Put on a happy face
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
チン、と軽快な音と共にエレベーターの扉が開き、目の前の人たちが一斉に乗った。
大勢乗り込んでいる中、少し無理に開けてもらったスペースに頭を下げながら乗り込んだ。
そして普段押す14階ではなく、12階のボタンを押した。
軽い振動と共にエレベーターが徐々に上がる。階が上がる度に降りていく人は減る。
10階の時点でエレベーターに乗っているのは私ともう1人だけだった。
階が上がる事に心拍数も上がっていく。
12階に到着するアナウンスと共に扉が開いた。
開くボタンを押してくれた彼に礼を言う。
「ありがとうございます。」
心の中で風見さん、と呟いた。
私は警視庁内ではもう彼と気さくには話せない。
立場が変わった、というのはもちろんだが元公安の私が仲良く話をしていれば風見裕也が公安だという事はバレる。彼を知らない人にも必然と身分を明かしてしまう事になる。
それに元公安といえど馴れ馴れしく話をしていれば"まだ公安と繋がっているのか"等と周囲にあらぬ疑いをかけられるかもしれない。
公安と刑事は水と油。
ただでさえ受け入れて貰えそうにないのに、自分から争いの火種を作りたくはない。
例え他に誰もいなくても、普段からの立ち振る舞いが大切。だから私は今後一切建物内では他人のフリをする。
それが分かっているから、風見さんも何も話さずに頭だけを下げてくれた。
エレベーターを降りて扉が閉まる瞬間、
「ご武運を」という声が聞こえた気がした。
廊下をコツコツと歩いていると目当ての人物を見つけた。一つ深呼吸をして声をかけた。
「目暮警部。本日付けで捜査一課に配属されました、赤井ナマエです。よろしくお願いします。」
深々と頭を下げると頭上から優しげな声が聞こえた。
「おお、今日からだったな。色々と説明する前に面談をしよう。会議室へ行こうかね。」
「はい。」
頭を上げた瞬間、目暮警部が酷く驚いた。
「君は!!」
「……お久しぶりです。」
「確か何度かコナン君と一緒に事件に巻き込まれていた……!まさか警察官だったとは!」
「立場上、身分を明かせず失礼を。」
「いや……。立ち話も何だ……中で詳しく話そう。」
会議室へ入るとすぐ椅子を勧められたのでパイプ椅子に腰掛けた。向かい合うように目暮警部も座る。
会議室には誰もおらず、2人だけしかいない空間になる。……静かだ。
静寂の中、聞こえるのは微かな風の音と外の車の音だけ。
目暮警部は一度咳払いをすると改めて自己紹介をしてくれた。
私も再度名前を名乗り、警察手帳を見せた。
まだ警察手帳には『警察庁警備局警備企画課』の文字が表記されていた。
もう少しで新しい警察手帳が手元に来る手筈になっている。
「それで……捜査一課には希望で来たと聞いた。
一応、ここへの志望理由を聞きたいのだが。」
「ご存知の通り、何度かコナン君と一緒に、皆さんにはお会いしていました。関わる中で、捜査一課の方々の捜査の姿勢や熱意に心を打たれました。
自分の立場など関係なく……時には公安に楯突く姿にも。」
その言葉に目暮警部はさすがに困ったような顔をした。
「その節は……うちの者がすまなかった。
公安の方の考えもあっただろうが……」
「いいえ。色々と公安のやり方は時には強引で……
申し訳ありませんでした。私個人的に謝罪致します。立場上言えない事が多すぎるので、無理やりに感じた事でしょう。」
「いやいや。」
「私は、この国を守りたいと本気で思っています。
そのために少しでも力になりたいと思っております。
捜査一課で、今までの経験を生かし、精一杯頑張ります。どうかご指導をお願いします。」
「もちろん。むしろ我々が学ぶ事の方が多そうですな。」そう言って優しく笑ってくれた。
「そうだ、言える範囲で構わないんだが……今までの経験を少しお聞かせ願いたい。この書類に大まかに書かれていたのだが……。」
懐から出した封筒の中身をテーブルの中央置いた。
中身は1枚の書類。
右上の方に極秘事項とハンコが押されていた。
その書類を書いた人物として一番下に
『降谷零』と直筆のサインがされていた。
円滑に話が通るよう、わざわざ書類を作って渡してくれていたのだ。有難い。
降谷零、という名前自体が本当は極秘事項に近いものがある。それなのに上司として書類を作り、サインまでしてくれるなんて嬉しい反面、少し申し訳ない気分だ。
「はい。……その書類の通りです。
目暮警部には全てお話しておきます。
様々な事件に関わっていますが、最も最近では例の……黒の組織に潜入捜査を行っていました。
ご存知かと思いますが、組織内で認められるとウィスキーの名前がコードネームとしてつけられます。
私はライというコードネームを貰い組織の中枢に潜り込みました。
おかげで情報を得られ、同じ公安の仲間や他国の警察組織の方々と共に協力し、組織壊滅に至りました。
その後ある程度残党を捕らえましたが……未だ捕まっていない者もいくらかおります。
本名は組織の人達にバレてはいませんが、顔を知られているので命を狙われる可能性は今後もあります。
なるべく捜査一課の方を巻き込まないよう注意しますが……もしもの時は私ではなく他の方の命を優先して下さい。」
そういうと目暮警部はしばらく言葉に詰まった。
何故か酷く悲しそうな顔をしていた。それは涙目になりそうな程だった。
「目暮警部……?どうされました?」
「ッ……ワシより随分と若い、未来ある女性が……命をかけてこの国を守ってくれていたかと思うと……。
すまない……。
今まで未来ある若者が何人も命を落としたのを見てきた。本当に辛いことだった……。
だが公安の人達は存在すら隠され、死んだことすら知らされない。なかなか辛い世界だっただろう。
だがこれから君は公安ではない!
捜査一課の一員だ!他の人を優先させてくれ、なんて二度と言うんじゃない!
いいかね?命に優先順位など無い。
ワシの部下になった以上、全力で守る。」
ハンカチで目元を拭うと背筋を正した。
「今まで我々は、公安の方々のおかげで満足に捜査を行うことが出来ていた。…感謝する。」
「……ありがとうございます。」
目暮警部の言葉にじんわりと心が温かくなった。
本当に素敵な上司で良かった。
その後いくつか質問に答えていった。
「あの……それと1つ、お願いが……。」
「なんだね?」
「お話が言ってるかと思いますが、苗字は旧姓の
『来音』で行動させて頂きたいと思っています。」
「あぁ、聞いている。夫がFBI捜査官で、組織に潜入捜査もしていたと。
その上組織の人間に名前がバレている為、妻だと分かると危険が伴うかもしれないから普段は旧姓で、と。」
「ええ、そうです。かと言って、旧姓も少々使うのには抵抗がありまして。私の両親も公安でした。
私の苗字は珍しいので、すぐに私が娘だとバレるかと思います。実際、子供の頃親が関わった事件の関係者に襲われた事があります。
ですので極力苗字は使っていませんでした。
…普段は下の名前で呼んで頂けると助かります。」
「分かった。ではナマエ君、と呼んでも構わないだろうか。」
「はい。お手数おかけします。
それと、私が既婚者な事、黙っていてもらえますか?」
「何故だね?」
「赤井秀一は組織を潰したものの1人として、警視庁内でも名前がかなり知られているかと思います。
だから……その……。私が彼の妻だと分かると、好奇の目で見る人がいるかもしれないので……。」
「あぁなるほど。分かった。黙っておこう。」
「ありがとうございます。色々すみません。」
「いいんだ。何かあったら気兼ねなく言ってくれ。」
「ありがとうございます。」
その後目暮警部の案内の元、部署内を歩き回りながら説明を受けた。
そして最後に捜査一課のフロアで行き、軽く挨拶をした。
「初めまして。本日付けで配属されました
来音ナマエです。とある事情がありまして、皆さんには下の名前で呼んで頂きたいと思っています。よろしくお願いします。」
そう言って頭を下げるとパラパラとまばらに拍手が聞こえた。
顔を上げると、目の前にいた2人以外は仏頂面だった。笑顔で拍手してくれているのは佐藤刑事と高木刑事だ。
拍手の裏で微かに"公安は苗字ですら極秘事項なのかよ"という野次が聞こえた。
目暮警部曰く、私が配属された事で捜査一課全体がピリついているらしい。
そりゃそうだ。捜査一課と公安は何度か対立していた。ただでさえそんな感じなのに、苗字すら明かさない私に当然良い印象はないだろう。
「席は佐藤君の隣りだ。
佐藤君、同じ女性同士、気軽に話せるだろう。
元々顔も知っているだろうからな。
しばらくは色々教えてやってくれんかね。」
「もちろんです。ナマエさん、こっちよ。」
緊張した面持ちで佐藤さんの後をついて行った。
大勢乗り込んでいる中、少し無理に開けてもらったスペースに頭を下げながら乗り込んだ。
そして普段押す14階ではなく、12階のボタンを押した。
軽い振動と共にエレベーターが徐々に上がる。階が上がる度に降りていく人は減る。
10階の時点でエレベーターに乗っているのは私ともう1人だけだった。
階が上がる事に心拍数も上がっていく。
12階に到着するアナウンスと共に扉が開いた。
開くボタンを押してくれた彼に礼を言う。
「ありがとうございます。」
心の中で風見さん、と呟いた。
私は警視庁内ではもう彼と気さくには話せない。
立場が変わった、というのはもちろんだが元公安の私が仲良く話をしていれば風見裕也が公安だという事はバレる。彼を知らない人にも必然と身分を明かしてしまう事になる。
それに元公安といえど馴れ馴れしく話をしていれば"まだ公安と繋がっているのか"等と周囲にあらぬ疑いをかけられるかもしれない。
公安と刑事は水と油。
ただでさえ受け入れて貰えそうにないのに、自分から争いの火種を作りたくはない。
例え他に誰もいなくても、普段からの立ち振る舞いが大切。だから私は今後一切建物内では他人のフリをする。
それが分かっているから、風見さんも何も話さずに頭だけを下げてくれた。
エレベーターを降りて扉が閉まる瞬間、
「ご武運を」という声が聞こえた気がした。
廊下をコツコツと歩いていると目当ての人物を見つけた。一つ深呼吸をして声をかけた。
「目暮警部。本日付けで捜査一課に配属されました、赤井ナマエです。よろしくお願いします。」
深々と頭を下げると頭上から優しげな声が聞こえた。
「おお、今日からだったな。色々と説明する前に面談をしよう。会議室へ行こうかね。」
「はい。」
頭を上げた瞬間、目暮警部が酷く驚いた。
「君は!!」
「……お久しぶりです。」
「確か何度かコナン君と一緒に事件に巻き込まれていた……!まさか警察官だったとは!」
「立場上、身分を明かせず失礼を。」
「いや……。立ち話も何だ……中で詳しく話そう。」
会議室へ入るとすぐ椅子を勧められたのでパイプ椅子に腰掛けた。向かい合うように目暮警部も座る。
会議室には誰もおらず、2人だけしかいない空間になる。……静かだ。
静寂の中、聞こえるのは微かな風の音と外の車の音だけ。
目暮警部は一度咳払いをすると改めて自己紹介をしてくれた。
私も再度名前を名乗り、警察手帳を見せた。
まだ警察手帳には『警察庁警備局警備企画課』の文字が表記されていた。
もう少しで新しい警察手帳が手元に来る手筈になっている。
「それで……捜査一課には希望で来たと聞いた。
一応、ここへの志望理由を聞きたいのだが。」
「ご存知の通り、何度かコナン君と一緒に、皆さんにはお会いしていました。関わる中で、捜査一課の方々の捜査の姿勢や熱意に心を打たれました。
自分の立場など関係なく……時には公安に楯突く姿にも。」
その言葉に目暮警部はさすがに困ったような顔をした。
「その節は……うちの者がすまなかった。
公安の方の考えもあっただろうが……」
「いいえ。色々と公安のやり方は時には強引で……
申し訳ありませんでした。私個人的に謝罪致します。立場上言えない事が多すぎるので、無理やりに感じた事でしょう。」
「いやいや。」
「私は、この国を守りたいと本気で思っています。
そのために少しでも力になりたいと思っております。
捜査一課で、今までの経験を生かし、精一杯頑張ります。どうかご指導をお願いします。」
「もちろん。むしろ我々が学ぶ事の方が多そうですな。」そう言って優しく笑ってくれた。
「そうだ、言える範囲で構わないんだが……今までの経験を少しお聞かせ願いたい。この書類に大まかに書かれていたのだが……。」
懐から出した封筒の中身をテーブルの中央置いた。
中身は1枚の書類。
右上の方に極秘事項とハンコが押されていた。
その書類を書いた人物として一番下に
『降谷零』と直筆のサインがされていた。
円滑に話が通るよう、わざわざ書類を作って渡してくれていたのだ。有難い。
降谷零、という名前自体が本当は極秘事項に近いものがある。それなのに上司として書類を作り、サインまでしてくれるなんて嬉しい反面、少し申し訳ない気分だ。
「はい。……その書類の通りです。
目暮警部には全てお話しておきます。
様々な事件に関わっていますが、最も最近では例の……黒の組織に潜入捜査を行っていました。
ご存知かと思いますが、組織内で認められるとウィスキーの名前がコードネームとしてつけられます。
私はライというコードネームを貰い組織の中枢に潜り込みました。
おかげで情報を得られ、同じ公安の仲間や他国の警察組織の方々と共に協力し、組織壊滅に至りました。
その後ある程度残党を捕らえましたが……未だ捕まっていない者もいくらかおります。
本名は組織の人達にバレてはいませんが、顔を知られているので命を狙われる可能性は今後もあります。
なるべく捜査一課の方を巻き込まないよう注意しますが……もしもの時は私ではなく他の方の命を優先して下さい。」
そういうと目暮警部はしばらく言葉に詰まった。
何故か酷く悲しそうな顔をしていた。それは涙目になりそうな程だった。
「目暮警部……?どうされました?」
「ッ……ワシより随分と若い、未来ある女性が……命をかけてこの国を守ってくれていたかと思うと……。
すまない……。
今まで未来ある若者が何人も命を落としたのを見てきた。本当に辛いことだった……。
だが公安の人達は存在すら隠され、死んだことすら知らされない。なかなか辛い世界だっただろう。
だがこれから君は公安ではない!
捜査一課の一員だ!他の人を優先させてくれ、なんて二度と言うんじゃない!
いいかね?命に優先順位など無い。
ワシの部下になった以上、全力で守る。」
ハンカチで目元を拭うと背筋を正した。
「今まで我々は、公安の方々のおかげで満足に捜査を行うことが出来ていた。…感謝する。」
「……ありがとうございます。」
目暮警部の言葉にじんわりと心が温かくなった。
本当に素敵な上司で良かった。
その後いくつか質問に答えていった。
「あの……それと1つ、お願いが……。」
「なんだね?」
「お話が言ってるかと思いますが、苗字は旧姓の
『来音』で行動させて頂きたいと思っています。」
「あぁ、聞いている。夫がFBI捜査官で、組織に潜入捜査もしていたと。
その上組織の人間に名前がバレている為、妻だと分かると危険が伴うかもしれないから普段は旧姓で、と。」
「ええ、そうです。かと言って、旧姓も少々使うのには抵抗がありまして。私の両親も公安でした。
私の苗字は珍しいので、すぐに私が娘だとバレるかと思います。実際、子供の頃親が関わった事件の関係者に襲われた事があります。
ですので極力苗字は使っていませんでした。
…普段は下の名前で呼んで頂けると助かります。」
「分かった。ではナマエ君、と呼んでも構わないだろうか。」
「はい。お手数おかけします。
それと、私が既婚者な事、黙っていてもらえますか?」
「何故だね?」
「赤井秀一は組織を潰したものの1人として、警視庁内でも名前がかなり知られているかと思います。
だから……その……。私が彼の妻だと分かると、好奇の目で見る人がいるかもしれないので……。」
「あぁなるほど。分かった。黙っておこう。」
「ありがとうございます。色々すみません。」
「いいんだ。何かあったら気兼ねなく言ってくれ。」
「ありがとうございます。」
その後目暮警部の案内の元、部署内を歩き回りながら説明を受けた。
そして最後に捜査一課のフロアで行き、軽く挨拶をした。
「初めまして。本日付けで配属されました
来音ナマエです。とある事情がありまして、皆さんには下の名前で呼んで頂きたいと思っています。よろしくお願いします。」
そう言って頭を下げるとパラパラとまばらに拍手が聞こえた。
顔を上げると、目の前にいた2人以外は仏頂面だった。笑顔で拍手してくれているのは佐藤刑事と高木刑事だ。
拍手の裏で微かに"公安は苗字ですら極秘事項なのかよ"という野次が聞こえた。
目暮警部曰く、私が配属された事で捜査一課全体がピリついているらしい。
そりゃそうだ。捜査一課と公安は何度か対立していた。ただでさえそんな感じなのに、苗字すら明かさない私に当然良い印象はないだろう。
「席は佐藤君の隣りだ。
佐藤君、同じ女性同士、気軽に話せるだろう。
元々顔も知っているだろうからな。
しばらくは色々教えてやってくれんかね。」
「もちろんです。ナマエさん、こっちよ。」
緊張した面持ちで佐藤さんの後をついて行った。