Put on a happy face
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次の日、いつも通り部屋に入ると何やら騒がしかった。
「おはようございます。朝から皆ソワソワしてますけど、どうしたんですか?」
「これから公安が来るのよ。」
「えっ!」
丁度その時エレベーター側から足音が聞こえてきた。
慌てて視線を向けると、スーツをビシッと着こなした見慣れた人達がこちらへ向かってくる所だった。
その先頭には風見さんが神妙な面持ちをしている。
「なんで公安が?昨日の通り魔の事件の件?」
「きっとそうよ。はーぁ、どうせまた横取りされるに違いないわ。」
佐藤さんとコソコソ話をしていると風見さん達は目暮警部の前に立った。
「昨日の事件は今後こちらが捜査する。異論は一切認めない。」感情が一切こもってない一方的な物言いに、イライラして思わず立ち上がった。怒りのままま風見さんの胸ぐらを掴まん勢いで近づく。
「風見さん!どういう事ですか?事件に巻き込まれたのは私ですが?私が居た方が状況なども踏まえて詳しく分かると思いますが?」
「昨日の報告書を見る限り、犯人の顔以外何も分かっていないようだが?残ったのは爆弾の破片だけだ。
君が居なくても問題はない。」
「そんな事これから捜査してみないと分からないですよね?爆発する前の爆弾の形状は私しか見てませんし!それとも公安の優秀な方々は爆弾の構造と、入手経路等がもう分かっているとでも?」
「こら、やめなさい!」
「目暮警部だって悔しくないですか?…私、上に直談判してきます。合同捜査以外認めません!」
怒りに任せながら部屋を出た。
通りすがりに佐藤さんと高木さんが少し嬉しそうに苦笑いしているのが見えた。
「どういう事ですか!!」
黒田管理官のデスクに勢いよく手をついた。
彼は椅子に座ったまま腕を組み無言のまま私を睨んでいた。しばらくして少し困ったようにため息をつく。
「今回は手を引け。死にたくなければな。」
「…やはり組織絡みですか?」
「組織の件だけではない。
……はっきりと言う。上層部はまともな奴だけではない。お前が捜査一課に異動した事で上の極々一部に妙な動きがある。
お前も噂くらいは知っているだろう?
上層部の誰かは分からんが、大物政治家との癒着があると。」
「黒の組織が絡んでいる事件に政治家絡みのものがあって、確か上が秘密裏に揉み消した…という噂ですか?」
「そうだ。政治家が誰か・上の誰が揉み消したのかは全く分からん。しかし、組織に潜入していたお前や降谷が深く事情を知っていると思い込んで疎ましく思っているんだろう。
…降谷は上にも顔が広い。気に入っている奴も多いから簡単には手が出せない。
しかしお前は別だ。今や公安ですらないただの捜査一課の警察官となれば簡単に切り捨てるだろう。
分かったな?面倒事は避けて大人しくしてろ。」
黒田さんは表情には出さないが、本当に心配そうな声で私に訴えかける。
「私を消そうとしている奴が今回の事件を企んだんですね。」
「そうだ。上や政治家は直接手を下そうとは思っていないはずだ。その代わり、今回のように全く関係ない奴や組織の残党を使うだろう。あるいは事件に巻き込まれても何の対処もしない可能性がある。」
「もしかして、今回の事も上は何か知っていてあえて放置した…?」
「それに関しては降谷に説明してもらう。」
その言葉に反応するようにドアがノックされ降谷さんが入ってきた。
「ナマエ。怪我は大丈夫か?」
「降谷さん、お久しぶりです。
大丈夫ですよ、ただのかすり傷です。
昨日はシュウが電話で文句を言っちゃってごめんなさい。」
「いや、僕らに非がある。当然だよ。そもそも赤井にも連絡しておくべきだった。
まさかあんなに上が馬鹿だとは…。」
「降谷、口を慎め。」
「…失礼しました。上の極々一部が、でしたね。」
その後の降谷さんの説明によれば、あの爆弾事件は組織の残党が複数名関係していたらしい。
残党とはいえ、かなり末端の人達だ。
裏社会では新人中の新人。
だから名を轟かせる・有名になりたかった。そこにとある政治家が"金をやるから組織を壊滅に追いやった警察官を殺せ"と命じたらしい。
「以前僕も軽く狙われたけど、単独犯だったから簡単に捕まえて情報を吐かせたよ。」
「降谷さんに単独で挑むなんてなかなか勇気ありますね。」
「いいや、ただの考え無しだよ。
多分、情報がバレたと分かった時点で奴らは恐れをなしてる。結局僕を狙うのはやめたんだろう。
だから次に君をターゲットにした。
しかもタチが悪い事に明らかに一般人を利用して。」
「あの犯人の身元が分かったんですか!?」
「あぁ。本当にただの一般人だよ。
…どうやらかなりのブラック企業に勤めていた人みたいでね。元々食べるのがやっとな生活だったのに、最近娘さんが病気になった。食べるのもままならなくなって消費者金融から金をあちこち借りていた。
金を返せなくなって、最終手段で保険金目的で事故にみせかけて死ぬ為にわざと車にぶつかった。
幸い怪我はなかったみたいだけど…不運な事にその車にたまたま乗っていたのは組織の残党だった。
最終的に、組織の男に車の修理代をチャラにしてその上3000万をやるからとある警察官を殺せと命じられたらしい。」
それで私を狙っていたのか…。
「…それはどこからの情報ですか?」
「あの犯人の妻からだよ。旦那が帰ってこない、遺書のようなものが置いてあると言って警察署に駆け込んできたそうだ。その紙に詳しく書かれていたよ。
…結局金も受け取っていないようだし、嵌められたんだろうな。」
降谷さんの話を黙って聞いていた黒田管理官は小さくため息をつく。あまりに酷い話に虫唾が走る。
「つまり、利用されたんですね。
あの男、…私を見て笑ったんです。
私を殺せば奥さんや子供の元へ金が入るからだったんですね。」
辛すぎる。本来は犠牲になる必要のない一般人が巻き込まれて死んだのだ。残された家族はいったいどんな思いだろうか。酷い。
「私、自分の手で残党を捕まえたい!私を狙っているなら尚更。私が動けばきっと奴らも動く。」
「ダメだ!!!」
降谷さんが突然大きい声で怒鳴った。
あまりの剣幕にあまりの剣幕にびっくりした。
彼は珍しく感情的になっている。
いつも冷静沈着なのに。降谷さんは、ゆっくりと深呼吸をすると勢いよく頭を下げた。
「ナマエ、今回はやめてくれ!」
私は驚いて何も言えない。
黒田管理官は驚いた様子もなく、静かに腕を組んでその様子を見ている。
しばらくそのままの姿勢だったが、やがて降谷さんは大きく息を吐き出すと、姿勢を正して真っ直ぐ前を見た。
そこで私はようやく口を動かすことが出来た。
「昨日も電話くれましたよね。
なんで降谷さんが謝るんですか?」
「僕なら怪我を負わす前に助けられた。
…僕は近くに居たんだ。組織の残党があの男を動かしているのは前から知っていた。
僕達はあの男をどこかで見張っているであろう組織の残党を探すため、現場付近に居た。
君が狙われているのも知っていた。
だから僕は上に掛け合った。公安だけでは組織の残党を探して捕らえるだけで精一杯だから、君を守る為に機動隊を出してくれと。なのに……!!
上は機動隊を出さなかった!俺には出すと言っていたのに、忘れていたなどと馬鹿げた言葉を放って笑った!!」
降谷さんのブルーグレーの瞳が怒りに再び震えた。
悔しそうに拳を握りしめる。
「機動隊が近くにいると思っていた。だから油断していた。もっと近くに居たら絶対に怪我ひとつ負わせず返したのに。…ごめん。」降谷さんがポツリと言った。その顔は酷く悲しそうだった。この人はどこまで優しいんだろうか。
降谷さんは悪く無いのに、むしろ私なんかの為にこんなにも怒り、悲しんでくれている。
そんな貴方を責められるわけがない。
「降谷さん、怒ってくれてありがとう。結果だけ見たら私、大した怪我じゃなかったし大丈夫。
それにこれからの事も考えたら、あの時姿を見せなくて正解です。近くに捜査一課の刑事もいたから。
だから降谷さんはこれまで通り動いて下さい。
私は私で切り札があるから大丈夫。」
にっこり笑ってスマホを取り出し、とある人物に電話をかけた。
「おはようございます。朝から皆ソワソワしてますけど、どうしたんですか?」
「これから公安が来るのよ。」
「えっ!」
丁度その時エレベーター側から足音が聞こえてきた。
慌てて視線を向けると、スーツをビシッと着こなした見慣れた人達がこちらへ向かってくる所だった。
その先頭には風見さんが神妙な面持ちをしている。
「なんで公安が?昨日の通り魔の事件の件?」
「きっとそうよ。はーぁ、どうせまた横取りされるに違いないわ。」
佐藤さんとコソコソ話をしていると風見さん達は目暮警部の前に立った。
「昨日の事件は今後こちらが捜査する。異論は一切認めない。」感情が一切こもってない一方的な物言いに、イライラして思わず立ち上がった。怒りのままま風見さんの胸ぐらを掴まん勢いで近づく。
「風見さん!どういう事ですか?事件に巻き込まれたのは私ですが?私が居た方が状況なども踏まえて詳しく分かると思いますが?」
「昨日の報告書を見る限り、犯人の顔以外何も分かっていないようだが?残ったのは爆弾の破片だけだ。
君が居なくても問題はない。」
「そんな事これから捜査してみないと分からないですよね?爆発する前の爆弾の形状は私しか見てませんし!それとも公安の優秀な方々は爆弾の構造と、入手経路等がもう分かっているとでも?」
「こら、やめなさい!」
「目暮警部だって悔しくないですか?…私、上に直談判してきます。合同捜査以外認めません!」
怒りに任せながら部屋を出た。
通りすがりに佐藤さんと高木さんが少し嬉しそうに苦笑いしているのが見えた。
「どういう事ですか!!」
黒田管理官のデスクに勢いよく手をついた。
彼は椅子に座ったまま腕を組み無言のまま私を睨んでいた。しばらくして少し困ったようにため息をつく。
「今回は手を引け。死にたくなければな。」
「…やはり組織絡みですか?」
「組織の件だけではない。
……はっきりと言う。上層部はまともな奴だけではない。お前が捜査一課に異動した事で上の極々一部に妙な動きがある。
お前も噂くらいは知っているだろう?
上層部の誰かは分からんが、大物政治家との癒着があると。」
「黒の組織が絡んでいる事件に政治家絡みのものがあって、確か上が秘密裏に揉み消した…という噂ですか?」
「そうだ。政治家が誰か・上の誰が揉み消したのかは全く分からん。しかし、組織に潜入していたお前や降谷が深く事情を知っていると思い込んで疎ましく思っているんだろう。
…降谷は上にも顔が広い。気に入っている奴も多いから簡単には手が出せない。
しかしお前は別だ。今や公安ですらないただの捜査一課の警察官となれば簡単に切り捨てるだろう。
分かったな?面倒事は避けて大人しくしてろ。」
黒田さんは表情には出さないが、本当に心配そうな声で私に訴えかける。
「私を消そうとしている奴が今回の事件を企んだんですね。」
「そうだ。上や政治家は直接手を下そうとは思っていないはずだ。その代わり、今回のように全く関係ない奴や組織の残党を使うだろう。あるいは事件に巻き込まれても何の対処もしない可能性がある。」
「もしかして、今回の事も上は何か知っていてあえて放置した…?」
「それに関しては降谷に説明してもらう。」
その言葉に反応するようにドアがノックされ降谷さんが入ってきた。
「ナマエ。怪我は大丈夫か?」
「降谷さん、お久しぶりです。
大丈夫ですよ、ただのかすり傷です。
昨日はシュウが電話で文句を言っちゃってごめんなさい。」
「いや、僕らに非がある。当然だよ。そもそも赤井にも連絡しておくべきだった。
まさかあんなに上が馬鹿だとは…。」
「降谷、口を慎め。」
「…失礼しました。上の極々一部が、でしたね。」
その後の降谷さんの説明によれば、あの爆弾事件は組織の残党が複数名関係していたらしい。
残党とはいえ、かなり末端の人達だ。
裏社会では新人中の新人。
だから名を轟かせる・有名になりたかった。そこにとある政治家が"金をやるから組織を壊滅に追いやった警察官を殺せ"と命じたらしい。
「以前僕も軽く狙われたけど、単独犯だったから簡単に捕まえて情報を吐かせたよ。」
「降谷さんに単独で挑むなんてなかなか勇気ありますね。」
「いいや、ただの考え無しだよ。
多分、情報がバレたと分かった時点で奴らは恐れをなしてる。結局僕を狙うのはやめたんだろう。
だから次に君をターゲットにした。
しかもタチが悪い事に明らかに一般人を利用して。」
「あの犯人の身元が分かったんですか!?」
「あぁ。本当にただの一般人だよ。
…どうやらかなりのブラック企業に勤めていた人みたいでね。元々食べるのがやっとな生活だったのに、最近娘さんが病気になった。食べるのもままならなくなって消費者金融から金をあちこち借りていた。
金を返せなくなって、最終手段で保険金目的で事故にみせかけて死ぬ為にわざと車にぶつかった。
幸い怪我はなかったみたいだけど…不運な事にその車にたまたま乗っていたのは組織の残党だった。
最終的に、組織の男に車の修理代をチャラにしてその上3000万をやるからとある警察官を殺せと命じられたらしい。」
それで私を狙っていたのか…。
「…それはどこからの情報ですか?」
「あの犯人の妻からだよ。旦那が帰ってこない、遺書のようなものが置いてあると言って警察署に駆け込んできたそうだ。その紙に詳しく書かれていたよ。
…結局金も受け取っていないようだし、嵌められたんだろうな。」
降谷さんの話を黙って聞いていた黒田管理官は小さくため息をつく。あまりに酷い話に虫唾が走る。
「つまり、利用されたんですね。
あの男、…私を見て笑ったんです。
私を殺せば奥さんや子供の元へ金が入るからだったんですね。」
辛すぎる。本来は犠牲になる必要のない一般人が巻き込まれて死んだのだ。残された家族はいったいどんな思いだろうか。酷い。
「私、自分の手で残党を捕まえたい!私を狙っているなら尚更。私が動けばきっと奴らも動く。」
「ダメだ!!!」
降谷さんが突然大きい声で怒鳴った。
あまりの剣幕にあまりの剣幕にびっくりした。
彼は珍しく感情的になっている。
いつも冷静沈着なのに。降谷さんは、ゆっくりと深呼吸をすると勢いよく頭を下げた。
「ナマエ、今回はやめてくれ!」
私は驚いて何も言えない。
黒田管理官は驚いた様子もなく、静かに腕を組んでその様子を見ている。
しばらくそのままの姿勢だったが、やがて降谷さんは大きく息を吐き出すと、姿勢を正して真っ直ぐ前を見た。
そこで私はようやく口を動かすことが出来た。
「昨日も電話くれましたよね。
なんで降谷さんが謝るんですか?」
「僕なら怪我を負わす前に助けられた。
…僕は近くに居たんだ。組織の残党があの男を動かしているのは前から知っていた。
僕達はあの男をどこかで見張っているであろう組織の残党を探すため、現場付近に居た。
君が狙われているのも知っていた。
だから僕は上に掛け合った。公安だけでは組織の残党を探して捕らえるだけで精一杯だから、君を守る為に機動隊を出してくれと。なのに……!!
上は機動隊を出さなかった!俺には出すと言っていたのに、忘れていたなどと馬鹿げた言葉を放って笑った!!」
降谷さんのブルーグレーの瞳が怒りに再び震えた。
悔しそうに拳を握りしめる。
「機動隊が近くにいると思っていた。だから油断していた。もっと近くに居たら絶対に怪我ひとつ負わせず返したのに。…ごめん。」降谷さんがポツリと言った。その顔は酷く悲しそうだった。この人はどこまで優しいんだろうか。
降谷さんは悪く無いのに、むしろ私なんかの為にこんなにも怒り、悲しんでくれている。
そんな貴方を責められるわけがない。
「降谷さん、怒ってくれてありがとう。結果だけ見たら私、大した怪我じゃなかったし大丈夫。
それにこれからの事も考えたら、あの時姿を見せなくて正解です。近くに捜査一課の刑事もいたから。
だから降谷さんはこれまで通り動いて下さい。
私は私で切り札があるから大丈夫。」
にっこり笑ってスマホを取り出し、とある人物に電話をかけた。
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