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Put on a happy face

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主人公
安室の彼女

皆揃ってテーブルに座ってケーキを口に運ぶ。
シュウは黙々とコーヒーゼリーを食べていた。
以前私が作ったのを食べてから、コーヒーゼリーだけは多少甘くても食べれるようになったらしい。

「うわ、このケーキ美味し!」
「だろ?園子くんにこの店教えて貰ってから、ボクもここのケーキにハマっちゃってさー。」
「あ、もしかして最近出来た米花駅前の?」
「そうそう!」
「ずっと気になってたんだ〜!こんなにここのケーキ、美味しいんだね!私も今度買いに行こ〜。」
「その時はボクも呼んでよね!」
「…私も連れて行ってくれるか?」
お酒で潤んだ目のメアリーママに顔を覗き込まれながら言われて、断れる人がいるのだろうか?
美しすぎる……!
「勿論です!女子会しましょう!」
「私は女子という歳ではないが…」
「メアリーはいつまでも少女のように可憐で美しいよ。」
務武パパがさらりと言う。
メアリーママは恥ずかしそうに照れた。
うん、こういう所、秀吉君にしっかりと遺伝されてる!
「おい、親がいちゃつく所なんて見たくない。」
「そ、それより、どうして急にMI6に連絡したの?
組織壊滅するまで何処かに潜んでたとか?」
秀吉君が慌てて声をかけた。
「あぁ、それに関しては完全に俺に非がある。
今までお前達の元に戻る事が出来ず、すまなかった。
少し話が長くなるが……事の顛末を言わせて貰おう。

お前達の元を離れてすぐ、お前達が無事にイギリスから出れるよう組織の奴らの目を俺に向けさせた。
それから逃げながらずっと組織の情報を探っていたんだが、ある日ベルモットに見つかり薬を盛られ海に落とされた。
今となって思うに、多分APTX4869の前段階のような薬を盛られた。酷く身体が痛くなって水の中でなんとかもがいた。少しすると身体が少し小さくなっていた。水面にうつった顔は中学生くらいだった。」
「母さんと同じだね……。」
「あぁ。身体が軽くなった分泳ぎやすかったよ。
とりあえずどこかへ逃げようとひたすら泳いだんだが……1時間位すると酷く頭が痛くなった。
長時間泳いでいたからかもしれないと思ったが、次第に身体も激しく痛み出して、それからすぐに元に戻った。その時ちょうど船が通って助けてもらった。

ただ、身体が元に戻ってから時間が経てば経つほど記憶が酷く薄れた。数時間後には自分が何者かも分からなくなった。
ポケットの財布の中は濡れた札が数枚だけだった。
身分がバレないよう身分証の類は何も持っていなかったから、余計に自分が誰か分からなかった。

……結果として薬の副作用で記憶喪失になった。
記憶もなく途方にくれた俺を、船の船長は本当に心配してとてもよくしてくれた。
俺を船長の実家に連れて行ってくれて、村全体で助けてくれたよ。山と川しかないような田舎だったが、とても良い所だった。」
「どうやって思い出したの……?」
「良い質問だ、秀吉。
黒の組織が壊滅した事は、そんな辺境の地でもきちんと入ってきた。
テレビを見ていて、何か重要な物が財布に入っていた事を思い出した。
財布の縫い目を全て解いて、出てきたのはこれだ。」
皺だらけ、おまけに色褪せて白黒になってしまっていたが、はっきりとメアリーさんと子供の頃のシュウと秀吉君が写っていた。
シュウは7歳位だろうか。凄く可愛い。
「これを見て全部思い出した。皆に礼を言って急いでMI6に連絡をして迎えに来てもらった。」
メアリーさんは懐かしそうに写真を眺めた。
「本当にすまなかった、メアリー、秀一、秀吉、真純。俺は何一つ守ってやれなかったな。」
務武さんは悲しそうな顔をしていた。
メアリーさんは務武さんの手を握った。
2人の瞳からは涙が流れ落ちていた。
メアリーさんは務武さんを抱き締め、務武さんもそれに応えていた。
「貴方がいたから、私は頑張れた。貴方との子供達だから、私は命をかけて守る事が出来た。」
「そもそも母さんに俺は守られる必要はなかった。
父さんに截拳道を教えて貰っていたからな。
日本語も。そのおかげでここにいる。」
「僕だって父さんにチェスを教えて貰ってなかったら……それと、将棋というものがあるって教えて貰わなかったらどうなっていたか分からないよ。」
「いや、お前達が元々筋が良かったからだ。俺は大して教えてはいない。
それと……真純、赤ん坊の頃から今まで、一度も会えず……しかも存在すら知らなかった。
今まで何も面倒を見てやれず、すまなかった。
許してくれ。」
「ボク、ママや兄貴達からパパの事は色々聞いてたよ。怒ると怖いけど、とても優しくて頼りがいのある人だって聞いてた。
だからずっと会ってみたいと思ってたから、こうやって会えて凄く嬉しい。
だから怒ってなんかいないよ。
パパから直接は教わってないけど、パパ直伝の截拳道はシュウ兄から習ったし、将棋やチェスだってキチ兄から習った。
実質パパから教わったようなものだよ。
だから何もしてもらってないわけじゃない。

…それにこれからは直接色々教えてくれるよね?」
「……ありがとう、真純。勿論だ。
出来る限り何でも教えてやる。」
「嬉しいなぁ!じゃあ截拳道教えて!」
「あぁ、いいぞ。明日にでも何処かで練習しよう。」
「やったー!」
「務武さん、身体の方は何ともないの?急に動いて無理したら……」
「問題ない。身体が覚えていたのか毎日筋トレはしていたし、村の頼み事を色々と引き受けていたんだ。
何でも屋というやつかな。
お年寄りの家の電球を変えたり屋根を工事したり。
大掛かりなものだと橋も数人がかりで直したな。
とにかく身体は充分に動かしていたから問題ない。」
「貴方は本当に……変わってないわね。
街中で困っている人がいればいつでも手を差し伸べた。私はそんな貴方に心動かされたのだけれど…。」
メアリーさんは呆れながらも懐かしそうに言った。
務武さんのそういう所が大好きなんだろうなぁ。
……理想の夫婦。
私もシュウと、ご両親のような素敵な家族になれるかな。
「勿論だ。いや、俺たちならむしろ負けないくらい良い家族になれる。」
「あっ……声に出てた?」
「顔に出ていた。」
「ウソ……。シュウって表情で感情読み取るの、ものすごく得意だよね。」
「プロファイリングのプロだからな。」
そう言って笑った。
そうだ。私達だって会えなかった期間は長かったけど、こうして再び出会えて結婚まで出来た。
大丈夫。
これからも何があってもきっと上手くいく。
隣にいるシュウの手をそっと握った。
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