Put on a happy face
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次の日、朝早くから朝食をかき込み、急いで支度をして車に乗った。
それでも今から行っても確実に遅刻は確定。
今日は土曜日で道が混んでいるから、警視庁には昼過ぎに着けば良い方かもしれない。
降谷さんに怒られる、それに皆からこんなに休みやがってと絶対にキレられるに違いない。
朝からガクガクブルブルしている私と正反対に酷くご機嫌なシュウ。
その緩んでる頬をつねってやりたくなった。
「そんな顔をするな。俺から降谷君にはきちんと説明するよ。」
「ちゃんと言ってね!私の意思で遅刻したんじゃないって!」
「あぁ。」
道が混みに混んで、到着したのは11時。
途中サービスエリアに寄らなければもう少し早く着いただろう。
トイレ休憩は良かったが、お昼ご飯の調達に加えて何故かシュウがアイスを買ってくれて食べていたので少しタイムロスした。
溶けちゃうし、食べないと悪いし、しょうがなかった。私のせいじゃない。
到着した警視庁の駐車場では何故か風見さんが待っていた。
「おはようございます。」
「お、おはようございます……?」
風見さんの顔を見た途端、私は血の気が引いた。
なんだか睨まれている気がする。
風見さんの目付きが少し悪いのは元々だけど、今は目の下のクマも相まって余計怖い。
「風見君、降谷君に用事がある。」
「えぇ、そうでしょうね、赤井捜査官。」
風見の後を着いていき、通されたのは何故か取調室だった。
そこには既に降谷がいた。
「ふ、降谷さん……!」
震えながら素早くシュウを盾にして隠れた。
「2人ともご苦労だった。」
「あぁ。」
「え?」
「なんだ、何も聞いていないのか?」
「ナマエには何も言っていない。
協力もさせていない。
良い思い出だけで終わらせたかったからな。」
「……どういうこと?」
言い渋るシュウを宥めて、結局降谷さんから事の顛末を聞いた。
どうやら昨日行ったスパに組織の残党の関係者がいたらしい。
シュウがプールで投げたビーチボールを拾ってくれたあの女性。
どうやらその女性は、組織の残党の恋人だったらしい。
私が温泉へ行っている間にその女性を上手く口説き、その男を呼び出して貰って確保したとの事。
風見さんは昨日その為だけに江ノ島へ行き、トンボ帰りしたそう。
だから余計機嫌が悪かったのか。
「ほら、嫌な気持ちになるだろ。
だから言いたくなかったんだ……。」
「ッ……。」
仕事の為とはいえ、私がいない間に女性に声をかけていたと聞いてモヤモヤするのは当然だと思う。
「すまないと思っている。」
「それなら最初から言ってよ!
後から聞かされるのは余計に嫌だよ!」
「悪かった。だが巻き込みたくなかった。
そいつとは昔に因縁があったから、俺が捕まえたかった。
それに、君にはただ純粋に幸せな1日を過ごして欲しかった。」
子犬のようにしょんぼりする彼の顔を見せられて怒る気は失せた。
目的の為には手段を選ばない。
それは分かっている。
逆の立場なら私もきっとそうした。
握った拳を開いて深く息を吸った。
「それで、赤井。」
「上手くいったよ。今ジェイムズに頼んで必要な書類を集めている所だ。」
「そうか。ナマエ。」
降谷さんが、普段よりずっと優しそうな笑顔を見せた。諸伏さんが生きていた頃のような、そんな笑顔。
「はい……。」
「結婚、おめでとう。これ、必要な書類だ。
婚姻届を出した後に、この書類一式を書いて僕に渡してくれれば良い。後はやるから。」
「降谷さん、知って…?」
「勿論。赤井から相談を受けていたからな。
プロポーズするついでに残党を捕まえてくるなら休みをやると言ったんだ。
まさか今日遅刻してくるとは思わなかったけどな。
まったく、拉致する前に相談しておけよ。」
開いた口が塞がらない。
全て降谷さんの手のひらで転がされてた。
降谷さんが合理的な人だとは分かっていたが、まさかここまでとは。
流石としか言いようがない。
「ありがとうございます。」
「他にも話がある。そこに座ってくれ。
赤井はもう仕事に戻れ。」
「あぁ。よろしく頼むよ。」
シュウが意味深な笑みを浮かべ部屋から出ていった。
何を言われるのか。
「このテストを解いてみろ。」
「テスト?」
テストの内容は捜査力を試されているような設問ばかりだった。何枚もある。結構大変だったが、全てを書き込んで降谷さんに手渡す。
全て正解出来ているのか正直よく分からないが、今までの知識と経験を元に答えを出した。
「流石は僕の優秀な部下だ。全問正解。」
「やった!」思わず顔が綻ぶ。
「で、これ何のテストなんですか?」
「FBIの入局テストだ。」
「え。」思わず固まる。
「それと、この音声を聞いて欲しい。」
音声データの声は私と赤井秀一のものだった。
「これは……。」
そう、赤井秀一が沖矢昴だと降谷さんに明らかになるずっとずっと前。
シュウに、自分が沖矢昴である事を黙っている代わりに水無怜奈からの情報を私に流して貰う約束をした時のもの。
リークしたのは私の両親だろうか。
きっと私の仕事用のスマホにつけていた盗聴器からこの音声データを保存していたんだろう。
「赤井秀一が沖矢昴だと分かっていながら、僕に報告せず勝手な行動をし、黙認していた。
僕はきちんと報告しろと言っていたはず。
言っておくが、リークした人を恨むのはお門違いだ。」
「わたし………クビですか?」
「前に言ったはず、公安を裏切るような事をしていたらその時は然るべき対処はすると。」
「そんな……!私、裏切るような事は何も!」
「自分で分かっているだろ。
何をしたのか。」
「でも、でもでも、それは公安の為で!」
「公安の為を本当に思うなら報告していたと思うが?」
「……。」
「赤井を守る為に黙っていたんだろ?」
しばらくの沈黙の後、ようやく口を開いた。
「……はい。
降谷さんに言えば、組織に引き渡されると思いました。」
俯いて、歯を食いしばりながら正直に答えた。
だって実際、降谷さんは赤井秀一を組織に売ろうとした。
私はやはりそれが耐えられなかったから。
仕方がない。降谷さんからしたら裏切りと同じだ。
「残念だよ……。」
降谷さんのその言葉に涙が溢れる。
今更謝ってもどうにもならない。
昔はあんなに嫌いだった日本は、今は大好きだ。
日本のために生きて死ぬ気でいたのに。
降谷さんと一緒にこれからも仕事がしたかった。
なのに。
「ッ……ク…ッ…」涙が溢れて止まらない。
「泣くなよ。
…FBIになるのも一つの手じゃないか?
君は人一倍、いや他の人の何倍も捜査状況をまとめて資料を作るのが早い。
能力を考えれば事務総長は確実だろう。
勿論現場でも活躍は出来るとは思う。
狙撃も出来るしな。
ただ、FBIの仕事は今までの仕事とは内容もかなり変わるから大変だろう。
もう少しメンタルを強くすれば、問題なくこなせるだろうから頑張れよ。」
「な…っ!そんな簡単に言うなんて酷い!
降谷さんの馬鹿!
私だって、公安の為に!
皆の為に頑張ってきたのに…!!」
「分かってるよ。今まで1番近くで君を見てきた僕が1番よく分かってる。
だからこそ分かってくれ。
…お前にだけは、きちんとした幸せを掴んで欲しい。
せっかく逃した幸せを、もう一度掴めたんだ。
もう二度と、大切な人を手放すなよ。」
降谷さんの言葉を聞き、さらに涙が溢れる。
「降谷さん……ごめんなさい。」
「もう泣くなよ。
ナマエがこんなに公安から離れるのを嫌がるとは思わなかったな。
ひとつ聞く。これからも日本を守っていきたいか?」
「勿論です。公安でなくても、いち警察官として、この国で働きたいです。」
「だそうだ、赤井。どうする?」
ガチャリとドアが開き、シュウが入ってきた。
「シュウ……なんで……。」
「俺はこうなると思っていたよ。
全て予想通りだ。」
全部聞いてたよ、と言って手で私の涙を拭った。
「俺には君が必要だ。
……だが遠距離なんて御免だ。」
それじゃあ、結婚の話は無かったことになるんだろうか。
「嫌、嫌だよシュウ。別れたくない、結婚したい……。」
「すまない、言葉が足りなかったな。勿論別れないし結婚もするよ。
つまり、辞めるのは俺の方だよ。」
「は?」
「組織に関する事を片付けたら、俺はFBIを辞める。」
「う……そ……。」
「本当だ。
ナマエがFBIに来るなら、そのまま続けるつもりでいた。」
「なんで?」
「前にも言ったが、俺の次の目標は君と幸せになる事、それと父を探すことだ。
だから工藤新一と共に探偵業でもやろうかと思っている。」
「え!? シュウが探偵??」
「なんだその反応は。」
「いや、なんか想像出来なくて……。」
「そうか?まぁこれから追々決めるよ。
しばらくは今の業務に追われてそれどころではないしな。日本国籍にもしなければならないし、忙しくなりそうだ。」
あまりの事に頭が追いつかない。
シュウがFBIを辞めて日本人になって探偵になるって?新一君と??
「大丈夫だ、ジェイムズが話を通してくれる。
探偵になっても勿論頑張って金は稼ぐし、そもそもかなり貯金はある。何も困ることは無い。
不自由をさせるつもりはない。」
「でも……私のせいで……。」
「君のせいじゃないさ。
それにこれは元々考えていた事でもあるんだ。
だから気兼ねなくナマエは日本で仕事をすると良い。
だが潜入や危険が伴う公安にはもう居て欲しくない。
これは俺の我儘だ。
音声データをリークしたのも俺だしな。」
「……嘘でしょ……。」
「ナマエ、君には行きたい部署はあるか?」
「今は頭が追いつかなくて……考えられません。」
「そうだよな。今は組織の後処理のためにしばらくは公安でこのまま働いて貰うことにはなる。
落ち着いたら僕から再度声をかけるから。」
「……公安から離れる事に変わりはないんですね……。」
「然るべき対処、だからな。
それに公安は危険が伴う。僕も赤井と同意見だよ。
もう危険な目にあって欲しくない。
潜入もして欲しくない。」
「……はい。」
「そう落ち込むなよ。
はぁーあ。まさか赤井と結婚するなんて思ってなかったよ。
アラフォーになっても独身だったら僕が貰うつもりだったのに。」
椅子にもたれて片目を閉じ、悪戯っぽく降谷さんが笑った。
「え、降谷さん、私のことそういう意味で好きだったんですか?」私も冗談ぽく尋ねる。
「……違う。けど、ナマエとなら良いパートナーシップが築けたんじゃないかと思って。」
「例え降谷君といえど、譲る気はない。」
シュウが吠えて私をぎゅっと抱きしめた。
「ふふ。ありがとうございます。
そう思って貰えてただけでも幸せです。
降谷さんの事は、尊敬出来る大好きな上司です。」
「ありがとう。」
降谷さんは優しく微笑んだ。
「降谷さん、今まで本当にお世話になりました。
後処理が終わるまで頑張ります。」
私は深く頭を下げた。
「よく頑張ったな。これ以上僕の大切な仲間が減らなくて本当に良かった……。
これからもよろしく頼むよ。」
立ち上がって2人を両手いっぱいに抱きしめた。
「2人は、私の大事な人です。
立場が変わろうと何があっても、
それはきっと変わらないです。」
「俺も同じ気持ちだ。
俺も降谷君の事は尊敬出来る仲間だよ。」
「はぁ??俺は仲間だなんて1度も思ってない!
ヒロの事は僕の勘違いだったと分かったけど、それでも僕は赤井が嫌いだ!
組織にいた頃何度嫌な思いをさせられたか!」
そう言っても降谷さんは笑っていた。勿論私もシュウも、心の底から。
これからの事はこれから考えて行けば良い。
どうにかなる。
だってー
『赤井秀一と降谷零』
私には最強の2人がいるから。
それでも今から行っても確実に遅刻は確定。
今日は土曜日で道が混んでいるから、警視庁には昼過ぎに着けば良い方かもしれない。
降谷さんに怒られる、それに皆からこんなに休みやがってと絶対にキレられるに違いない。
朝からガクガクブルブルしている私と正反対に酷くご機嫌なシュウ。
その緩んでる頬をつねってやりたくなった。
「そんな顔をするな。俺から降谷君にはきちんと説明するよ。」
「ちゃんと言ってね!私の意思で遅刻したんじゃないって!」
「あぁ。」
道が混みに混んで、到着したのは11時。
途中サービスエリアに寄らなければもう少し早く着いただろう。
トイレ休憩は良かったが、お昼ご飯の調達に加えて何故かシュウがアイスを買ってくれて食べていたので少しタイムロスした。
溶けちゃうし、食べないと悪いし、しょうがなかった。私のせいじゃない。
到着した警視庁の駐車場では何故か風見さんが待っていた。
「おはようございます。」
「お、おはようございます……?」
風見さんの顔を見た途端、私は血の気が引いた。
なんだか睨まれている気がする。
風見さんの目付きが少し悪いのは元々だけど、今は目の下のクマも相まって余計怖い。
「風見君、降谷君に用事がある。」
「えぇ、そうでしょうね、赤井捜査官。」
風見の後を着いていき、通されたのは何故か取調室だった。
そこには既に降谷がいた。
「ふ、降谷さん……!」
震えながら素早くシュウを盾にして隠れた。
「2人ともご苦労だった。」
「あぁ。」
「え?」
「なんだ、何も聞いていないのか?」
「ナマエには何も言っていない。
協力もさせていない。
良い思い出だけで終わらせたかったからな。」
「……どういうこと?」
言い渋るシュウを宥めて、結局降谷さんから事の顛末を聞いた。
どうやら昨日行ったスパに組織の残党の関係者がいたらしい。
シュウがプールで投げたビーチボールを拾ってくれたあの女性。
どうやらその女性は、組織の残党の恋人だったらしい。
私が温泉へ行っている間にその女性を上手く口説き、その男を呼び出して貰って確保したとの事。
風見さんは昨日その為だけに江ノ島へ行き、トンボ帰りしたそう。
だから余計機嫌が悪かったのか。
「ほら、嫌な気持ちになるだろ。
だから言いたくなかったんだ……。」
「ッ……。」
仕事の為とはいえ、私がいない間に女性に声をかけていたと聞いてモヤモヤするのは当然だと思う。
「すまないと思っている。」
「それなら最初から言ってよ!
後から聞かされるのは余計に嫌だよ!」
「悪かった。だが巻き込みたくなかった。
そいつとは昔に因縁があったから、俺が捕まえたかった。
それに、君にはただ純粋に幸せな1日を過ごして欲しかった。」
子犬のようにしょんぼりする彼の顔を見せられて怒る気は失せた。
目的の為には手段を選ばない。
それは分かっている。
逆の立場なら私もきっとそうした。
握った拳を開いて深く息を吸った。
「それで、赤井。」
「上手くいったよ。今ジェイムズに頼んで必要な書類を集めている所だ。」
「そうか。ナマエ。」
降谷さんが、普段よりずっと優しそうな笑顔を見せた。諸伏さんが生きていた頃のような、そんな笑顔。
「はい……。」
「結婚、おめでとう。これ、必要な書類だ。
婚姻届を出した後に、この書類一式を書いて僕に渡してくれれば良い。後はやるから。」
「降谷さん、知って…?」
「勿論。赤井から相談を受けていたからな。
プロポーズするついでに残党を捕まえてくるなら休みをやると言ったんだ。
まさか今日遅刻してくるとは思わなかったけどな。
まったく、拉致する前に相談しておけよ。」
開いた口が塞がらない。
全て降谷さんの手のひらで転がされてた。
降谷さんが合理的な人だとは分かっていたが、まさかここまでとは。
流石としか言いようがない。
「ありがとうございます。」
「他にも話がある。そこに座ってくれ。
赤井はもう仕事に戻れ。」
「あぁ。よろしく頼むよ。」
シュウが意味深な笑みを浮かべ部屋から出ていった。
何を言われるのか。
「このテストを解いてみろ。」
「テスト?」
テストの内容は捜査力を試されているような設問ばかりだった。何枚もある。結構大変だったが、全てを書き込んで降谷さんに手渡す。
全て正解出来ているのか正直よく分からないが、今までの知識と経験を元に答えを出した。
「流石は僕の優秀な部下だ。全問正解。」
「やった!」思わず顔が綻ぶ。
「で、これ何のテストなんですか?」
「FBIの入局テストだ。」
「え。」思わず固まる。
「それと、この音声を聞いて欲しい。」
音声データの声は私と赤井秀一のものだった。
「これは……。」
そう、赤井秀一が沖矢昴だと降谷さんに明らかになるずっとずっと前。
シュウに、自分が沖矢昴である事を黙っている代わりに水無怜奈からの情報を私に流して貰う約束をした時のもの。
リークしたのは私の両親だろうか。
きっと私の仕事用のスマホにつけていた盗聴器からこの音声データを保存していたんだろう。
「赤井秀一が沖矢昴だと分かっていながら、僕に報告せず勝手な行動をし、黙認していた。
僕はきちんと報告しろと言っていたはず。
言っておくが、リークした人を恨むのはお門違いだ。」
「わたし………クビですか?」
「前に言ったはず、公安を裏切るような事をしていたらその時は然るべき対処はすると。」
「そんな……!私、裏切るような事は何も!」
「自分で分かっているだろ。
何をしたのか。」
「でも、でもでも、それは公安の為で!」
「公安の為を本当に思うなら報告していたと思うが?」
「……。」
「赤井を守る為に黙っていたんだろ?」
しばらくの沈黙の後、ようやく口を開いた。
「……はい。
降谷さんに言えば、組織に引き渡されると思いました。」
俯いて、歯を食いしばりながら正直に答えた。
だって実際、降谷さんは赤井秀一を組織に売ろうとした。
私はやはりそれが耐えられなかったから。
仕方がない。降谷さんからしたら裏切りと同じだ。
「残念だよ……。」
降谷さんのその言葉に涙が溢れる。
今更謝ってもどうにもならない。
昔はあんなに嫌いだった日本は、今は大好きだ。
日本のために生きて死ぬ気でいたのに。
降谷さんと一緒にこれからも仕事がしたかった。
なのに。
「ッ……ク…ッ…」涙が溢れて止まらない。
「泣くなよ。
…FBIになるのも一つの手じゃないか?
君は人一倍、いや他の人の何倍も捜査状況をまとめて資料を作るのが早い。
能力を考えれば事務総長は確実だろう。
勿論現場でも活躍は出来るとは思う。
狙撃も出来るしな。
ただ、FBIの仕事は今までの仕事とは内容もかなり変わるから大変だろう。
もう少しメンタルを強くすれば、問題なくこなせるだろうから頑張れよ。」
「な…っ!そんな簡単に言うなんて酷い!
降谷さんの馬鹿!
私だって、公安の為に!
皆の為に頑張ってきたのに…!!」
「分かってるよ。今まで1番近くで君を見てきた僕が1番よく分かってる。
だからこそ分かってくれ。
…お前にだけは、きちんとした幸せを掴んで欲しい。
せっかく逃した幸せを、もう一度掴めたんだ。
もう二度と、大切な人を手放すなよ。」
降谷さんの言葉を聞き、さらに涙が溢れる。
「降谷さん……ごめんなさい。」
「もう泣くなよ。
ナマエがこんなに公安から離れるのを嫌がるとは思わなかったな。
ひとつ聞く。これからも日本を守っていきたいか?」
「勿論です。公安でなくても、いち警察官として、この国で働きたいです。」
「だそうだ、赤井。どうする?」
ガチャリとドアが開き、シュウが入ってきた。
「シュウ……なんで……。」
「俺はこうなると思っていたよ。
全て予想通りだ。」
全部聞いてたよ、と言って手で私の涙を拭った。
「俺には君が必要だ。
……だが遠距離なんて御免だ。」
それじゃあ、結婚の話は無かったことになるんだろうか。
「嫌、嫌だよシュウ。別れたくない、結婚したい……。」
「すまない、言葉が足りなかったな。勿論別れないし結婚もするよ。
つまり、辞めるのは俺の方だよ。」
「は?」
「組織に関する事を片付けたら、俺はFBIを辞める。」
「う……そ……。」
「本当だ。
ナマエがFBIに来るなら、そのまま続けるつもりでいた。」
「なんで?」
「前にも言ったが、俺の次の目標は君と幸せになる事、それと父を探すことだ。
だから工藤新一と共に探偵業でもやろうかと思っている。」
「え!? シュウが探偵??」
「なんだその反応は。」
「いや、なんか想像出来なくて……。」
「そうか?まぁこれから追々決めるよ。
しばらくは今の業務に追われてそれどころではないしな。日本国籍にもしなければならないし、忙しくなりそうだ。」
あまりの事に頭が追いつかない。
シュウがFBIを辞めて日本人になって探偵になるって?新一君と??
「大丈夫だ、ジェイムズが話を通してくれる。
探偵になっても勿論頑張って金は稼ぐし、そもそもかなり貯金はある。何も困ることは無い。
不自由をさせるつもりはない。」
「でも……私のせいで……。」
「君のせいじゃないさ。
それにこれは元々考えていた事でもあるんだ。
だから気兼ねなくナマエは日本で仕事をすると良い。
だが潜入や危険が伴う公安にはもう居て欲しくない。
これは俺の我儘だ。
音声データをリークしたのも俺だしな。」
「……嘘でしょ……。」
「ナマエ、君には行きたい部署はあるか?」
「今は頭が追いつかなくて……考えられません。」
「そうだよな。今は組織の後処理のためにしばらくは公安でこのまま働いて貰うことにはなる。
落ち着いたら僕から再度声をかけるから。」
「……公安から離れる事に変わりはないんですね……。」
「然るべき対処、だからな。
それに公安は危険が伴う。僕も赤井と同意見だよ。
もう危険な目にあって欲しくない。
潜入もして欲しくない。」
「……はい。」
「そう落ち込むなよ。
はぁーあ。まさか赤井と結婚するなんて思ってなかったよ。
アラフォーになっても独身だったら僕が貰うつもりだったのに。」
椅子にもたれて片目を閉じ、悪戯っぽく降谷さんが笑った。
「え、降谷さん、私のことそういう意味で好きだったんですか?」私も冗談ぽく尋ねる。
「……違う。けど、ナマエとなら良いパートナーシップが築けたんじゃないかと思って。」
「例え降谷君といえど、譲る気はない。」
シュウが吠えて私をぎゅっと抱きしめた。
「ふふ。ありがとうございます。
そう思って貰えてただけでも幸せです。
降谷さんの事は、尊敬出来る大好きな上司です。」
「ありがとう。」
降谷さんは優しく微笑んだ。
「降谷さん、今まで本当にお世話になりました。
後処理が終わるまで頑張ります。」
私は深く頭を下げた。
「よく頑張ったな。これ以上僕の大切な仲間が減らなくて本当に良かった……。
これからもよろしく頼むよ。」
立ち上がって2人を両手いっぱいに抱きしめた。
「2人は、私の大事な人です。
立場が変わろうと何があっても、
それはきっと変わらないです。」
「俺も同じ気持ちだ。
俺も降谷君の事は尊敬出来る仲間だよ。」
「はぁ??俺は仲間だなんて1度も思ってない!
ヒロの事は僕の勘違いだったと分かったけど、それでも僕は赤井が嫌いだ!
組織にいた頃何度嫌な思いをさせられたか!」
そう言っても降谷さんは笑っていた。勿論私もシュウも、心の底から。
これからの事はこれから考えて行けば良い。
どうにかなる。
だってー
『赤井秀一と降谷零』
私には最強の2人がいるから。