If story … 別ルート【完結】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
しばらくすると彼女は財布を漁ったりできる限りの記憶を口にした。
「私は…免許証の名前から赤井ナマエっていうみたいです。赤井さんと苗字一緒ですが…親戚ですか?」
「あぁ、そんなようなもんだ。」なんと言ってやれば良いか。とりあえず同意するしか無かった。
「私…大学院生の沖矢昴さんとお付き合いしているんです。それだけは覚えてます。デートをしていた記憶が少しだけ残ってるから…。」
なんで俺との記憶じゃないんだ。沖矢への嫉妬心から腸が煮えくり返りそうだった。
引きつった顔のままなんとか「知っているよ。」と声を絞り出した。
「沖矢は車で寝てるから…起こしてくるよ。待っていてくれ。」
「はい!」そう言われて彼女は満面の笑みを浮かべた。その顔を見たら余計に辛くなった。
「赤井さん、ありがとうございました。」
「君も赤井なんだ。俺の事は名前で呼んでくれ。」
「分かりました、秀一さん。」
「またな。」
"秀一さん"なんて今まで呼ばれた事は1度もない。記憶喪失であることをまざまざと見せつけられて耐えきれなくなった。顔も見ず黙って病室を出た。
駐車場に安室君が俺の車を持ってきてくれたらしい。カバンはトランクだそうだ。
車の鍵は受付に預けてあるとの事。
受付に声をかけ鍵を受け取った。
車に乗り込んでトランクの変装道具を取り出し車に乗り込んだ。
ウィッグを被り、変声機をつけて化粧で変装した。
マスクでの変装だと近づいた時バレやすい為だ。
服をハイネックの服に着替え、メガネをかけてバックミラーで顔を見た。
今はこの沖矢の顔が酷く憎らしかった。
なんで俺では無いのか。俺よりも沖矢の事を本当は愛していたんだろうか。
「クソッ!」思い切りハンドルを叩きクラクションが響いた。
とりあえず2、3回深呼吸をしてわざと笑みを浮かべた。
彼女に完璧な沖矢を演じなければ。
車から出て病室へと向かった。
コンコンと病室のドアをノックすると彼女の声が聞こえた。
「沖矢です。」
「どうぞ。」
中へ入るとニコニコと笑みを浮かべたナマエが見えた。
「怪我は大丈夫ですか?」
「ちょっと後頭部が痛むけど大丈夫。昴は怪我してない?」
「かすり傷程度です。」
「さっき会った秀一さんもちょっと怪我してたみたいだけど…何があったの?」
「爆発事件に巻き込まれたんです。3人でいた時に。鉄板が頭に当たったんです。」
「そう…。」
「助けられなくてすみませんでした。僕がいながら…。」
「怪我したのが私で良かった。昴と秀一さんが無事なら十分だよ。ね?」
彼女の優しい所は記憶を無くしても変わらない。それが余計に自分を傷つけた。
「すぐに治すから。」
「えぇ。早く一緒に帰りましょうね。」
「うん。…あれ、私のスマホ壊れてる…何もデータが入ってない。」
どうやら衝撃でデータは全て消えたらしい。
彼女にとっては良いのかもしれない。
赤井秀一と仲が良さそうな写真が多く入っていたはずだ。結婚式の写真もある。
きっと混乱してパニックになるだろう。
「大丈夫ですよ、パソコンにデータがあるはずですから、記憶を思い出したらデータ移行しましょう。」
「流石は工学部。」そう言って笑った。
「僕の事はきちんと覚えているんですね?」
「うん。…なんでだろ。愛の力?」そう言って彼女はおどけて笑ったが、自分は笑えなかった。
なんとか顔だけ笑みを取り繕って、ゆっくり休んでください。また来ますね、と告げて病室を出た。
病室を出た瞬間もう無理だった。
唇を噛み締めて手で口元を抑えた。
肩が震える。
ドアにもたれかかって声を押し殺し、ポタポタと涙が溢れメガネと病室の廊下を濡らした。
「ッ…。」ここで涙を流していてはいずれバレる。
フラフラと近くの男性用トイレに入り、洗面所で顔を見ると涙でコンシーラーとファンデーションが落ちて目の隈がバレバレだった。
これではどう見ても赤井秀一だな。
自分の酷い顔がなんだか笑えてきてハンカチでゴシゴシと化粧を軽く落としウィッグを無造作に外す。
とりあえず、意識は戻ったんだ。
…焦るんじゃない。
「私は…免許証の名前から赤井ナマエっていうみたいです。赤井さんと苗字一緒ですが…親戚ですか?」
「あぁ、そんなようなもんだ。」なんと言ってやれば良いか。とりあえず同意するしか無かった。
「私…大学院生の沖矢昴さんとお付き合いしているんです。それだけは覚えてます。デートをしていた記憶が少しだけ残ってるから…。」
なんで俺との記憶じゃないんだ。沖矢への嫉妬心から腸が煮えくり返りそうだった。
引きつった顔のままなんとか「知っているよ。」と声を絞り出した。
「沖矢は車で寝てるから…起こしてくるよ。待っていてくれ。」
「はい!」そう言われて彼女は満面の笑みを浮かべた。その顔を見たら余計に辛くなった。
「赤井さん、ありがとうございました。」
「君も赤井なんだ。俺の事は名前で呼んでくれ。」
「分かりました、秀一さん。」
「またな。」
"秀一さん"なんて今まで呼ばれた事は1度もない。記憶喪失であることをまざまざと見せつけられて耐えきれなくなった。顔も見ず黙って病室を出た。
駐車場に安室君が俺の車を持ってきてくれたらしい。カバンはトランクだそうだ。
車の鍵は受付に預けてあるとの事。
受付に声をかけ鍵を受け取った。
車に乗り込んでトランクの変装道具を取り出し車に乗り込んだ。
ウィッグを被り、変声機をつけて化粧で変装した。
マスクでの変装だと近づいた時バレやすい為だ。
服をハイネックの服に着替え、メガネをかけてバックミラーで顔を見た。
今はこの沖矢の顔が酷く憎らしかった。
なんで俺では無いのか。俺よりも沖矢の事を本当は愛していたんだろうか。
「クソッ!」思い切りハンドルを叩きクラクションが響いた。
とりあえず2、3回深呼吸をしてわざと笑みを浮かべた。
彼女に完璧な沖矢を演じなければ。
車から出て病室へと向かった。
コンコンと病室のドアをノックすると彼女の声が聞こえた。
「沖矢です。」
「どうぞ。」
中へ入るとニコニコと笑みを浮かべたナマエが見えた。
「怪我は大丈夫ですか?」
「ちょっと後頭部が痛むけど大丈夫。昴は怪我してない?」
「かすり傷程度です。」
「さっき会った秀一さんもちょっと怪我してたみたいだけど…何があったの?」
「爆発事件に巻き込まれたんです。3人でいた時に。鉄板が頭に当たったんです。」
「そう…。」
「助けられなくてすみませんでした。僕がいながら…。」
「怪我したのが私で良かった。昴と秀一さんが無事なら十分だよ。ね?」
彼女の優しい所は記憶を無くしても変わらない。それが余計に自分を傷つけた。
「すぐに治すから。」
「えぇ。早く一緒に帰りましょうね。」
「うん。…あれ、私のスマホ壊れてる…何もデータが入ってない。」
どうやら衝撃でデータは全て消えたらしい。
彼女にとっては良いのかもしれない。
赤井秀一と仲が良さそうな写真が多く入っていたはずだ。結婚式の写真もある。
きっと混乱してパニックになるだろう。
「大丈夫ですよ、パソコンにデータがあるはずですから、記憶を思い出したらデータ移行しましょう。」
「流石は工学部。」そう言って笑った。
「僕の事はきちんと覚えているんですね?」
「うん。…なんでだろ。愛の力?」そう言って彼女はおどけて笑ったが、自分は笑えなかった。
なんとか顔だけ笑みを取り繕って、ゆっくり休んでください。また来ますね、と告げて病室を出た。
病室を出た瞬間もう無理だった。
唇を噛み締めて手で口元を抑えた。
肩が震える。
ドアにもたれかかって声を押し殺し、ポタポタと涙が溢れメガネと病室の廊下を濡らした。
「ッ…。」ここで涙を流していてはいずれバレる。
フラフラと近くの男性用トイレに入り、洗面所で顔を見ると涙でコンシーラーとファンデーションが落ちて目の隈がバレバレだった。
これではどう見ても赤井秀一だな。
自分の酷い顔がなんだか笑えてきてハンカチでゴシゴシと化粧を軽く落としウィッグを無造作に外す。
とりあえず、意識は戻ったんだ。
…焦るんじゃない。