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Put on a happy face

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主人公
安室の彼女

言ってから気付いた。
これではアラサーの女が若い男を口説いているみたいじゃないか。

これからホテルを借りて、夕食買って…とか色々しなければならないのが可哀想だと思っただけだ。
それに学生の身分だしあまりお金をかけたくないはず。

「あっ、ごめんなさい。つい心配になって。」
「いいんですか?こちらとしては凄く助かります。」
思いの外、相手は嫌ではないらしい。
「えぇ。ついでに料理教えますよ。」
「ありがとうございます。では遠慮なく…今晩だけ泊めさせてもらいますね。コンビニに寄らせて下さい。」
歯ブラシとか下着とか必要だもんね。

「ここです。」
私の借りているマンションは実家の目の前。

社会人になって実家暮らしもどうかと思って引越しを親に打診したものの、心配という事で反対された。
結果どうにか譲歩して目の前のマンションになった。
ちなみにここは昔、秀一君が住んでいたマンションでもある。階は違うけど。

親は私が社会人になった時、丁度公安を定年退職して今は大使館で勤務している。
親が職場に居るのも嫌だし良かった。

「ホォー…。」
「あ、すみませんが玄関でちょっと待ってて貰えます…?少し片付けます。」
「分かりました。」

パソコンと干していた洗濯物を片付け、軽くトイレ掃除もして改めて出迎えた。
「すみません。なかなか休みがなくて少し散らかっていたもので。」
「いえ。こちらこそ突然すみません。お邪魔します。」
「どうぞ。」
部屋の匂いとか大丈夫だろうか…。
部屋に芳香剤を置いているからましだと思うんだけど…。

「綺麗にしていますね。」
「そうですか?あまり物を持たないようにしているんです。…それでも服は好きで少しずつ増えてしまうんですけどね…。」
「女性ですし、それは仕方の無い事では?」
「そうかもしれないですね。あ、適当にくつろいで下さいね。洗面所はこっち、風呂場はその奥。
トイレはこっちです。」
「どうも。」
「うがい用に紙コップ置いておきますね。
冷蔵庫にお茶あるんで勝手に飲んでください。コップはこれをどうぞ。」
「何から何まですみません。」
「いえいえ。では手を洗ったら肉じゃが作りましょう。」

さっそく教える事になったが、ピーラーというものを使ったことがないらしい。
ただ1度やり方を教えれば問題なく扱えたし、なにより手先が器用だ。
野菜を切るのもきちんと出来ていた。
「なんだ、思いの外上手ですね。」
「ありがとうございます。ただ、知識が乏しいので…学ぶ事はまだ沢山あります。」
「この調子ならあっという間に上達しますよ。」

肉じゃがが完成し、ご飯と刺身を食卓に出した。
「「いただきます。」」

「ん、美味しい!これから肉じゃがはもう1人で作れますね!」
「教え方が上手いからですよ。また違う料理教えて下さいね。材料費は支払いますので。」
「いやいや、学生さんだし私払いますよ。そもそもコーヒーぶちまけたのが原因だし。」
「これでも一応研究員として少しですがお金貰っているんです。それに、実は他にも仕事をしているので収入は問題ないんですよ。
あ、他にも仕事している事は内緒ですよ。
…バレたら教授に怒られてしまうんです。」
人差し指を口元に当てて"shh"とジェスチャーをした。なんだその仕草。可愛いじゃないか。
「そうなんですか。大丈夫です、口外しませんよ。」
働きながら大学院で勉強もしているのか。
「…沖矢さんは努力家ですね。」
「なかなか褒めてもらう機会がないのでそう言って貰えると嬉しいです。」
そう言って彼はわざとらしくニコニコした。

沖矢さんの笑顔って…私の笑顔に似ている。
顔が似てるとかそう言う意味ではなくて、笑顔を顔に無理矢理貼り付けているというか。
本心からの笑顔ではないような…そんな笑い方。
親や兄弟がいないって言ってたから壮絶な人生だったのかもしれない。

私も秀一君が居なくなってから笑顔を貼り付けている事が多くなった。人の事は言えない。

さて、片付けも終わってお風呂にも入った。
ここで一つ問題が発生した。
「沖矢さん、今日はベッド使って下さい。」
「ダメです。ナマエさんがベッド使って下さい。僕はソファーか床で寝ます。」
「ダメです!沖矢さん、明日から引越し先を決めたり忙しいのに寝れてなかったらキツいですよ!
私、職業柄ソファーで寝たりするの慣れますから。
なんなら座ったまま寝れますので。」
「女性なんですからそんな無茶はしないで下さい。」

こんな感じで30分ほど押し問答が続き、このままでは終わらないと思ったので一つ提案した。

「じゃあ一緒にベッドで寝ましょう。幸い私のベッドはダブルベッドです。広いベッドで寝るのが好きなもので。はい、これでいいですね。」
そう捲したてると沖矢さんの動きが止まった。
…また変な事を言ってしまった。
だって他に良い案が思い浮かばないんですもん。

「……。そちらが良いのであれば。」
「……。すみません、勢い余ってまた変な事を。
…私は構いません。」
お互い困ったようななんとも言えない顔をして一緒にベッドに横になった。
「…沖矢さん、そんな端に寝ていたら落ちますよ?」
「…大丈夫です。ナマエさんこそそんな壁際にいたら冷えますよ。」
「…お互い真ん中に寝ましょう。」
「…はい。…あの…。僕の腕、ガムテープか何かでグルグル巻にしてください。」
「え?」
「寝ている間無意識にそちらに触れてしまうかもしれませんし。」
「いやいや、そんな腕を縛ったまま寝るなんて苦行ですよ!別にちょっとやそっと触られても何も思いません。…じゃあ背中くっつけておきましょう。お互いそれなら身動き取れなくて安心です。」
「…分かりました。」
お互いそっと背中合わせになる。
沖矢さんの体温が思ったより高い。
背中がじんわりと温かくなる。
そういえばずっとハイネック着てるから暑いのかな。
「沖矢さん…暑くないですか?」
「大丈夫です。」
「そうですか。…おやすみなさい。」
「おやすみなさい。」

そっと目を閉じる。
背中の温かさが心地よくて、公安なのに警戒心ゼロで一瞬で眠りに落ちた。
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