわるなんだから…。今日は本当にありがとうございました！」
わざと少々怒りながら車を降りた。
降谷さんは余裕そうに軽く手を挙げるとさっさと行ってしまった。

物凄く忙しいのに、わざわざ泊まりに来てくれるなんて…本当に凄い上司だ。