Put on a happy face
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〈佐藤刑事side。ほんっっの少しハロ嫁ネタあり。
ネタバレ等はありません。〉
蝉の声が微かにと聞こえ始めた夏本番前。
公安から人事異動があるという噂が課内で広まった。
その噂を耳にしたのはデスクで書類整理をしている時だった。
「佐藤さん、知ってます?公安から一人こっちに配属されるらしいですよ!」
「単なる噂でしょう?まさか公安からこっちに来るなんて、そんな訳……。」
「いや、それが本当らしいですよ。
何でもエリート中のエリートだって。
黒田管理官と目暮警部がちらっと話しているのが聞こえた、って千葉が言ってました。」
隣の席の渉が好奇心旺盛な目でこちらを見つめながら言った。
この警視庁では、いわゆるキャリア組と呼ばれる警察官がたくさんいるが、その中でも特に優秀な人材だけが行けるとされるのが公安部。刑事部の私達からしたら、まさに雲の上の存在。
それと同時に、公安は敵でもある。
今まで何度か事件を横取りされた上、情報は何一つ与えてくれない。何度怒りに打ち震えたか。
今、隣に平然と座る渉は以前公安と協力した時にかなり危険な目に合わされたし。
それで公安の人を叩いちゃったのよね…。
嫌な思い出が頭を巡る。
「…異動してくる人、佐藤さんが引っぱたいた人じゃ…。」
「そ、それは……。」
「ち、違う人だと良いですね。」
「…そうね。高木君、とりあえず今は仕事に集中しなさい。」
それから数日経ったある日の事だ。
目暮警部から『捜査一課に異動してくる者が1名いる』と聞かされた。
あの噂は本当だったようだ。
「男…でしょうか?」
「いや、女性だと聞いている。詳しい事はワシにもまだ分からないが、公安から来る事は確かだ。」
その言葉に皆どよめいた。
とりあえず私が引っぱたいた人ではない事は確か。
少しだけほっとした。
ーーー
それから1週間後。
異動してきたのはまさかのナマエさん。以前に複数回コナン君と一緒に事件に巻き込まれていた女性だった。何度か会ったのに警察官だとは全く分からなかった。驚きを隠せない。
改めて彼女をじっくりと見る。
長めの黒髪、日本人離れした綺麗な顔立ち。立ち振る舞いからは公安にいたとは全く思えなかった。
物腰は柔らかく、ピリついた雰囲気もない。
公安独自の隙がない様子ではなかった。
正直警察官にすら見えない。
モデルと言われても頷ける容姿だった。
周りの人達も来る前はあんなに"公安の文句を言ってやる、きっちり捜査一課のやり方を教え込む"だのと大口叩いていたのにいざ彼女が来てみると照れくさそうに俯き口数が少なくなっていた。
同じ女性という事で私が色々と教える立場になった。
捜査一課には女性は私しかいなかったから素直に嬉しかった。
彼女は本当に優秀で、大抵一度の説明であっという間に理解して覚えてしまう。捜査も独自の見解を出してくれるので解決に至るまでが随分早くなったし勉強になった。だけどそれを鼻にかける訳でもなくて、とても親しみやすい。
普段の何気ない会話は楽しく、これからもっともっと仲良くなれそうだと勝手に思っていた。
…けれどその考えは日に日に変わっていった。
帰りに駅まで一緒に帰ろうとしても、必ず用事があると言って避けられる上にプライベートに関する質問はほとんど答えてくれなかった。
思わず帰り道に渉に弱音を吐いた。
「私、あんまり彼女に好かれてないのかしら。」
「そんな事ないと思いますよ!きっと、今までずっと秘密主義な中で過ごしてきたから、自分の事を言うの慣れてないんじゃないですか?」
「そうかもしれないわね…。仕事以外でも仲良くしたかったんだけど残念…。」
「これから少しずつ時間をかければきっと心を開いて色々話してくれますよ!
僕も出来る限り協力します!」
「ありがとう、渉。」
ある日の夕方。なんだか外が少し暗くなってきて天気が崩れそう。今日は傘持ってきてなかったから、早めに仕事を切り上げないと。
ナマエさんがクリップで書類を止めていたので、終わったら帰るように伝えた。
それと同時にタイミングよく彼女のスマホが震えて通知が表示された。
画面を見るつもりはなくたまたま見えてしまったのだが、誰かからのおつかいの連絡だったようだ。
相手の名前は『 S 』としか出ていない。
恋人はいないと言っていたから家族かしら。
つい気になって家族と住んでいるのかと聞くと、お父さんとの事。
初めて彼女のプライベートな事が聞けて思わず頬が緩んだ。
「これからスーパー寄らないといけないわね。
雨降りそうだから気をつけて。」
「ありがとうございます。ではお先に失礼します。」
頭を下げて足早に帰る彼女を見送り、書類の最終チェックをした。
それから10分位たっただろうか。
通り魔が出たとの通報があった。
しかもその場所は彼女が行くと言っていたスーパーからかなり近い場所だった。慌てて電話する。
「今どこ!?まだスーパーにいる?!」
「今スーパーに着きました。どうしました?」
「そこから出た大通りの駅側に通り魔が出たの!」
「分かりました。向かいます。」
「待って!危ないから待機よ!!!今、皆で向かってるから!絶対に一人で行っちゃダメよ!!」
「問題ありません。」
「危ないからダメよ!!聞いてる??ちょっと!!」
電話を切られた。酷く嫌な予感がする。
「目暮警部ッ……!」
「佐藤君、どうした!?」
「ナマエさんが……ナマエが危ないかもしれません……!」
「どういう事だ!?」
「さっき彼女、ここから近いスーパーへ行くと言っていたんですけど、そこが通り魔の現場と近いんです!今電話をかけたらこれから向かうと言って切られました!」
「何!?佐藤君、至急迎えに行ってくれ!」
「はい!!」
急いで防弾チョッキと拳銃を身につけ駐車場に走った。後ろから走って追いかけてくる渉が何度も落ち着いて下さい!と叫ぶ。
「嫌な予感がするの!頭の中で……何故か松田君が浮かぶのよ。」
勢いよくドアを閉めて愛車を走らせた。
サイレンを鳴らしながらアクセルを強くふむ。
どうか無事でいて!
ネタバレ等はありません。〉
蝉の声が微かにと聞こえ始めた夏本番前。
公安から人事異動があるという噂が課内で広まった。
その噂を耳にしたのはデスクで書類整理をしている時だった。
「佐藤さん、知ってます?公安から一人こっちに配属されるらしいですよ!」
「単なる噂でしょう?まさか公安からこっちに来るなんて、そんな訳……。」
「いや、それが本当らしいですよ。
何でもエリート中のエリートだって。
黒田管理官と目暮警部がちらっと話しているのが聞こえた、って千葉が言ってました。」
隣の席の渉が好奇心旺盛な目でこちらを見つめながら言った。
この警視庁では、いわゆるキャリア組と呼ばれる警察官がたくさんいるが、その中でも特に優秀な人材だけが行けるとされるのが公安部。刑事部の私達からしたら、まさに雲の上の存在。
それと同時に、公安は敵でもある。
今まで何度か事件を横取りされた上、情報は何一つ与えてくれない。何度怒りに打ち震えたか。
今、隣に平然と座る渉は以前公安と協力した時にかなり危険な目に合わされたし。
それで公安の人を叩いちゃったのよね…。
嫌な思い出が頭を巡る。
「…異動してくる人、佐藤さんが引っぱたいた人じゃ…。」
「そ、それは……。」
「ち、違う人だと良いですね。」
「…そうね。高木君、とりあえず今は仕事に集中しなさい。」
それから数日経ったある日の事だ。
目暮警部から『捜査一課に異動してくる者が1名いる』と聞かされた。
あの噂は本当だったようだ。
「男…でしょうか?」
「いや、女性だと聞いている。詳しい事はワシにもまだ分からないが、公安から来る事は確かだ。」
その言葉に皆どよめいた。
とりあえず私が引っぱたいた人ではない事は確か。
少しだけほっとした。
ーーー
それから1週間後。
異動してきたのはまさかのナマエさん。以前に複数回コナン君と一緒に事件に巻き込まれていた女性だった。何度か会ったのに警察官だとは全く分からなかった。驚きを隠せない。
改めて彼女をじっくりと見る。
長めの黒髪、日本人離れした綺麗な顔立ち。立ち振る舞いからは公安にいたとは全く思えなかった。
物腰は柔らかく、ピリついた雰囲気もない。
公安独自の隙がない様子ではなかった。
正直警察官にすら見えない。
モデルと言われても頷ける容姿だった。
周りの人達も来る前はあんなに"公安の文句を言ってやる、きっちり捜査一課のやり方を教え込む"だのと大口叩いていたのにいざ彼女が来てみると照れくさそうに俯き口数が少なくなっていた。
同じ女性という事で私が色々と教える立場になった。
捜査一課には女性は私しかいなかったから素直に嬉しかった。
彼女は本当に優秀で、大抵一度の説明であっという間に理解して覚えてしまう。捜査も独自の見解を出してくれるので解決に至るまでが随分早くなったし勉強になった。だけどそれを鼻にかける訳でもなくて、とても親しみやすい。
普段の何気ない会話は楽しく、これからもっともっと仲良くなれそうだと勝手に思っていた。
…けれどその考えは日に日に変わっていった。
帰りに駅まで一緒に帰ろうとしても、必ず用事があると言って避けられる上にプライベートに関する質問はほとんど答えてくれなかった。
思わず帰り道に渉に弱音を吐いた。
「私、あんまり彼女に好かれてないのかしら。」
「そんな事ないと思いますよ!きっと、今までずっと秘密主義な中で過ごしてきたから、自分の事を言うの慣れてないんじゃないですか?」
「そうかもしれないわね…。仕事以外でも仲良くしたかったんだけど残念…。」
「これから少しずつ時間をかければきっと心を開いて色々話してくれますよ!
僕も出来る限り協力します!」
「ありがとう、渉。」
ある日の夕方。なんだか外が少し暗くなってきて天気が崩れそう。今日は傘持ってきてなかったから、早めに仕事を切り上げないと。
ナマエさんがクリップで書類を止めていたので、終わったら帰るように伝えた。
それと同時にタイミングよく彼女のスマホが震えて通知が表示された。
画面を見るつもりはなくたまたま見えてしまったのだが、誰かからのおつかいの連絡だったようだ。
相手の名前は『 S 』としか出ていない。
恋人はいないと言っていたから家族かしら。
つい気になって家族と住んでいるのかと聞くと、お父さんとの事。
初めて彼女のプライベートな事が聞けて思わず頬が緩んだ。
「これからスーパー寄らないといけないわね。
雨降りそうだから気をつけて。」
「ありがとうございます。ではお先に失礼します。」
頭を下げて足早に帰る彼女を見送り、書類の最終チェックをした。
それから10分位たっただろうか。
通り魔が出たとの通報があった。
しかもその場所は彼女が行くと言っていたスーパーからかなり近い場所だった。慌てて電話する。
「今どこ!?まだスーパーにいる?!」
「今スーパーに着きました。どうしました?」
「そこから出た大通りの駅側に通り魔が出たの!」
「分かりました。向かいます。」
「待って!危ないから待機よ!!!今、皆で向かってるから!絶対に一人で行っちゃダメよ!!」
「問題ありません。」
「危ないからダメよ!!聞いてる??ちょっと!!」
電話を切られた。酷く嫌な予感がする。
「目暮警部ッ……!」
「佐藤君、どうした!?」
「ナマエさんが……ナマエが危ないかもしれません……!」
「どういう事だ!?」
「さっき彼女、ここから近いスーパーへ行くと言っていたんですけど、そこが通り魔の現場と近いんです!今電話をかけたらこれから向かうと言って切られました!」
「何!?佐藤君、至急迎えに行ってくれ!」
「はい!!」
急いで防弾チョッキと拳銃を身につけ駐車場に走った。後ろから走って追いかけてくる渉が何度も落ち着いて下さい!と叫ぶ。
「嫌な予感がするの!頭の中で……何故か松田君が浮かぶのよ。」
勢いよくドアを閉めて愛車を走らせた。
サイレンを鳴らしながらアクセルを強くふむ。
どうか無事でいて!